軽い気持ちでした運転行動が、交通事故を誘発し、大きな社会的損害を生み出すことがあります。
今回は、社会的影響の大きかった事故事例のなかで、運転者が車から離れたすきに、クリープ現象により無人の車が鉄道の軌道敷内に入ってしまい、衝突事故を起こした事例を紹介します。
指導の参考にしてください。
■踏切事故で首都圏の通勤客が混乱
平成26年(2014年)1月29日朝7時頃、埼玉県川越市の東武東上線踏切で、無人の軽乗用車が線路内に入り普通列車と衝突しました。
軽乗用車を運転していた女性(41歳)は、踏切待ちをしている間に近くのポストに郵便を入れようとエンジンをかけたままの車を離れたため、クリープ現象で車が動き出してしまったものです。
AT車のシフトレバーをPレンジに入れ忘れ、駐車ブレーキの踏込みも甘かったと見られています。
電車の乗客にけがはなかったものの、首都圏の交通に多大な影響がでました。
■都心の交通をマヒさせて、被害は甚大
事故発生後、電車に乗っていた約300人の乗客が 現場で降り、徒歩でおよそ1キロ離れた駅まで移動することになりました。
また、東武東上線は上下線とも一部区間で運転を見合わせることになり、東武線と直通運転を行っている東京メトロ副都心線や有楽町線、東急東横線などもダイヤが乱れました。
このため、5時間にわたって、都心部の鉄道利用客約9万5000人に影響を与えました。
■鉄道事故は億単位の賠償義務が発生する可能性がある
事故の損害額を推定してみましょう。
電車の損害、復旧作業に使った人件費や車両の燃料代と代行輸送代、踏切の復旧費用などを含めると、1億を超える賠償金を請求される可能性があります。
実際に電車が全損だった場合に、廃車費用または修理費用として私鉄の電車代だけで約1億円ほどかかった事例があります。
このほか、都心部の通勤の足を止めた社会的な損害も計り知れません。
運転者は、自分自身で常に車をコントロールする責任があるということを自覚してください。
踏切などの手前で少し長い時間停止する場合は、シフトレバーをPレンジに入れておく習慣をつけましょう。
→ 30万円以下の罰金
→ 3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(違反点数2点)
→ 7年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金
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交通事故の損害の大きさを指導していますか
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事故によって鉄道をストップさせたり、田んぼに廃油を流出させるなど、社会に大きな損害を与える事故が発生することがあります。
小冊子「こんなに大きい!事故の社会的損害」は、わずかなミスや、低い安全意識による交通事故が、事故の当事者以外の人にも大きな損害を与え、取り返しの付かない事態に発展することを理解していただくことのできる教育教材です。