平成27年6月11日、衆院本会議で道路交通法の一部改正案が可決成立し、6月17日に公布されました。
改正点は大きく分けて以下の3点です。1),2)に関しては、公布の日から2年以内の施行とされています。平成29年(2017年)3月から新制度がスタートします(施行日は3月12日、詳しくはこちらを参照)。
3)は公布の日から施行、つまり平成27年6月17日施行です。
【今回の道路交通法改正ポイント】
1)準中型自動車免許の新設─車両総重量3.5トン以上、7.5トン未満を18歳から運転
2)高齢運転者への臨時認知機能検査と講習の実施──認知症を疑う違反に限る
3)免許仮停止の範囲を拡大──酒気帯び又は過労運転で人身事故を起こした場合
──平成29年(2017年)3月12日に施行
準中型自動車免許制度は、貨物自動車などに限定した新区分として新設されます。
現行の中型自動車(車両総重量5トン以上11トン未満)は、20歳以上・普免保有2年以上が免許受験の条件であり、高卒の新入社員には、中型トラックを運転させることはできません。
しかし、新制度の準中型トラックは18歳以上であれば普通免許の経験がなくても取得できますので、運送事業者の高校新卒者雇用が促進され、ドライバー確保にもつながると見られています。
一方で、事業用貨物自動車でもっとも人身事故の発生率が高いのは7トン~8トン車のため、今後一層の安全対策が求められています。
平成27年4月より7トン以上8トン未満の貨物自動車に運行記録計の備付けが義務付けられ、運転者に対する指導・監督の指針が改正されたのもその一環です。
【改正後の免許制度】
※この改正には平成19年6月1日以前に普通自動車免許を取得した8トン限定中型免許の運転者は影響を受けません。施行後もこれまで同様、今所持している免許で8トン未満の車まで運転できます。
同様に改正前の普通自動車免許(平成29年3月11日までに取得)を取得している運転者も既得権保護として、5トン未満の車まで運転できます(5トン限定準中型免許)。
なお5トン限定準中型免許の運転者が車両総重量7.5トン未満の準中型免許に移行する場合は、改正法施行後に限定解除の審査を受ける必要があります。
──平成29年(2017年)3月12日に施行
75歳以上の高齢運転者が認知機能が低下したときに起こしやすい違反行為をした場合は、「臨時認知機能検査」を行うことになります。対象となる違反行為については別途政令で定められます。
そして臨時検査の結果、認知機能が低下している恐れがあると判断された高齢者に対しては、「臨時高齢者講習」が実施されます。
講習は個別指導等により、認知機能の低下を自覚させ本人の状況に応じた安全な運転行動を指導するものです。
また、認知症の恐れがあると判断された運転者に対して公安委員会は臨時適性検査(専門医による診断)を行うか、医師の診断書の提出を命じることができるようになります。専門医による診断等で認知症が認められた場合は、免許の取消しか停止が行われます。
なお、高齢運転者が上記の臨時機能検査や臨時高齢者講習を受けなかった場合も、免許の取消し又は免許の効力停止処分が実施されます。
──平成27年(2015年)6月17日施行
今回の道路交通法改正以前は、交通事故を起こして、最長30日間の免許仮停止処分を受けるのは次の3つの場合でした。
① 死傷事故でひき逃げをした場合
② 酒酔い運転、無免許運転で死傷事故を起こした場合
③ 酒気帯び運転や信号無視、過労運転等の危険違反で
死亡事故を起こした場合
今後はこれに、
④ 酒気帯び運転又は過労運転で事故を起こし、人を傷つけた場合
が付け加わります。
過労運転が酒酔い運転などと同様に重大事故や死亡事故につながりやすい危険行為であるという観点から、今まで死亡事故に限って免許仮停止の対象にしていましたが、この処分を厳しくし、危険な運転者をいち早く道路交通の場から排除して交通の安全を確保しようとするものです。
トラックドライバー向けの指導・監督資料については → こちらを参照
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