日本交通医学工学研究会学術総会「居眠り事故防止策」の講演の中から、興味深かった内容を抄録でお届けします。
林 光緒教授(広島大学大学院総合科学研究科)は、健康な人が居眠り運転に陥る2大要因として「睡眠不足」と「生体リズム」をあげ、睡眠不足が著しい状態では、まず、居眠りの起こり始めとして、一瞬の居眠り「マイクロスリープ(瞬眠)」の危険があることを紹介しました。
まったく自覚がないまま居眠りに陥る
マイクロスリープは、眠気が強くなってきたときの瞬間的な数秒間の居眠りを指し、運転者は眠ったことをほとんど自覚していません。
居眠りをするとき、首が突然に落ちるのでカックン現象などとも呼びますが、このカックンとくる前の、まだ「目が開いている状態」でマイクロスリープが起こっているケースもあります。
目を開けたままのマイクロスリープも
脳波の波形にはっきり出てきますが、目を開けた状態で居眠り状態と同じ波形になっていることがあります。睡眠の段階ではノンレム睡眠4段階の睡眠段階1に当たります。
目を開いていても、数秒間も目前の状況が把握できていないことになります。しかし、こうしたマイクロスリープ現象が起こっても本人は憶えていません。
睡眠段階1ではウトウトしかけても、椅子に座った段階を保っていられます。
前兆はゆっくりとした目の左右の動き
睡眠段階1では、脳波以外に目が勝手にゆっくりと左右に動き出す現象が知られています。ただし、この左右へのゆっくりとした目の動きは、瞬間的居眠りが起こる直前の覚醒段階から現れることがあります。
「目の焦点が合わない感じになる」「目がショボショボする」と感じるのがこの状態です。
眠たいときに目の焦点は合わなくなるのは、目が勝手に動き出しているからですが、怖いことに、運転者は眼球が運動しているという自覚はありません。
もう居眠り直前ということを自覚しないまま運転しているわけです。
睡眠不足がひどいため、運転していて「眠い」という自覚はあるのですが、もう少し先のサービスエリアまで頑張ろうなどと考えていて、瞬間的居眠りに陥ってしまうケースが多いのです。
「眠気の日内変動」 林 光緒(広島大学大学院総合科学研究科 教授)
──日本交通医学工学研究会 第24回学術総会(2015.7.20)における講演より