日本交通医学工学研究会学術総会「居眠り事故防止策」の講演の中から、興味深かった内容を抄録でお届けします。
林 光緒教授(広島大学大学院総合科学研究科)は、次に、睡眠不足が極端でない場合でも、生体リズムが関係して居眠り運転が起こりやすい時間帯があることを解説しました。
眠気に関係する3つの生体リズム
居眠り運転事故が起こりやすい時間帯としては、まず夜半から早朝にかけての時間帯、そして午後1時から3時ごろの時間帯があげられます。
それから塩見先生が以前の研究で報告されましたが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは睡眠不足のため午前8時頃にも居眠り事故が起こりやすいという特徴があります。
①明け方の眠気──概日リズム
眠気が起こりやすい3つの生体リズムがあると考えられています。
ひとつは24時間リズム、概日リズムというものがあります。夜半から明け方にかけて居眠り事故が起こりやすいことが知られています。
私達の体温は24時間の変動があり、夕方が最高体温の時間帯で未明から早朝にかけてが最低タイムとなります。この体温が低下してくるときに眠気が強くなってきます。特に早朝の最低体温時は一番眠気が発生しやすいため、居眠り事故もこの時間帯に起こりやすいので、夜通しの運転や明け方の運転は避けることが大切です。
②午後の眠気──概半日リズム
次に、最低体温のちょうど半日後の午後1時から3時ぐらいに、居眠り事故がよく発生しています。体温の関係ではありません。
食事の影響を指摘する意見もあり、とくに、昼食に高カロリーの食事のときは眠気が強くなるという調査もあります。
しかし、前日の十分な睡眠や昼食抜きなどの条件でも、小学生以外はやはり午後の時間帯に眠気が発生することが実験で明らかになっていますので、これも生体リズムによる眠気と言えます。
眠くなるメカニズムについてはよくわかっていませんが、朝起きてから寝るまでのちょうど中間ですので、覚醒中の真ん中あたりで身体が休憩を求めている、とも考えられます。
また、休日の夜更かしなど睡眠習慣が乱れていると昼間の眠気が発生しやすいので、規則正しい睡眠などで睡眠習慣を改善すると眠気は弱くなります。しかし、眠気がなくなることにはなりません。
③2時間ごとの眠気
このほか、単調な運転作業や慣れた経路などで2時間間隔で周期的に眠気が発生するリズムも見られます。
昼間運転するバスドライバーの眠気調査によると、ちょうど2時間ごとに眠気がやってくるという結果がでています。
この眠気は、そう強いものではありませんので、ちょっとした休憩などで解消できます。
バスドライバーの場合は眠くなっても簡単に運転をやめるわけにはいきませんが、一般のドライバーの場合、単調な高速道路などの運転では、2時間に1回程度休憩をとるということが予防策になると思われます。
「眠気の日内変動」 林 光緒(広島大学大学院総合科学研究科 教授)
──日本交通医学工学研究会 第24回学術総会(2015.7.20)における講演より