死亡事故を端緒に監査を受け、7日間の事業停止処分
北海道運輸局は、平成25年4月15日、旭川市の運送会社E社に7日間の事業停止と279日車の車両使用停止処分を科しました。
死亡事故を端緒に平成24年9月に監査を実施した結果、14件の法令違反(貨物自動車運送事業法輸送安全規則違反等)が発覚したものです。
日頃の安全管理や指導が甘いために重大な事故が起こったと判断された場合、行政処分を免れるのは難しくなります。
改善基準告示違反で監査を受け、30日間の事業停止処分
中部運輸局は、平成27年8月10日、愛知県瀬戸市の運送会社S社に30日間の事業停止処分と車両の使用停止延べ20日間を科しました。
運転者の勤務・乗務時間が国土交通省が定める基準を著しく超えていたために処分したもので、違反に関連する元請け運送事業者に対しては、荷主勧告制度に基づく協力要請書を発行しました。
この監査は愛知労働局から運転者の労働条件改善に関連する通報を受けて実施されたもので、改善基準告示を月間31件以上違反していた運転者が3人以上いたほか、所属運転者の過半数が拘束時間基準に違反していました。
バスの落輪事故で、5日間の使用停止処分
青森市の「みちのく有料道路」で平成27年5月5日に、路線バスからタイヤ2本が外れる事故を起こした青森県十和田市のバス会社に対し、東北運輸局は平成27年9月29日、路線バス4台を5日間使用停止にする行政処分を出したと発表しました。
幸い、事故によるけが人はいませんでしたが、スタッドレスタイヤから夏タイヤに交換したばかりの事故で、タイヤ交換時にボルト・ナットの使用を間違えたため、締め付け不良が発生したと指摘されています。
自動車運送事業の場合、上記のように行政処分が厳しくなっていますが、一般の事業所でもリスクはあります。たとえば、違法な駐停車などを繰り返していると、車両の使用停止処分を受けることがあります。
放置駐車を繰り返し、車両の使用制限
平成18年11月、埼玉県公安委員会は放置駐車違反を繰り返したとして、川越市の建設会社が所有する軽トラックを道路交通法に基づき40日間の運転禁止にする使用制限処分を科しました。
埼玉県警駐車対策課によると、この建設会社は同年6月から9月の間に計7回、駐車違反を繰り返して放置違反金の納付命令を受けていました。
危険な作業を放置したために処分を受けることも考えられます。建設現場や製造現場で「フォークリフトの爪の上に乗った作業」などの危険行動が常態化していたり、運転資格のない作業者にフォークリフトや重機などを運転させて労働災害が起こることがあります。
事故の実態により、労働基準監督署長は事業者に対して運搬機械や設備の使用停止等命令書を交付することができます。これは法的強制力がある行政処分で、命令に従わず機械などを使い続けた場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
また重大事故・死傷事故を起こしたことにより、公的事業への「指名停止」などの行政処分を受けるリスクもあります。
運搬用車両の転落死亡事故で1か月の指名停止処分
平成26年4月23日、木材会社のM社は宮崎県の森林管理署管内で、木材運搬中に運搬車の転落死亡事故を発生させました。この事故で、平成27年2月労働基準監督署から労働安全衛生法違反等で書類送検されました。
これを受けて、国土交通省九州森林管理局は「安全管理措置の不適切により生じた工事関係者事故」として、平成27年2月18日から1か月間、同社に対して工事請負契約等の指名停止処分を実施しました。
工事用車両の軌道内接触事故で6週間の指名停止
平成25年9月3日、建設業者U社は長野県埴科郡の鉄道駅構内で、最終列車の駅通過確認を怠って工事車両を誘導し、列車と車両を接触させる鉄道物損事故を発生させました。
その結果、同社の作業監督者が平成26年9月25日に業務上過失往来危険罪で略式起訴され、10月8日に罰金30万円の略式命令を受けました。
これを受けて、工事発注主の地方共同法人・日本下水道事業団は、「安全管理措置の不適切により生じた公衆損害事故」として、12月26日より平成27年2月5日までの6週間、同社に対して関東地区における指名停止措置を実施しました。
「当社は行政処分を受けるような大事故を起こすはずはない」と思っても、現場の安全管理がずさんだったり、運転者の安全意識が低下していると、事故という形で現実をつきつけられることになります。日頃から管理者として実態把握に努めておくことが大切です。
自社の安全管理が本当に万全なのか、事故が起こる前に現場パトロールなどの社内調査をしましょう。
また、安全運転態度を調べる簡易なテスト等を実施したり小集団活動などの場でアンケートやヒヤリングによる安全意識の調査を行って、リスクの高いと思われる運転者や部署があれば個別に指導しましょう。
このほか、同業他社の行政処分事例などを「他山の石」として運転者教育の教材に使用し、職場全体の事故防止意識を高める努力を続けることが大切です。
職場全体が、確たる根拠もなく「我が社は今まで大事故がなく安全だ」と思い込んでいると危険です。企業の安全風土が劣化しているのにも関わらず、裏付けのない自信で、現場の実態を看過していないでしょうか。
安全運転管理者や運行管理者が、常に「本当に安全だろうか。運転者の意識は高いのだろうか」と問いかける姿勢をもつことが、運転者と会社を守ります。