早いもので、今年もあと1か月を残すのみとなりました。
12月は人や車が慌ただしく動く上に、冬型の気候による危険要因が増します。また、お酒を飲む席も増えることから、飲酒運転のリスクが高まる時期です。
個人的な安全運転目標としては、急ぎの心理による事故防止・スリップ事故防止などに留意しましょう。
管理面では酒気帯び運転事故や酒気帯び運転違反につながるリスクがないかをチェック し、無事故・無違反で年始を迎えられるようにしてください。
■急ぎの心理をおさえよう
無理な交差点進入などを犯しやすい
年末で慌ただしくなりますが「急ぎの心理」に陥ると、交差点などで一時停止を無視したり、赤信号を無理に行くといった行動をしがちです。
急ぎたいという意識が勝つと、自分では「安全運転をしているつもり」ですが、どうしても動作が優先する傾向になりがちです。
とくに慣れた動作を確認と同時にしてしまったり、通りなれた場所で「時間を稼ごう」といった行動になり、そこが事故の落とし穴となります。
【こんな事故が起こっています!】
・遅刻しそうになった自衛官が信号無視
2014年3月24日午後6時25分ごろ、神奈川県相模原市の信号交差点で、バイクと乗用車が出会い頭に衝突する事故が起きました。
この事故でバイクの運転者が死亡し、乗用車を運転していた海上自衛官(54歳)が、故意に信号を無視したとして警察に逮捕されました。
取り調べに対して自衛官は、「遅刻しそうになったので、赤信号とはわかっていたけれど、突っ切った」と供述していて、急ぎの心理が信号無視に結びついたことがわかります。
■スリップ事故に注意しよう
凍結しやすい場所を知っておこう
12月は急激な冷込みにより、降雪や道路の凍結を警戒すべき時期になっています。
すでに北海道など北国では、11月からスリップによる事故が発生しています。暖かい地域でも山沿い等で凍結によるスリップを警戒しましょう。
とくに、以下のような場面・場所で凍結事故が起こりやすいので、ブレーキやハンドル・ギヤ操作を慎重にして、スリップを防止してください。
★1日の気温が、0℃付近を前後する日
★路面がうっすら凍結しやすい明け方と、融けていた水分が再び凍結する日没後
★交差点手前、踏切手前、坂道の信号など、車の発進・停止の多い場所
(水分の融解と凍結を繰り返している可能性があります)
★橋梁の上、山間部の日陰部分、トンネル出入口、切り通し
★凍結防止剤を散布したあと、時間がたっている場所
■酒気帯び運転のリスクを取り除こう
依然として、酒気帯び運転による事故や違反の報道を目にします。ニュースの多くは社会的責任の大きい公務員やプロドライバーの例ですが、一般ドライバーの酒気帯び運転も下の事例のような重大事故でない場合は報道されないだけで、割合は少なくないと思われます。
「飲酒運転の根絶」は、都道府県が実施する年末・交通事故防止運動の重点項目に入っていますが、事業所でも飲酒運転が重大な犯罪であるという認識を持って管理・指導の手を緩めないようにしてください。
とくに多量飲酒の習慣のある運転者に対しては、翌朝の酒気残りによる酒気帯び運転の危険が大きいことを指導し、「アルコールは簡単に抜けない」ことを強く意識させましょう。
【こんな事故が起こっています!】
・酒気残り運転者の車と正面衝突で2名重傷
2015年10月10日午前6時ごろ、大分県宇佐市内の市道で軽乗用車に乗用車が道路中央部で正面衝突し、軽乗用車側の2人が背骨を折るなどの重傷を負いました。
乗用車を運転していた会社員の男性(29歳)からは高濃度のアルコール分が検出され、酒気帯び運転で警察に逮捕されました。
この男性は、「同僚のアパートで酒を飲み、仮眠してから帰宅する途中だった」と供述しています。
飲酒量が多かったにもかかわらず、仮眠で酒気が抜けたと軽く考えて運転したことが原因と思われます。
酒気が残っていたため、車両をうまくコントロールできずに衝突事故を起こしたものです。
■飲酒運転後「半数が職場を去る」厳しい現実
飲酒運転が原因で免許取消処分などを受けた人を対象に、兵庫県警が実施した調査では、勤め人の半数が職場を解雇されたり、退職したりしていたことがわかっています。
・2014年9~10月に免許取消または90日免停処分を
受けた運転者、計58人を対象に調査
・自営業や無職などを除く26人の半数=13人は
→ 「解雇・退職」に
・残る13人も
→「降格・減給等」8人、「配置換え」5人
飲酒運転が仕事に及ぼす影響は非常に大きいということがわかります。こうした実態を踏まえて、運転者に酒気帯び運転防止を厳しく指導しましょう。
※兵庫県警察本部交通企画課のアンケート調査(2014年11月発表)による
■こんな酒気帯びのリスクに注意!
!「前夜の酒気残り」に気づかないままマイカー通勤し → 酒気帯び運転
!「飲酒後に仮眠してアルコールが醒めた」と勘違いし → 酒気帯び運転
!「帰宅後のバイクによるコンビニへの買い物」などの → 酒気帯び運転
■風邪や薬の副作用に注意しよう
風邪の季節ですが、以下のような生活習慣を身につけると、かなり感染を防ぐことができます。
★帰宅、帰社後のうがい・手洗いの励行
★就寝前の歯磨き、口腔衛生の励行
★十分な睡眠と適度な加湿
また、風邪をひいたため薬を飲んで運転するときには、眠気が生じる薬ではないかなど、副作用を確認しましょう。
医師・薬剤師に確認するだけでなく、初めて服用する薬は念のため運転しない日に副作用の出方を試しておくことが大切です。
うがい・手洗いの徹底
せき・クシャミが出たら
マスクを着用
十分な睡眠が感染症予防には重要!
【こんな事故が起こっています!】
・風邪による体調不良や風邪薬による
眠気を覚え正面衝突!
2014年4月20日午後6時ごろ、愛知県一宮市の名神高速道路で観光バスが中央分離帯ガードレールを突き破り対向車線を約120メートル逆走、乗用車など計9台に衝突しました。
事故を起こした運転者は風邪をひいていて、事故の30分ほど前には、風邪による体調不良や風邪薬で強い眠気を覚え、サービスエリアで約5分休憩したものの、疲労感や眠気が覚めないまま発進して、居眠り運転に陥って事故を起こしてます。
この事故ではバス会社(大阪府)の社長でもある運転者が自動車運転死傷行為処罰法違反で起訴されたほか、バス会社は近畿運輸局から車両の165日間使用停止という行政処分を受けました。
(処分は2014年12月4日実施)
【すべての安全運転管理担当者の皆さんへ】
■年末の事故防止運動に積極的に参加しよう
年末・年始は地方自治体や交通安全団体の主催する年末の交通事故防止運動(年末の交通安全県民運動)が展開されます。
運転者向けの安全運転指導資料を入手するよい機会なので、管理者は団体や警察署の主催する各種の交通安全の会合に参加し、地元の交通警察官などから人身事故の事例や事故多発地点の情報などを入手しましょう。
また、ポスターの貼付や事故防止リーフレットの配布だけでなく、職場単位で地域の交通安全誘導活動などにボランティアとして参加して、事故防止意識を高めましょう。
【事業用自動車の運行管理者の皆さんへ】
■年末年始の輸送等に関する安全総点検
国土交通省が毎年、輸送機関に対して自主点検等を通じた安全性の向上を呼びかける運動を実施しています(平成27年12月10日~平成28年1月10日)。
自動車運送事業者はもちろん、鉄道、船舶を含めた全輸送機関に対して、災害や事故、テロや伝染病の流行などに備えた自主点検等を通じて安全性の向上を呼びかけています。
とくに以下の点を重点的にチェックしましょう。
自主点検を実施した事業所は平成28年2月12日までに管轄の運輸支局まで送付しましょう。詳しくは同省のWEBサイトを参照してください。
●安全管理(特に過労運転の防止対策、運転者等に対する指導監督体制)
具体的には、
「健康管理体制の状況(運転者健康管理マニュアルを踏まえて管理指導 )」
「過労運転防止対策(改善基準告示の順守 )」
「飲酒運転・薬物等運転への防止対策(危険ドラッグを含めた対策 )」
「点呼の実施(運転免許証の確認を含む )」
「車両の日常点検整備」「定期点検整備等の実施状況」
「コンテナ輸送における安全対策の実施状況 」
「バスターミナル及び自動車道の保守点検の実施状況 」 等
●運行管理の実施状況
●関係法令の遵守状況
●事故、自然災害等発生時の乗客等の安全確保のための通報・連絡・指示体制の
整備・構築状況
●テロ及び新型インフルエンザの発生に備えた体制の整備状況
■トラック輸送の安全運動
全日本トラック協会では、11月16日から第55回目の「正しい運転・明るい輸送運動」を実施しています(平成28年1月10日まで)。 また、陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)の主唱する労災防止運動(平成28年1月31日まで)も実施されます。
交通事故だけでなく荷役作業時における墜落・転落災害防止などを推進します。詳しくは陸災防のWEBサイトを参照してください。
■運行管理者試験の申請期限
平成27年度第2回めの運行管理者受験申請書の頒布期間・申請期間は、12月4日(金)が期限です(インターネット申請は14日(月)まで)。
運転者や補助者、従業員のなかで運行管理者試験にチャレンジする人がいる場合は、申請を急ぎましょう。
第2回試験の実施日 平成28年3月6日(日)
受験申請の申込み先
■後退時等の安全確保を徹底しましょう
国土交通省は、事業用自動車を運行する事業所に対し、10月16日「後退時の安全確保の徹底について」と題する通達を、全日本トラック協会などを通じて伝達しました。
これはさる10月3日に徳島市内で視覚障害者の男性と盲導犬が、後退警報装置のスイッチをオフにしたまま後退したトラックにはねられ死亡した事故を受けたもので、以下の点で安全確保を徹底するように求めています。
●大型車を後退、進路変更、転回させるときは、
後方の安全確認を十分に行う
●後退警報装置、左折警報装置などを備える車両
では、やむを得ない場合を除き、解除しない
●運転者に対して大型車両の構造上の特性(死角
の大きさ)などを十分に指導しておくこと
なおトラック・バス等は、バックモニターを設置した車両でも事故例が多いのが特徴です。
モニターの距離感が実際の視覚とは異なっていることや、モニターにも死角(とくに上方)があるため、モニター画面を確認しながら後退した場合でも衝突している事例があります。
モニターに頼りすぎないようにしましょう。
日 付 | 行 事 等 |
先月より~ 1月10日(日) |
・第55回「正しい運転・明るい輸送運動」 全日本トラック協会主催──詳しくは、全ト協のWEBサイトを参照してください 。 |
1日(火)~ 28年4月30日 |
・平成27年度 安全衛生教育促進運動──中央労働災害防止協会(中災防)が提唱し展開する活動。雇入れ時教育、特別教育などの義務付けを踏まえて安全教育などの確実な実施を促しています。 |
1日(火)~ 31日(木) |
・大気汚染防止推進月間(環境省) ──12月は、自動車交通量の増加、ビルや家庭の暖房ほか気象条件などの影響により、大気汚染物質の濃度が高くなる傾向にあります。このため、環境省では、「エコドライブの実践」など、広報活動を通じて大気汚染物質の削減を呼びかけています。 (→ 詳しくは同省のWEBサイトを参照) |
1日(火)~ 1月31日(日) |
・陸上貨物運送事業「年末・年始労働災害防止強調運動」
──陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)の主唱する労災防止運動です(2016年1月31日まで)。 |
1日(火)~ 1月15日(金) |
・平成27年度「建設業年末年始労働災害防止強調期間」 ──建設業労働災害防止協会が、災害の多い年末年始に積極的な災害防止運動を展開します。交通労災としては、現場送迎時の事故防止、路面凍結等によるスリップ事故の防止などを強調しています。 スローガン「無事故の歳末 明るい正月」 |
3日(木) |
・個人タクシーの日──東京都で40~50歳で3年間無事故無違反の優良運転手173人に個人タクシーの免許が許可された日を記念して1959(昭和34)年に制定されました。 |
3日(木)~ 9日(水) |
・障害者週間──障害者基本法では、12月3日から9日までを「障害者週間」と定めています。障害者の自立と社会参加を実現していくためのフォーラムやセミナーなどが行われます。 |
7日(月) |
・大雪 |
8日(火) |
・一般社団法人交通科学研究会 平成27年度・研究発表会 日時:10:00~17:00 於:大阪市立大学文化交流センターホール(大阪駅前第2ビル) 詳しくは、同研究会のWEBサイトを参照してください。 |
8日(火) |
・12月の製品安全点検日──経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として、製品の安全な使用法やリコール製品等について、情報提供・注意喚起を行っています。 |
9日(水) |
・障害者の日 |
10日(木) |
・世界人権デー |
10日(木)~ 1月10日(土) |
・年末年始の輸送等に関する安全総点検(2016年1月10日まで) ──国土交通省は毎年、輸送機関に対して自主点検等を通じた安全性の向上を呼びかけています。 (※詳しくは、同省のWEBサイトを参照してください) |
12日(土) |
・バッテリーの日──電池工業会が設定。野球のバッテリーの守備位置数字が1、2であることから。(※自動車バッテリーの基礎知識については同会のWEBサイトを参照してください) |
15日(火) |
・観光バス記念日──1925年(大正14年)のこの日、東京で初の遊覧乗合自動車(観光バス)が登場しました。 |
15日(火)~ 1月15日(金) |
・年末年始無災害運動(2016年1月15日まで) ──中央労働災害防止協会が主唱する運動、今年で45回目を迎えます。今年の共通標語は、 「たぶん」「だろう」に危険がひそむ しっかり点検 年末年始 (※詳しくは、中災防のWEBサイトを参照してください) |
16日(水)~ 1月15日(金) |
・年末年始港湾無災害強調期間 ──港湾貨物運送事業労働災害防止協会による年末年始の事故防止活動。 |
20日(日) |
・道路交通法施行記念日 ──1960年(昭和35年)のこの日道路交通法が施行されました。それまで交通行政は1947年制定の「道路交通取締法」によって行われ、各都道府県の行政処分基準などにはバラつきがありましたが、全国で統一した法制となったのです。 |
22日(火) |
・冬至 |
23日(水) |
・天皇誕生日 |
25日(金) |
・クリスマス |
28日(月) |
・官庁仕事納め |
12月中旬 | ・平成27年11月末における交通事故発生状況公表(警察庁) |
~ 12月中旬 |
・荷主等の事業場の労災防止担当者への安全衛生教育講習会 |
~12月18日 |
・過重労働解消のためのセミナー(厚生労働省委託事業)──長時間労働削減対策などに必要な知識やノウハウ、取り組み事例の紹介。各都道府県別に各回100名定員で開催(東京・大阪は複数回実施)。詳しくは、過重労働解消セミナー運営事務局のWEBサイトを参照してください。 |
12月下旬 |
・平成27年11月末労働災害速報(陸上貨物運送事業労働災害防止協会) |
◆12月の日没時間(国立天文台天文情報センターによる)
1日(火) | 福岡 17:10 | 大阪 16:47 | 東京 16:28 |
15日(火) |
福岡 17:12 | 大阪 16:49 | 東京 16:29 |
31日(木) | 福岡 17:20 |
大阪 16:57 |
東京 16:37 |
「早めにつけよう おもいやりライト」
運動に取り組みましょう!
運転者の皆さん!12月は冬至をはさみ一年でも最も日が短くなる時期です。早めの点灯が大切です。遅くても日没の30分前には、ぜひ点灯するとともに、歩行者の見落としなどを警戒してください。
「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯を ドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。横浜の運動事務局の呼びかけに呼応して全国で点灯活動を展開する動きが出ています。
※詳しくはおもいやりライトのサイトを参照してください
また、JAF(日本自動車連盟)も早期ヘッドライト点灯キャンペーンを展開し、JAFインターネットWEBサイトでライト点灯に関して様々な情報提供をしています。
※詳しくは JAF Safety Light のサイトを参照してください