5月の運転管理 …… 2016(平成28)年

■横断歩行者との事故を防ごう

 風薫る5月、レジャーも仕事も快適な季節ですが、事故防止でまず取り組みたいのは、事故多発地点である交差点での安全確保です。とくに横断歩道における歩行者などの見落としに注意しましょう。

 

 5月に入ると早い事業所では、新入社員が業務用車両の運転を始める時期です。経験の浅い運転者の場合はバックなどが苦手で、取引先の構内などで接触事故を起こす例がよくみられます。

 駐車場など安全なスペースでバック事故指導に取り組んではいかがでしょう。 

  

■5月の安全運転目標──ドライバーの皆さんへ

■交差点の歩行者見落としに注意しましょう

 交差点は事故多発地点、なかでも人身事故では、横断歩道を横断中の歩行者を見落とす車による事故が少なくありません

 

 交通事故総合分析センターの調査によると、歩行者の聖域とも言われる横断歩道上での死亡事故が歩行中死者の14%という極めて高い割合で起こっていることが判明しています。

 

 その原因でもっとも多いのは、運転者が横断歩道に歩行者がいるのをよく見ていなかったために起こっています(全体の61%)。

イタルダ・インフォメーション№100より
イタルダ・インフォメーション№100より

右折時の見落とし注意!

 見落としの原因は、夜間などで歩行者の横断に気づかなかった例もあるようですが、昼間、交差点で右左折する際に安全確認が不十分なため、歩行者を見落とす例も少なくありません。

 とくに右折時は車の右側方に死角があります。対向車線が気になって右後側方の確認が甘いと事故の危険が高まります。

■横断歩道では歩行者が優先

 歩行者は、横断歩道が歩行者優先と考えて横断していますから、当然、車の方が止まってくれると思います。

 とくに高齢の歩行者は、車に期待する気持ちが強く、たとえ横断歩道の歩行者用信号が赤に変わって、車がスピードを出して曲がってくるときでも、横断をし続けることがありますので、注意しましょう。



  

■5月の重点管理項目──管理者の皆さんへ

■バック事故防止指導に取り組みましょう

 大阪香里自動車教習所の安全運転管理支援チームの分析によると、企業の業務中交通事故ではバック事故が全体の35%でトップを占めているということです。

 

 ベテラン運転者でもうっかりしてバック事故を起こすことがありますが、経験の浅い運転者では、とくにバックでの事故を起こしやすいので、具体的な運転指導が重要です。

 同支援チームのデータによると、バック事故の72%は駐車場内で発生していますので、駐車場のなかにパイロンなどで車庫入れコースを設定して、苦手な操作や当たりやすいポイントなどを見て指導すれば、事故防止には有効ではないかと考えられます。

「バック事故」実技講習ノート(大阪香里自動車教習所安全運転管理支援チーム) より
「バック事故」実技講習ノート(大阪香里自動車教習所安全運転管理支援チーム) より

バック事故の防止

バック事故防止の3つのポイント

 同支援チームは、バック事故の実技指導は、教習所などのコースがなくても事業所内で実施できるとして、「停まる」「確認する」「やり直す」の3つの事故防止ポイントをアドバイスするように訴えています。

 

1 停まる

 いきなり駐車スペースにバックしていかないで、まずスペース横で停まることが大切。停まることができない運転者はバックだけでなく、交差点などでも事故を起こしやすいので、停まる習慣をつけることが大切です。

 

2 確認する

 停止すれば、駐車スペースの障害物や余裕の有無などが確認できます。このとき、ピラーの死角なども意識して、ピラーによって見えにくい場所がどこにできているかを確認させることも重要です。

 

3 やり直す

 バック中には無理をしないで、少しでも不安を感じたら、切り替えしたりやり直すことが大切であることを、繰り返し指導しましょう。

 当たるかも知れないと不安があるにもかかわらず、停まってやり直さずバックして当たる例が多いので、やり直す勇気があれば、多くのバック事故は防ぐことができます。

 

 詳しくは、「バック事故」実技講習ノート(安全運転管理支援チーム編集)を参照

  

■5月の健康管理目標──従業員の皆さんへ

健康起因による交通事故

腰痛防止に努めましょう

 長く運転業務に携わる人やプロドライバーに多い病気の一つが「腰痛」です。
 腰痛には、急な動作や身体の姿勢が原因で起こる急性のものと、長期間続く慢性のものがあり、ドライバーはその両方を警戒する必要があります。

 

★急性腰痛は荷物の持ち上げ時に注意
 貨物を運ぶトラックドライバーや顧客に製品を届ける営業マンなどは、重たい荷物を持つ機会が多いと思います。無理な重量や悪い姿勢で荷物を運ぶと急性腰痛になりやすいので次のポイントに注意しましょう。
 ・物を持ち上げるときはひざを曲げてからだを物に近づけてから
   立ったまま荷物を持ち上げないで、ひざを曲げて十分に荷物に近づき、お腹に力を

  入れながらひざを伸ばして立ち上がります。

健康起因による交通事故

 ・体重の40%を目安に運搬

   厚生労働省の「腰痛予防対策指針」では、1人で持ち上げる

  重量の目安を示しています。

   成人男子の場合は体重の40%以下に止め、それ以上の荷

  物の場合、複数で運んだり、リフトなどを使用するよう勧

  告しています。

   女性の場合、体重の24%以下を目安にしましょう。

 

  *「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」より

   (中央労働災害防止協会発行)
 

健康起因による交通事故

★慢性腰痛はストレス・振動も影響する

 荷役のないバスドライバーやタクシードライバーにも慢性的な腰痛が多発することが知られています。その原因としては、運転席に長時間同じ姿勢で固定されるとともに、継続して振動にさらされていることが考えられます。


 滋賀医科大学の垰田和史准教授らの研究によると、同じバス会社のドライバーでも、アップダウンや道路の段差などが多い路線を運転する人や長時間運転する人ほど腰痛症状を訴えやすいというデータがあり、道路やエンジンから受ける振動がドライバーの腰に大きな負担を与えていることがわかります。

 なお、座席に振動吸収マットを敷いたり、運転席そのものを高機能の振動吸収シートに交換することで症状が改善する可能性があるそうです。

 また、日本整形外科学会と日本腰痛学会の研究によると、心理的なストレスも腰痛の慢性化に影響を与えることがわかっています。

 乗客との対応や細かい運行スケジュールなどに留意する必要がある貸切バス・観光バスのドライバーは、運転業務だけでない過剰な心理ストレスにさらされています。この点にも注意し、負担が大きい場合は上司に相談して改善しましょう。

  

■その他の管理・指導項目

【すべての安全運転管理担当者の皆さんへ】

禁煙週間

運転者の禁煙を推し進めましょう

 

 運転中の喫煙は、わき見運転などに結びつきやすく、非常に危険です。

 世界禁煙デーに呼応して禁煙週間が実施されますが、ドライバーの運転中の禁煙を推し進めましょう。

 

 最近は、職場の完全禁煙に取り組む企業が少なくありません。そのため、運転中は数少ない喫煙機会となりつつあり、むしろ、いけないとは思っても喫煙してしまう運転者がいるかも知れません。

 タバコのため灰皿にわき見していて、死亡事故になった事例もありますので、厳しく禁煙を呼びかけてください。

  

【事業用自動車の運行管理者の皆さんへ】

■アルコール検知器のメンテナンスをしましょう

 

 アルコール検知器によるアルコール検査が2011年5月に義務づけられてから5年が経過しました。

 使用している検知器のメインテナンスをしていますか。

 

 アルコール検知器は、備え付けるだけでなく、常時有効に機能を保持しなければなりません。 

 測定誤差が生じていないか、「校正」と呼ばれる計器精度を調べる点検を定期的に実施する必要が

 あります。機器によって差があり、少なくとも1年に1回または数千回使用に1回など、校正時期が定められていますので、チェックしておきしょう。

■運転者への指導・監督を徹底しましょう

 

 国土交通省は運転者への指導・監督の指針を改訂します。

 

 貨物運送自動車の指針については、具体的な改訂が行われ、項目が12に増えるなど、内容が大幅に見直されました。

 すでに公布されましたが、道路交通法改正により準中型自動車免許が施行される平成28年6月16日までには施行されることになりました。(詳しくは国土交通省のWEBサイトを参照)

 

  今後は、指導・監督の項目や内容が増えるとともに、現場における指導実態に対するチェックや行政処分も厳しくなることが予想されますので、教育・指導計画を充実させましょう。

 

 バスの場合は軽井沢貸切バス事故対策検討委員会で、経験の浅い運転者への指導・監督が不十分でないかという点が強調されています。また、以前から運転者の健康管理や適性診断結果に応じた指導・監督が重要であることが国土交通省の事故調査報告書などで指摘されています。

 指導・監督の指針もその点を踏まえた改正になるものと考えられます。

 

 実技指導を含めた、多角的な運転者指導を検討しましょう。

  

■5月の安全運転管理ごよみ (2016年/平成28年)

日  付 行 事 等

 1日)~

 30日(火)

・消費者月間──5月は「消費者月間」。事業者、行政が一体となって消費者問題に関する啓発・教育等の各種事業を集中的に行っています。消費者安全法に基づく報告義務のある重大事故は消費者庁ホームページで毎週、公表されています。乗合バスやタクシーの乗客被害、自動車の火災なども含まれます。

 1日

・メーデー

 3日

・憲法記念日

 4日(

・みどりの日

 5日(

・子どもの日

 8日(

・世界赤十字デーWorld Red Cross Red Crescent Day)──赤十字 を創設したアンリ・デュナンの誕生日を記念して制定されました。

 8日(

・母の日──第2日曜日

 10日(火)

・5月の製品安全点検日

──経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として、製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っています。

 12日(木)

・自転車重過失事故(大阪)から5年──2011年5月12日、大阪市浪速区の国道25号線で、車2台の前を強引に横切った危険な自転車の行動により歩道上の歩行者2名が死亡しました。車の運転者は不起訴となり、自転車乗用者が重過失致死罪で禁錮2年の実刑判決を受けています

 20金)~

運行管理者試験(平成28年度第1回)の申請期間

 ──インターネットによる申請は6月20日(月)まで

 ──試験日2016年8月28日(日)

 ──詳しくは、運行管理者試験センターwebを参照)

 24(火)

 27日(金)

・第89回日本産業衛生学会──産業保健に関する様々な実践報告・学術発表が行われる。雇用形態と健康管理のあり方、職場におけるアルコール対策、笑いを生かした心身の健康づくり、労働者のメンタルヘルスなど、話題満載。

 ──於:福島県文化センター(福島市春日町5-54)

 ※詳しくは同学会のWEBサイトを参照してください。

 25(水)

 27日(金)

・自動車技術会 2016年 春季大会/学術講演会

人とくるまのテクノロジー展 2016

 ──於:パシフィコ横浜(横浜市西区みなとみらい1-1-1)

 ※詳しくは同会のWEBサイトを参照してください。

 25(水)

 27日(金)

・運輸・交通システムEXPO2016──事業用自動車ドライバーの安全運転、事故防止、省エネ運行、健康管理のためのシステムや製品、技術を集めて紹介/主催は、運輸・交通システムEXPO実行委員会

 ──於:東京ビッグサイト(江東区有明3-11-1)西4ホール

 ※詳しくは、イベントのWEBサイトを参照してください。

 31日(火)

世界禁煙デー ── 禁煙週間は6月6日月曜日まで。詳しくは厚生労働省のWEBサイトを参照してください。

   
 5月中旬 平成28年4月末までの交通事故発生状況発表(警察庁
 5月上旬 ・平成27年度自動車アセスメント結果の発表(国土交通省
 5月下旬 平成28年2月分 トラック輸送情報国土交通省

 

 ◆5月の日没時間国立天文台天文情報センターによる)

 1日( 福岡 19:02 大阪 18:43

東京 18:28

 15日(

福岡 19:12 大阪 18:54 東京 18:39
 31日(火 福岡 19:23

大阪 19:05

東京 18:51

「早めにつけよう おもいやりライト
 運動に取り組みましょう!

 運転者の皆さん!5月となると日没時刻はかなり遅くなっていますが、レジャードライブなどで山道を走行するときには、かなり早めの点灯を忘れないようにしてください。遅くても日没30分前(関東地方なら6時前)にはぜひ点灯するとともに、歩行者、自転車の見落としなどを警戒してください。

 「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯を ドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。横浜の運動事務局の呼びかけに呼応して全国で点灯活動を展開する動きが出ています。


 詳しくはおもいやりライトのサイトを参照してください

 

 また、JAF(日本自動車連盟)も早期ヘッドライト点灯キャンペーンを展開し、JAFインターネットWEBサイトでライト点灯に関して様々な情報提供をしています。

 ※詳しくは JAF Safety Light のサイトを参照してください

 
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12月23日(月)

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