7月の運転管理 …… 2016(平成28)年

■危険の芽を摘んで事故を防ごう

 7月は、1日の国民安全の日を含む1週間「全国安全週間」が実施されるほか、都道府県の交通安全関係団体による夏の交通事故防止運動なども実施されます。

 全員参加で職場や交通の場における危険を発見して、未然に事故を防ぐ安全活動を実施しましょう。

 

 暑さが一段と厳しくなる一方、7月上旬は梅雨末期の集中豪雨など気象状況が不安定な時期でもあり、危険要因が非常に多くなる時期でもあります。

 

 運転者の健康管理や気象・交通情報の収集など、管理者にとっては忙しい毎日が続きますが、気持ちを引き締めて臨みましょう。 

  

■7月の安全運転目標──ドライバーの皆さんへ

■目視確認を確実に実行しましょう

 進路変更時や右左折時の衝突事故の多くは、ミラーの死角に入っていた自転車やバイクなどを見落としたことが原因となっています。

 

 こうした事故を防ぐためには、進路変更などをする前には落ち着いて、ミラーの確認だけで済まさずに、必ず直接目視をして車の横に他車(者)が隠れていないか確認する習慣をつけることが大切です。

 

 ここで注意したいのは、「自分はいつも目視確認をしている」と思い込んでいる人も、目視を妨害するような条件が加わると、ミラーをチラッと確認しただけで左折したり、進路変更をしてしまうことがあるということです。

 

 具体的にどんな場合でしょうか?

■慌てて進路変更をするような時

 

 ひとつは、慌てて進路変更をしてしまうケースです。前方の交差点で右折すると思い込んでいたら、実は一つ手前の交差点であることに気づき、慌てて右折レーンに進路変更をしようとしたときなど、右側への目視がスッポ抜けることがあります。こんなとき、事故が発生しやすくなります。

 

 急いで進路を変更するときにも、「慌てると当たる!」と意識して、ハンドル操作をしてしまう前に、チラッとでもいいので鼻を動かして横を目視すれば、事故を防ぐことができます。

左折時に対向車などが気になる時

 

 ふたつ目は、曲がる方向だけでなく前方が気になるときです。

 左後側方に注意を集中して左折することができれば、バイクなどの見落としは少ないはずですが、前方から強引に右折してくる対向車などがいると、そちらに気を奪われてミラーをチラッと見るだけで左折してしまう場合があります。

 

 こんなときは、強引な右折車と張り合わず場合よっては先を譲り、自分は落ち着いて徐行し、必ず左後方を目視確認することを肝に銘じておきましょう。


  

■7月の重点管理項目──管理者の皆さんへ

■全員参加の安全活動を実施しましょう

 

 全国安全週間(1日~7日)に沿って、総合的な安全活動を実施しましょう。

 本年度のスローガンは、

 

見えますか? あなたのまわりの 見えない危険

 みんなで見つける 安全管理

 

 平成27年中の労働災害による死者数は972人で、統計を取り始めて初の1000人以下となりました(厚生労働省調)。

 しかし、死傷者数は116,311人と10万人を超えていて、決して少ない数字ではありません。

 

 全員で職場における潜在的危険を発見するように努めるとともに、とくに運転に関しては過労や長時間運転によるリスクが高まっていないかをチェックしましょう。

 

 また、トラックや高所作業車、フォークリフトなどを使用する事業所では、作業中の転落・墜落事故防止にも気を配ってください。


【こんな事故が発生しています】

ゴミ収集中にトラックの荷台から転落──労基署が産廃業者を送検

 平成28年1月15日、滋賀県野洲市内でゴミ収集作業中にトラック荷台から作業員が転落し、意識不明の重体となる労働災害が発生しました。

 

 滋賀・大津労働基準監督署は、ゴミ収集作業中にトラックの荷台から労働者が転落しないような安全措置を講じなかったとして一般産業廃棄物収集業を営むO社と代表取締役に対して、労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で、平成28年4月19日に大津地検に書類送検しました。

 

 同社はペットボトルゴミの収集作業をしていた際、走行中のトラック荷台に作業者(46歳)を乗せていましたが、この時、荷台後部にある「あおり」を閉じずに走行し、作業する労働者が転落しないような策を講じていなかった疑いがあります。 

 日常的にあおりを開けたままで作業をさせていたものとみられています。

 

■事故の教訓

・管理者は作業実態を知っていたのか?

 運行の管理者や作業を指揮していた管理職は、あおりを開けたままの作業実態を知っていたのでしょうか?

■知らなかったとしたら →  現場作業の

 実態を把握していなかった責任は大きい

知っていたとしたら  → 現場の不安全状

 態を容認・放置した責任は更に大きい 

・現場の同僚はどう対応していたのか?

 同僚や先輩作業者は、転落の危険がある作業をどんな風に見ていたのでしょうか?

■皆が危険と感じていなかったとしたら → 

 危険に対する感受性、危険予測能力が

 低いため、不安全行動が生まれた

危険と感じたが黙っていたとしたら →

 危険を率直に指摘できる環境がない


  

■7月の健康管理目標──従業員の皆さんへ

健康起因による交通事故

「1日8千歩」を目標にしましょう

 

 最近の健康指導では、ウォーキングは1日1万歩ではなく、およそ8000歩を目標にしたらいいと言う説があります(東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利博士などが提唱)。

 

 これは、65歳以上の高齢者も含めた目標ですから、若い方はもう少し多い歩数でも構わないでしょうが、毎日1万歩以上を目標にして、疲れ過ぎるほど歩くと、健康維持にはかえって逆効果だそうです。

 とにかく、毎日適度な運動負荷を身体に与えることが、健康の維持にはとても重要なことがわかってきたのです。

 

 というのはコレステロールや中性脂肪などの高い人も、コレステロール値や脂肪の多い食品を減らすだけでは、なかなか体内のコレステロール値や脂肪の量は下がらないことが、厚生労働省の研究でも明らかになってきました。 

65歳以上の高齢者5千人対象の研究より(青柳らによる)
65歳以上の高齢者5千人対象の研究より(青柳らによる)

 食事療法だけでは限界があり、定期的な運動で筋肉の衰えを防ぎ、新陳代謝の高い身体を維持する必要があるのです。

 

■20分の「速歩き」を意識する 

 青柳博士は1日8000歩のなかで、とくに20分は「速歩き」をすることで、高血圧症などの予防になると推奨しています。

 

 いつもより大股で力強く歩くことを心がけると、適度な運動負荷となります。

 

 1日1万歩以上も歩く習慣がありながら「歩幅の狭い、ゆっくりした」低い運動刺激だけだったため、高齢になって骨粗鬆症になったという女性もいるそうです。

 

 歩くときは、ときどき「速歩き」を意識しましょう。 

  

■その他の管理・指導項目

【すべての安全運転管理担当者の皆さんへ】

禁煙週間

■7月は熱中症の予防強化月間です
 

 平成27年中の職場における熱中症による死傷災害統計をみると、死傷者数は464人で前年より41人の増加です。なお、死亡者数は29人で過去10年間で2番めに多い数字となっています。

 

 また、過去6年間(平成22年~27年)の熱中症死傷者を業種別にみると、最も多いのは建設業(30.2%)、次いで製造業(18.5%)です。

 この2つの業種で全体の約5割を占めていますが、運送業も12.5%と第3位に位置していますので、運転業務に携わる人も注意しましょう(いずれも、厚生労働省のデータによる)。 

 

■場合によっては、救急車で搬送を!

禁煙週間

 熱中症は、重症度に応じて次の3段階にわけられます。

 

【Ⅰ度】 → 現場の応急措置で対応できる軽症

 症状:めまい、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗

 

【Ⅱ度】 → 病院への搬送を要する中等症

 症状:頭痛、気分不快、吐き気、嘔吐、虚脱感

 

【Ⅲ度】 → 入院して集中治療を要する重症

 症状:意識障害、けいれん、高体温、手足の運動障害

 

 現場での応急措置としては、涼しい風通しのよい場所に避難させて、できるだけ早く身体を冷やすことが大切です。

 

 冷たい水分を与えて、発汗が多い場合は塩分の補給も必要です。スポーツドリンクなどを飲ませましょう。

 自力で水が飲めない場合は、迅速な搬送が必要です。

 

 熱中症の情報は→ 環境省「熱中症予防情報」

  

【事業用自動車の運行管理者の皆さんへ】

バス事業者向け

■運行管理に関する規制が強化されます

 

 国土交通省は、軽井沢バス事故を踏まえて事故対策委員会で協議してきましたが、このほど結果を取りまとめて貸切バスの安全対策について公表しました。

 事態を重く見た異例の迅速対応で、今年7月以降は貸切バス事業者に対する規制の強化や、運行管理者の業務や責任の拡大、運転者教育の強化など、さまざまな対策が実施されます。

 

●事業停止・事業取消処分の範囲拡大

 取り急ぎ実施される対策としては、貸切バス事業者が悪質な違反をして社会的影響の大きい事故を起こした場合、事業許可の取消処分や事業停止処分を行うことができるようになります。  → 【平成28年6月中に通達を改正し、8月中に実施予定】

 

●運行管理者の資格返納処分強化

 貸切バス事業者が事業停止処分を受けるような悪質な違反をして、運行管理者の関与が認められる場合は、運行管理者資格の返納が命じられるようになります。

  → 【平成28年6月中に通達を改正し、8月中に実施予定】

 

●資格返納者は補助者としての業務を禁止

 返納命令を受けた運行管理者は欠格期間中、補助者としての運行管理業務に従事できないようになります。 → 【平成28年7月上旬に国土交通省令を改正し、12月中に実施予定】

 

●運輸安全マネジメントの強化

 安全管理が不十分とされる事業者に対する運輸安全マネジメントの評価を強化します。

  → 【平成28年7月から開始予定】 

 詳しくは  → こちらも参照

 

■車内事故防止キャンペーン

 

 7月の1か月間はバス車内の乗客事故を防止するための事故防止キャンペーンが実施されます。

 

 交通事故総合分析センターの統計によると、乗合・貸切バスの車内事故件数(死傷事故)は平成26年中に575件発生し、重傷者が67件、軽傷者が508件でした。乗合バスが552件・貸切バスは23件です。

 

  車内事故負傷者数の年齢層別分析では、75歳以上が36.5%とトップを占め、65歳~74歳が17%と高齢者が過半数を占めています。

 

 バス協会では、ドライバーがアナウンスなどを活用して走行中の乗客安全確保を徹底するとともに、急ブレーキや急発進などを控えるよう教育を呼びかけています。

 

 なお、関東運輸局では、関東地区バス保安対策協議会と合同で「バス事故防止対策検討ワーキング・グループ」を設置して事故防止指導を展開しています。 → こちらの資料を参照

 

(※セルフチェックシリーズ「車内事故の危険度をチェックしよう」はこちらを参照 

トラック運送事業者向け

■梅雨末期、台風期の防災対策を強化しよう

 

 全日本トラック協会と都道府県トラック協会に対して、中央防災会議会長(内閣総理大臣)から、「梅雨期及び台風期における防災態勢の強化について」要請がありました。

 

 例年、梅雨末期の集中豪雨や台風により大きな被害が発生しているので、運送事業者の方々も地域の気象・防災情報に留意し、自治体などと協力して防災体制を構築するとともに、洪水や土砂災害の起こりそうな危険箇所などの情報を職員にも周知してほしいというものです。


 洪水といえば、昨年9月の鬼怒川堤防決壊による茨城・栃木県などの大災害が記憶に新しいと思いますが、7月にも過去に大きな水害が各地で発生しています。

 

  • 平成22年7月広島豪雨──梅雨前線によって発生した豪雨により山崩れ,がけ崩れが相次ぎ死者は5名にのぼる
  • 平成23年7月新潟・福島豪雨──両県で発生した集中豪雨により6河川で決壊、死者・行方不明者は6名にのぼる
  • 平成24年7月九州北部豪雨──九州北部を中心とした大雨により、死者30名、行方不明者3名、道路損壊も相次ぐ。

 

 コミュニティFMやインターネットの災害ページなども活用して、最新の情報を集めるように努力してください。

  

■7月の安全運転管理ごよみ (2016年/平成28年)

日  付 行 事 等

 1日(金)

・国民安全の日 ──交通事故、火災、産業火災などの日常生活を脅かす災害の防止を目的に、総理府が1960年(昭和35年)に制定しました。

 1日(金)

・名神高速道路全通記念日──1965年(昭和40年)に愛知県小牧市から兵庫県西宮市までの名神高速道路が日本で初めての本格的な高速道路として全線開通したことによります。東名高速道路は1969年5月26日に全通。

 1日(金)~

 7日(木)

全国安全週間──平成28年度 スローガン

 「見えますか? あなたのまわりの 見えない危険

  みんなで見つける 安全管理

 詳しくは厚生労働省中央労働災害防止協会サイトを参照して下さい。

 1日(金)~

 14日木)

・平成28年度 Gマーク(安全性評価認定)申請受付──全日本トラック協会のwebサイトから申請書類等をダウンロードできます。

 1日(金)~

 31日(

・平成28年度陸上貨物運送事業「夏期労働災害防止強調運動」

 ──全国安全週間と相まって、7月1日から31日にかけての1か月間は

 陸上貨物運送事業労働災害防止協会も独自の安全運動を実施します。

 詳しくは、同協会のWEBサイトを参照してください。

 1日(金)~

 31日(

・車内事故防止キャンペーン(バス)──走行中のバス車内での転倒事故等を防止するため、全国で、都道府県バス協会やバス事業者が車内事故防止のキャンペーンを展開します。

 1日(金)~

 31日(

・熱中症予防強化月間──熱中症の予防対応策について正しい知識を普及するため、環境省が2013年度から実施しています。

 1日(金)~

 9月30日

平成28年度 港湾労働安全強調期間──港湾貨物運送事業労働災害防止協会による全国安全週間に呼応した活動。港湾内の事故防止活動を推進。

 ●28年度のスローガン──

 「見えますか?あなたのまわりの見えない危険

  みんなで見つける安全管理」

  詳しくはこちらを参照してください。
 7日(木)

・小暑、七夕、川の日

 8日(金)

 9月10日

・交通安全ファミリー作文コンクールの募集 

(募集締切は9月10日──詳しくは、全日本交通安全協会のWEBサイトを参照)

 12日(火)

・7月の製品安全点検日

──経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として、製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っています。

 16日(土)

・国土交通Day──国土交通行政の意義や重要性を国民にアピールする日。国土交通省が2001年に制定しました。

 16日(土)

・勤労青少年の日(7月第3土曜日)

 18日(

・海の日

 ~19日(火)

 

・「ダメ。ゼッタイ。」普及運動──麻薬・大麻・危険ドラッグなどの薬物乱用を防止するため、毎年6月20日からの1か月間、啓発運動が実施されています(厚生労働省、都道府県などが実施)。

 22日(水) 

・大暑

 30日(土) 

・東北自動車道全通記念日──1986年(昭和61年)のこの日に浦和-青森

 間 674kmの東北自動車道が全線開通しました。

   
 9月30日 ・夏の省エネキャンペーン──エネルギー消費の大きなピークの季節を迎え、省エネキャンペーンが行われます。
 7月下旬

・平成28年6月末までの交通事故発生状況警察庁

 7月下旬 平成28年5月分 トラック輸送情報国土交通省

 

 ◆7月の日没時間国立天文台天文情報センターによる)

 1日(金 福岡 19:33 大阪 19:15

東京 19:01

 15日(金

福岡 19:29 大阪 19:12 東京 18:57
 30日(土 福岡 19:19

大阪 19:15

東京 18:46

「早めにつけよう おもいやりライト
 運動に取り組みましょう!

 運転者の皆さん!7月はすでにだんだん日没時刻が早くなっています。夏の日は長いと思っても、もう夏至の頃とは違いますので、早めの点灯を忘れないようにしてください。少しでも暗いなと感じたらためらわずに点灯するとともに、歩行者、自転車の見落としなどを警戒してください。

 「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯を ドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。横浜の運動事務局の呼びかけに呼応して全国で点灯活動を展開する動きが出ています。


 詳しくはおもいやりライトのサイトを参照してください

 

 また、JAF(日本自動車連盟)も早期ヘッドライト点灯キャンペーンを展開し、JAFインターネットWEBサイトでライト点灯に関して様々な情報提供をしています。

 ※詳しくは JAF Safety Light のサイトを参照してください

 
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