■軽井沢スキーバス事故対策の一環
国土交通省では、軽井沢町で発生したスキーバスの転落事故を受けて、貸切バスを中心とした事故防止対策を進めてきました。
その一環として、このたび旅客自動車運送事業運輸規則の一部を改正するなどして、今年11月から以下のような施策が実行されます。
また、第192臨時国会では道路運送法の改正案が審議され、可決しました。近々施行されます。
運行管理者資格者証の返納命令を受けた管理者は、その後一定の期間(現行は2年間)、運行管理者の補助者としても運行管理業務に従事することができなくなります。
(※なお、2年間の欠格期間も5年に延長される方向で法改正の予定です)
バス・タクシー等の旅客自動車運送事業者が作成する「乗務員台帳」には、運転者の運転経歴を記載しなければならなくなります。
1 貸切バス事業者が旅行業者と取り交わす運送申込書/引受書の記載事項の中に、運賃・料金の上限額・下限額が追加されます。
2 貸切バス事業者は、申込者に対して支払う手数料等の額を記載した書類を保管しなければならないことになります。
──貸切バス・旅行業界には、実質的な運賃の下限割れの実態があり、手数料なども加味して不当に低い運賃が横行し、事故多発の一因と言われています。
今回の制度改正は、取引環境の適正化を図ることが目的とされています。
■規則・告示改正日 平成28年8月31日
■施行日 平成28年11月1日
貸切バス事業者が、増車等の手続き(事業計画の変更)を行う際には、以下の添付書類の提出が、運輸支局等から求められます。
1 営業所ごとに配置するバスの台数により義務づけられている常勤の有資格の運行管理者の員数を確保できていることを示す書類。=運行管理体制図
2 増車予定のバスが中古車である場合は、そのバスの定期点検整備記録簿の写し。
■通達改正日 平成28年9月16日
■施行日 平成28年11月1日
1 貸切バス事業者は新たに雇い入れる「すべての運転者」に対して、適性診断(初任)を受診させることが義務づけられます。
2 また新たに雇い入れた運転者に対して、当該運転者の運転特性を踏まえた指導・監督を実施することが義務づけられます。
──改正前は、過去3年以内に他のバス会社などで勤務して適性診断を受けていた者や過去3年間に他の会社でバス運転者として選任されていた者に対しては、適性診断や初任運転者指導の実施義務が免除されていました。
今後は貸切バスに限って、全ての新採用運転者に義務づけられます。
■告示改正日 平成28年8月31日
■施行日 平成28年12月1日
1 貸切バス事業の新規許可申請時には、使用予定のバス全車両に対して、点検・整備実施計画があることが審査項目に追加されます。
2 新規許可の条件として、全ての営業所にインターネットに接続されたパソコンを設置することが追加されます。
── 1は、中古バス車両を利用せざるを得ない現状を鑑み、安全確保のため点検・整備の徹底をはかるもので、点検整備費の見積書などが確認されます《既存業者の増車時における点検整備簿提出は11.1に施行ずみ》。
── 2は、貸切バスの制度改正等に関する情報を受け取るための整備が第一の目的とされています。なお、国土交通省は貸切バスにドライブレコーダーの装着を義務づけますが、未だにパソコンを持たない事業者がいて、ドラレコ・デジタコの活用もままならない現状から、既存事業者に対してもインターネット利用可能なPC環境の導入を指導しています。そうした実情も踏まえて新規参入業者にインターネット環境の整備を義務づけるものです。
■通達改正日 平成28年11月1日
■施行日 平成28年12月1日
6月にまとめられた貸切バスの総合安全対策に沿って、旅客自動車運送事業運輸規則、指導監督の指針などが改正されました。
■ 貸切バスの運転者が直近1年間に乗務していた車種区分より大型のバスに乗務させる場合については、初任運転者と同様の特別な指導・監督の実施を義務づける(準初任運転者)。
■ 貸切バスの初任運転者・準初任運転者・事故惹起者への指導及び監督は、20時間の実技訓練と実技を除く6時間の指導(平成29年12月以降は10時間)を義務づける。
■ バス運転者に対する「指導・監督の指針」に『安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車(貸切バス)の適切な運転方法』等を追加する。
■ 貸切バスの運行管理者は営業所ごとの必要選任数を20 両ごとに1名(100 両以上分は30 両ごとに1名)とする。また、最低2名以上選任することとする。
■ 貸切バスの運行管理者資格要件を試験合格者のみに限定する。
■ 夜間・長距離を運行する貸切バス運転者について、道路及び運行状況、疲労の有無等を確認する乗務途中点呼の実施を義務づける。
■ バスの補助座席もシートベルト装着を義務づける
■ 貸切バス事業者に、一定の性能を満たすドライブレコーダーの装着と映像・記録資料を活用した指導・監督を義務づける。
──等
■省令改正日 平成28年11月15日 告示改正日 平成28年11月17日
■施行日 平成28年12月1日
(運行管理者必要選任数変更、ドライブレコーダーは経過措置があり平成29年12月1日施行)
(補助席シートベルトは保安基準の改正で即日施行ですが、実際の適用は平成29年以降)
貸切バス事業者に対する監査基本方針と行政処分基準に関係する通達が改正され、大幅に強化されます(通達改正日11月18日)。
1 貸切バスの街頭監査で、法令違反が発見された場合、改善されるまでは運行ができなくなります。その場で輸送の安全確保命令、車両の使用停止命令が発動されるようになります。
2 街頭監査で法令違反が認められた場合は、30日以内に是正状況確認のため「指摘事項確認監査」が実施されます。
3 一般監査で以下の重大違反事実が発覚した場合、即30日間の事業停止が科されるとともに、是正されない場合は事業許可が取り消されます。
●運行管理者が全く未選任
●整備管理者が全く未選任かつ定期点検整備を未実施
●全ての運転者が健康診断を受診していない
●運転者への指導・監督および特別な指導を全く実施していない
4 一般監査で上記の重大違反以外の違反事項を認めた場合、30日以内に是正状況確認のため、
「指摘事項確認監査」が実施されます。
5 監査で違反事項があり、指摘事項確認監査でも是正されていない場合、輸送の安全確保命令が
発動されます。命令後の監査で30日以内に改善した場合は3日間の事業停止処分が科されます。
もし改善が確認できない場合は事業許可が取り消されます。
6 行政処分により使用を停止する車両割合を引き上げ、営業所の保有車両数の8割とされます。
(例)保有車両数が5両であり、処分100日車の場合 → 4両を 25 日間停止
7 その他、処分量定の引き上げなど
(例)健康診断の未受診 (現行)未受診者全運転者の半数以上 10日車
(改正)未受診者3名以上 40日車
8 運行管理者の資格者証返納命令範囲拡大
(例)上記の法令違反を是正しない事業者に対する許可取消処分の拡大に伴い、取り消された
事業者に勤務する運行管理者全員にも資格者証の返納命令要件を追加──など
■通達発出時期 平成28年11月18日
■通達施行日 平成28年12月1日
上記の改正とは別に、貸切バス事業者の安全確保のために、以下の5ポイントを盛り込んだ道路運送法改正案が第192回臨時国会で審議され、平成28年12月2日に可決し成立しました。
1 貸切バスの許可更新制の導入
2 監査後廃業した場合等も事業許可の欠格事由に──処分逃れを防ぎ再取得を厳格化
3 事業許可取消/運行管理者証の返納/
──現行2年を5年程度に
4 悪質な人身事故の法人罰則を重科
──法人罰を100万円以下 から1億円以下
──経営者・管理者の懲役刑新設
5 民間の適正化事業指定期間による観光バス事業者への監査・指導の実施
■改正法公布日 平成28年12月9日
■施行予定時期 1は平成29年4月1日施行/2から5は、平成28年12月20日施行
詳しくは、 → こちらを参照
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また、近年改正された道路運送法や旅客自動車運送事業運輸規則等の改正ポイントもわかりやすく解説しています。
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