平成28年12月9日に公布された道路運送法の一部改正のうち、貸切バス事業許可の更新制が、平成29年4月1日より施行されます。
更新手続きについての必要な事項を定める省令・通達なども2月28日に改正され、国土交通省のホームページで公表されました。
平成28年1月15日に発生した軽井沢スキーバス事故を踏まえ、貸切バス会社が実際に安全運行できるのかどうかを厳しくチェックする仕組みを構築するためです。
( → 詳しくは国土交通省のWEBサイトを参照)
貸切バスの事業許可は、これまで一度取得すれば無期限有効でしたが、法改正により原則として5年に1回、更新時に今後の収益見通しや安全対策投資計画などがチェックされます。
バス事業者が安全性を確保できないと判断された場合は事業許可が更新されません。
更新制度は既存のバス事業者も対象となります。
ただし、既存事業者の初回更新日は、従来から事業許可についての更新制が導入されていたと仮定し、事業許可を受けた年の西暦下一桁の数字に応じた年の事業許可日とされます。
例えば、2001年4月6日に事業許可を受けた事業者は、
→ 2021年4月6日までは事業許可が有効 となります。
貸切バス事業許可について新規また更新の申請をするときに、将来的な安全投資が計画的に行われる見通しが立っているか、財務面から審査されます。
そのため、新たに申請書の添付書類として「安全投資計画」と「事業収支見積書」を提出する義務が発生します。
※道路運送法施行規則 第6条の改正
+
事業収支見積書には……
■法令上に求められる人件費が計上されていること。
■保有車両及び新規取得車両については、
以下の額が計上されていること。
・車両減価償却費:申請事業者の車両減価償却年数に
より算出した額
・車両修繕費:車齢、走行距離等に応じた予防整備費
(別途ガイドライン作成予定)
■その他、以下を実施するための所要の費用を計上
・ドライブレコーダー導入計画とその費用
・適性診断の受診計画 〃
・健康診断の受診計画 〃
・社会保険への加入計画 〃
●事業収支見積書などに審査により
「安全確保についての所要の安全投資などの要件を満たしていない」と判断された場合
●更新時の審査では
「申請直近1事業年度において債務超過であり、かつ、申請直近3事業年度の収支が連続で赤字である場合」
●新規申請時の審査では
「申請直近1事業年度において債務超過である場合」
事業許可の
更新・認可を行わない
このほか、道路運送法改正のポイントは大きく分けて以下の4点です。
1. の事業許可更新制に関しては上記、2.~4.はスキーシーズンに必要な措置を講ずるため、平成28年12月20日にすでに施行されています。
3.は監査機能を補完するため、民間の指定適正化機関(※)による巡回指導を行い、バス事業者からそのための負担金を徴収する仕組みとして創設されました。
4.は、抑止効果を高めるため、輸送の安全確保命令に従わないバス事業者・運行管理者の法定刑を強化し、罰金の増額だけでなく懲役刑を新設するとともに、事業者の法人重科を創設し罰金額を現行の100万円から、100倍の1億円にアップされました。
同法改正に伴い、旅客自動車運送事業運輸規則や告示・関連通達なども大幅に改正され、貸切バスの安全対策が強化されています。
( → 詳しくはこちらを参照)。
※今回の法改正によってできる「一般貸切旅客自動車運送適正化機関」については、現在、地方運輸局の管轄区域ごとに地方バス協会などが設立する新法人、あるいは、地方ブロックによっては地方バス協会自身が指定を受ける方向で準備が進められています。
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