トラック、バス・タクシーなど職業運転者の健康起因事故防止を図るため、道路運送法および貨物自動車運送事業法の一部が改正されました。
さる平成28年12月9日に国会で成立、同16日に改正法が公布され、平成29年1月16日に施行されます。
道路運送法および貨物自動車運送事業法に
「運転者が疾病により安全な運転ができない恐れがある状態で事業用自動車を運転することを防止するため、必要な医学的所見に基づく措置を講じなければならない」
という文言が新たに追加されました。
事業用自動車の運転者の健康起因による事故は心臓疾患、脳血管疾患が圧倒的に多く、運転者の高齢化も進んでいるので、これらを防ぐためには、通常の定期健康診断だけでは不十分ということから、法改正を図ったものです。
ただし、法律の文面では「必要な医学的所見に基づく措置」とあるだけで具体的に何らかの検査の受診を直ちに義務づける内容とはなっていません。
現在、事業用自動車の事業者に対して脳MRI検診や心臓ドック、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査等を運転者に受診させることが推奨されています。
一方で、定期健康診断ですら未だに実施していない事業者もあり、点呼を徹底して現場でいかに健康問題を把握するかが喫緊の課題であるため、この状況で新たな検査を即座に義務づけるのは現実的ではありません。
衆議院国土交通委員会では、これらの法改正に伴い、脳ドック(MRI)や心臓ドック(心エコー、MRI、CT)などのスクリーニング検査について、検査の結果に応じて事業者が取るべき対応を定めたガイドラインを作成するよう政府に求める決議も可決されています。
ガイドライン活用を促進することによって、事業者による自主的なスクリーニング検査の導入拡大に取り組むことが期待されています。
ガイドラインなどの効果や事業者における運転者の健康指導の経過をみて、今後政令等が改正されることになれば、具体的な検査の受診を事業用自動車運転者に義務づける可能性もあると見られています。
■改正法公布日 平成28年12月16日
■施行日 公布日から1月後 平成29年1月16日
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