平成28年12月2日、貸切バスなどバス事業の安全対策を強化した道路運送法一部改正案が国会で可決して成立、12月9日に公布されました。一部を除き平成28年12月20日に施行されます。
本年1月15日に発生した軽井沢スキーバス事故を踏まえ、貸切バス会社が実際に安全運行できるのかどうかを厳しくチェックする仕組みを構築するとともに、冬の観光シーズンに間に合わせるため国土交通省は法改正後すみやかに施行したい意向です。
改正のポイントは大きく分けて以下の4点です。
1. の事業許可更新制に関しては平成29年4月1日の施行、2.~4.は今冬のスキーシーズンに必要な措置を講ずるため、平成28年12月20日に施行されます。
( → 詳しくは国土交通省のWEBサイトを参照)
貸切バスの事業許可は、これまで一度取得すれば無期限有効でしたが、法改正により原則として5年に1回、更新時に今後の収益見通しや安全対策投資計画などがチェックされます。
バス事業者が安全性を確保できないと判断された場合は事業許可が更新されません。
また、事業許可取消し後に再度許可を受けるまでの欠格期間が現行の2年から5年に延び、安易な再参入がブロックされます。
許可取消事業者のグループ会社や監査後にすぐ廃業し処分を逃れた事業者の場合も参入を拒みます。
運行管理者証の返納命令を受けた場合も、欠格期間が2年から5年に延長されます。
これらの措置により、軽井沢スキーバス事故のような大きな人身事故を防ぐとともに、悪質な事業者をバス業界から排除することに目的があります。
さらに、監査機能を補完するため、民間の指定適正化機関(※)による巡回指導を行い、バス事業者からは、そのための負担金を徴収する仕組みも創設されます。
このほか、抑止効果を高めるため、輸送の安全確保命令に従わないバス事業の経営者・運行管理者の法定刑を強化し、罰金の増額だけでなく懲役刑を新設するとともに、事業会社の法人重科を創設し罰金額は改正前の100万円から、100倍の1億円にアップされます。
同法改正に伴い、旅客自動車運送事業運輸規則や告示・関連通達なども大幅に改正され、貸切バスの安全対策が強化されています。
( → 詳しくはこちらを参照)。
※今回の法改正によってできる「一般貸切旅客自動車運送適正化機関」については、現在、地方運輸局の管轄区域ごとに地方バス協会などが設立する新法人、あるいは、地方ブロックによっては地方バス協会自身が指定を受ける方向で検討が進められています。
【参考】
道路運送法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(参議院国土交通委員会)
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。
1 貸切バス業界の健全な発展を図り、利用者の安全・安心を確保するため、その規制の在り方について不断に検証を行うとともに、貸切バス運転者の労働条件の改善、旅行業者やランドオペレーターなど発注者側が優越的地位を濫用して道路運送法の目的を形骸化させるような行為を防止すること等について、関係省庁間の連携や業界団体との協議はもとより、必要に応じて関係法令を見直すなど、適時適切な対応を講ずること。
2 優良な貸切バス事業者を奨励・育成する観点から、貸切バスの安全対策に係る補助や税制等の支援策の一層の拡充及び周知・活用の促進に努めること。また、本法が定める貸切バスの安全対策を確実に実行するため、国土交通省の監査体制を拡充・強化し、必要かつ十分な人員及びその専門性の確保を図るとともに、貸切バス事業の許可の新規・更新申請時の審査を厳格に行い、不適格な事業者が市場から確実に排除されるよう、施策の実効性を担保すること。
3 民間指定機関による貸切バス事業者への巡回指導等の適正化事業の実施・運用に当たっては、国の監査体制を補完する上で真に実効性のある取組となるよう適切な支援や指導監督を行うこと。また、本法施行後、民間指定機関が速やかに全国で設立されることにより、全ての貸切バス事業者が巡回指導の対象となるよう努めること。さらに、民間指定機関が事業者から徴収する負担金が過大なものとならないよう、認可に当たって十分配慮すること。
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