貸切バス事業者に対する監査は、国土交通省自動車局長の通達「一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について」(※)に基づいて行われています。
※国自安第155号
(平成28年11月18日公布/ 平成29年6月9日改正)
この通達に沿って貸切バス事業者には特別監査、一般監査、街頭監査、指摘事項確認監査などが行われます。
【監査方針等が強化】
「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」の総合的な対策(平成28年6月3日)を踏まえ、国土交通省は平成28年11月18日から、旅客自動車運送事業の監査について貸切バスを特別に重視し、一般の自動車運送事業者とは別個に強化した監査方針を打ち出しました。
さらに平成29年6月に通達を改正し、悪質な事業者を監視するため重大事故や重大な違反をした事業者に対して、年1回の重点的な監査を行う方針を決めました。
なお、運輸局監査官は悪質事業者への監査に集中するため、違反前歴などのない貸切バス事業者に対しては、適正化事業実施機関の巡回指導が中心となります。
1. | 基本方針 |
1 |
貸切バス運送事業者に対する監査は、輸送の安全の確保が最も重要であるという基本的認識の下に行う。とくに ●運行管理者又は整備管理者を選任していない ●運転者に対して全く点呼を実施していない ●営業所に配置している全車の定期点検整備を実施していない 等 輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重要な法令違反の疑いがある事業者を優先的に対象とする。 また、過去の監査、行政処分等(営業区域の廃止に係る事業計画の変更命令、事業の停止処分、自動車等の使用停止処分、警告、勧告をいう。以下同じ )の状況、利用者等からの苦情等を踏まえ、事故の未然防止及び 法令遵守の徹底を図ることを目的として、効果的に実施するよう努める。
|
2 |
監査は、旅客自動車運送適正化事業実施機関(適正化機関)との連携により、監査及び指導の充実及び強化を図る。
|
3 |
監査のほか、呼出指導の実施を通じて、法令遵守意識の醸成を図るよう努める。 |
2. | 監査等の種類 |
貸切バス事業者に対する監査には、次の4種類があります。 |
(1) 特別監査 |
引き起こした事故又は疑いのある法令違反の重大性にかん がみ、「厳格な対応が必要」と認められる事業者等に対し て、全般的な法令遵守状況を確認する監査。 |
(2) 一般監査 |
特別監査に該当しないもので、監査を実施する端緒に応じ た重点事項を定めて法令遵守状況を確認する監査。 ただし、全般的な法令遵守状況を確認する必要があると 認めた場合は、特別監査に切り替える。 |
(3) 街頭監査 |
事業用自動車の運行実態等を確認するため、街頭において 事業者を特定せずに実施する監査。 (貸切バス発着場などに出向いて監査を実施) |
(4) 指摘事項 確認監査 |
上記の監査で輸送の安全に関わる緊急を要する重大な法令 違反など以外の違反の恐れがあると認められる事項に対し て、 30日以内に是正状況を確認するために行う監査。 |
3. | 監査等の方法 |
監査の実施に関しては大別して次の3つの方法があります。 |
■ 臨店監査 |
監査を実施する際に、事業者の営業所その他の事業場又は バスの所在する場所に立ち入って実施する。 |
■ 呼出監査 |
監査を実施する際に、事業者を呼び出して法令遵守状況を 確認する。 |
■ 街頭監査 |
貸切バスの運行実態を確認するために、事業者を特定しな いで街頭で実施する。 |
4. | 監査の対象となる事業者(主なもの) |
■ | 適正化事業実施機関や利用者等からの情報、街頭監査やバスへの添乗調査で、法令違反の疑いがあった事業者 |
■ |
貸切バスの運転者が第1当事者となる死亡事故を起こした事業者 |
■ |
バス運転者が悪質な違反──酒酔い・酒気帯び運転、過労運転、薬物等使用運転、無資格運転、無車検運行、無保険運行、ひき逃げ違反──などを引き起こした事業者 |
■ |
適正化事業実施機関が行う巡回指導を拒否した事業者 |
■ |
都道府県警察、労働局、道路管理者、観光庁等からの通知で法令違反の疑いのある事業者 |
■ |
社会保険、労働保険未加入の疑いがある事業者 |
■ |
最低賃金法に違反している事業者 |
■ |
自動車事故報告規則に定める事故で事故原因などが同じ事故を3年間に3回以上引き起こしている事業者 |
■ |
事故報告書や事業報告書を期限までに提出しなかったり、虚偽の記載をした事業者 |
■ | バスの車両火災、ホイール・ボルト折損による車輪脱落事故、整備不良による死傷事故を引き起こした事業者 |
■ | 新規許可又は事業の譲受の認可を受けた事業者(既存貸切事業者を除く) |
■ | 事業計画の変更により、事業規模の拡大を行った事業者。 |
■ |
過去に重大な事故を引き起こしたことや、重大な事故に結びつく法令違反が疑われること等により、継続的な監視が必要な事業者 → 原則として年度毎に1回以上の監査を実施する(平成29年6月新設) |
■ |
安全管理規程や運行管理者の業務に関連して、輸送の安全確保を命じられた事業者 |
以下略 |
適正化実施機関とは
貸切バスに対する「旅客自動車運送適正化事業実施機関」は、道路運送法の改正により制度が発足しました(平成28年12月20日施行)。ブロックごとにバス協会などが母体となって機関が設立され、各運輸局の指定を受けて平成29年度より活動が始まりました。
平成29年8月から、事業者への巡回指導業務などが実施されています。
こんなときに特別監査が
2016年1月15日に発生した軽井沢スキーバス転落事故、2013年2月17日に大分県九重町で発生した観光バスの転落事故、2012年4月29日に群馬県の関越自動車で起こった高速バス居眠事故など、社会的影響の大きい事故やマスコミが大きく報道した事故を起こした場合は特別監査が行われます。
無通告で事業所に立ち入る!
原則として、臨店監査は無通告でバス会社の本社や営業所に監査員が立ち入って行われ、法令違反などがないか徹底的に調査されます。
過去の実態も徹底調査!
事故に関連した運行の記録だけでなく、賃金台帳、タイムカード、過去の点呼記録や運転者への指導・監督の記録、社会保険加入状況、乗務時間、運送引受書類なども徹底的に調べられますので、運行の実態は隠しようがありません。
呼出指導
「呼出指導」は、監査を実施するまでには至らない事業者に対して、地方運輸支局等に出頭するよう呼び出し、事業者に自主点検表を提出させて行われます。集団指導の形で行われることもあります。
指導の対象となったにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じない事業者に対しては、監査が実施されます。
※「呼出監査」は地方運輸支局に出頭してタコグラフや点呼記録、運転日報
などを提示する形で行われるのが通常の形です。
※国土交通省自動車局長通達/国自安第155号「一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について」
(平成29年6月9日改正)より抜粋しました。