無免許運転への罰則が道路交通法の改正で厳しくなり、新しく成立した交通事故致死傷に対する刑罰でも、無免許運転事故に対して新たに厳しい罰則が科されることになります。
事業所で無免許運転の下命・容認などの事実があれば、厳しく処罰されますので、免許条件に対する管理・指導を徹底する必要があります。
また、配車係やドライバーの勘違い(免許条件の錯誤)によって、中型自動車の無免許運転が行われる例も見受けられますので、その点も注意しておきましょう。
【物損事故で中型自動車の無免許運転が発覚】
●車両総重量5トン以上の車の運転を普通免許の
運転者に命じる
平成25年7月12日、中型自動車免許を持たない運転者に中型トラックを運転させていた容疑などで、警視庁は東京都葛飾区にあるY運送会社の支店長(42)と副支店長(43)、運転者(25)を書類送検しました。
運転者が物損事故を起こしたため、無免許運転が発覚したものですが、運送会社の支店長らは、「運送ルートが簡便だから」などと言って、2011年7月以降、車両総重量が5トンを超える中型自動車を運転するのに必要な中型免許を持たないことを知りながら、この運転者に運転・配送業務を命じていました。
●車両総重量と最大積載量の両面で判断する
運転免許の錯誤は中型免許に多いので、中型自動車の範囲をもう一度再確認しておきましょう。
中型自動車は、最大積載量が3トン以上6.5トン未満、車両総重量が5トン以上11トン未満、乗車人員が11人以上30人未満の車両をさします。
いずれかに当てはまれば中型自動車ということですから、最大積載量3トン未満の車でも車両総重量が5トン以上であれば中型免許がないと運転できません。8トン限定中型免許(※下記参照)なら運転可能ですが、平成19年6月以降に普通免許を取得したドライバーが運転すれば、無免許運転となります。
例)・保冷車や小型クレーンが装着された車両など、積載量は3トン未満
だが総重量は5トンを超える車 → 中型免許が必要!
・社内で2トン車と呼んでいるが、架装のため総重量は5トンを超える車
→ 中型免許が必要!
●最大積載量のステッカーによる勘違いもある
トラック後部には「最大積載量2850kg」などのステッカーが張ってあり、過積載防止に便利ですが、このステッカーだけ見てドライバーや配車係が勘違いしないように、車検書を確認して中型自動車である場合は、念のため「中型自動車」といったステッカーも張っておきましょう!
●8トン限定中型免許と現在の普通免許を混同しない
また、平成19年6月以前(道路交通法改正前)にすでに普通免許を取得していたドライバーは8トン限定中型免許といって車両総重量8トン未満(最大積載量5トン未満)の中型自動車までは運転できます。
平成19年6月2日以降取得の普通免許にはこの特例はないので、同じ普通免許といっても免許条件が違います。
●免許の種類(資格)と乗務できる車両の
適合条件を再チェック
この事実を忘れて、例えばドライバーAさんが普免で乗務していた車だから、ドライバーBさんも普免で運転できると頭から思い込まないようにしましょう。
すべての車の車検証をチェックし、免許取得日から限定免許の有無も調べて、運転者台帳などに各運転者が運転できる車両の区別を明記しましょう。
●「空荷であれば普免で中型自動車を運転できる」
というのは間違いです
これは、あるトラック協会の事業者指導担当者の方から聞いた話です。
トラック事業者やドライバーの中には、中型自動車であっても、「空荷の状態なら積載量は0トンなので(総重量も、実際には5トンにまで達していないので)普通免許で運転できる」と誤解している人がいるそうです。
このため、荷物を運搬するときには中型免許を持ったドライバーに運転させていても、空荷で回送運転などをするときには、普通免許のドライバーに乗務指示をしているという例がありました。
もちろんこの場合も、無免許運転になります。
こうした免許条件の錯誤では、冒頭の事例と違って即座に「無免許運転の下命・容認」といった判断をされることはないでしょうし、ドライバーが即免許取消処分を受けるとは言えませんが、やはりコンプライアンス上はあってはならないことですので、十分注意してください。
※なお、8トン限定中型免許を持っている運転者が車両総重量8トン以上11トン未満の中型自動車をうっかり運転した場合は、中型免許条件の違反ですので、無免許運転でなく「免許条件違反」に該当するという法的解釈が成り立ちます。
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