5月は研修を終えた新入社員がそろそろ現場に配属される時期です。
運転時の事故防止について十分指導されていることと思いますが、意外に見落としがちなのは、構内での安全行動です。
工場や倉庫、駐車場構内などでバックする車両や
フォークリフトなどが資材に衝突したり、歩行者と人身事故を起こすケースがときどき報告されています。
運転する側としての安全確認の重要性とともに、歩行者の立場からも警戒を促しておきましょう。
【こんな事故が発生しています】
2016年4月19日午後5時10分ごろ、埼玉県加須市の梱包資材製造工場で、53歳の男性作業者がバックしてきたフォークリフトにひかれて死亡しました。
男性は、トラック荷台に古紙を積み込む作業をしていたところ、バックしたフォークリフトと荷台の間に挟まれました。
フォークリフトを運転していた同僚の男性(27歳)は、雨が降ってきたのでフォークリフトを移動させようとして、後方をよく確認しないままバックし、作業者の悲鳴を聞いて初めて事故に気づきました。
2016年8月10日正午前ごろ、東京・府中市の東京農工大学キャンパス内で自転車に乗っていた女子学生(19歳)がバックしてきたトラックにひかれて死亡しました。
トラックはプロパンガスのボンベを運搬中でしたが、構内で方向転換をしようとバックしたとき、後方の安全確認を十分にしないまま車を動かしたため、やってきた自転車に気づかずに衝突したものです。
2016年12月6日午後1時前ごろ、埼玉県川口市の工場解体現場で作業者の男性(48歳)が敷地内の地面で昼寝休憩をしていたところ、バックで現場に入場してきたトラックに轢かれて死亡しました。
トラック運転者はまさか地面に人が寝ているとは思わずに、安易にバックして作業者を轢いてしまいました。
【事故の教訓】
このような構内事故の事例で共通しているのは、公道上と違ってやってくる車両やバイクがいないと思いこんでいるため、油断して安易にバックをしてしまうということです。
もちろん、構内でもまれに車がやってくることはありますが、運転者は車をやり過ごしてから「もう安心」と考え安易にバックします。
「バック時には安全確認を徹底する」というルールを定めていても、油断しやすい状況では安全確認を省いてしまうのが人間の心理です。
安全確認を習慣とするには、事故事例や危険予測訓練などを通じてどんなとき油断して見落としをするのかを自覚させて繰り返し指導し、常にどんな場合でも実践できるように行動をチェックしていくしかありません。
バック事故防止の指導は粘り強く継続して行いましょう。
トラックやフォークリフトなどの真後ろは運転席からは確認できない死角がたくさんあります。
僅かな時間を惜しまずに、降りて自分の目で見ることで状況が正しく把握できます。
とくに、降りるのが面倒に感じるときこそ要注意であることを強調しましょう。
降りて確認をすれば、地面で昼寝をしている人がいても発見できるのです。
バック事故を起こした運転者の中には「一応ミラーやモニターを見た」という人が多いのですが、ミラーやバックモニターではよく見えない物があることを理解させましょう。
とくに大型車の場合は、後方に作業者などがいてもミラーでは正確な距離がつかめません。また、暗い倉庫などの中は、モニターでも十分に安全を確認できません。
フォークリフトやトラックの中にはバック時に後退音(バックブザー)の鳴る車がありますが、「相手が音で気づいてくれる」と期待してバックするのは禁物です。
工場や倉庫などでは、いろいろな音が鳴っているためバックブザーを聞き落とすことが多いと言われています。
また、作業者の中には警報ブザーの音に慣れてしまうと、まったく気にしない人がいます。
さらに、耳の不自由な人が現場にいる可能性もありますので、ブザー音を過信するのは危険です。
車を止めた時点で運転者が後方に何もなかったことを見ていたため、運転席に戻って何もないと思いこんでバックし、僅かな時間の間に車の後ろに置かれた障害物と衝突するというケースもあります。
いくら自分の目で確認したとしても、時間の経過で車の後方の状況が変わる危険を予測しておかないと事故は防げない点を指導しておきましょう。
あるトラック運送会社では、新入社員研修で以下のような指導をしています。
※バック事故防止指導については、安全運転管理支援チームの WEBサイトも参照してください。
小冊子「構内事故の危険に気づこう!」は、構内事故が起こりやすい状況を示した6場面のイラストを見て、設問に回答してもらう参加型教材です。
ドライバー自身が日頃の運転習慣やヒヤリ・ハット体験などを思い起こすことにより、構内事故を起こす危険に気づいて頂くことができます。
解説頁には、実際に発生した事故事例をイラスト入りで紹介しています。事故を防ぐポイントを具体的に整理していますので、構内事故防止教育に最適の教材となっています。