トラック事業者の違反行為の早期改善に向けて、荷主への働きかけを強化
荷主勧告とは、トラック事業者の過積載や過労運転など違反行為があった場合で、その原因が主として荷主の行為にあると認められるとき、国土交通大臣が荷主に対し違反行為の再発防止のための措置を執りなさいと勧告するものです。
荷主勧告を行った場合には荷主名が公表されます。
(※貨物自動車運送事業法第64条)
しかし、実際には荷主関与の判断基準が不明確なため、荷主勧告の発動実績はありませんでした(警告書のみ)。
また、荷主勧告には至らない警告や協力要請といった措置についても、トラック事業者への行政処分が前提となっているため、荷主に対する早期の働きかけができないなど、制度が十分に機能していません。
こうした状況を踏まえ、国土交通省は荷主勧告を行うための荷主関与の判断基準を明確化するとともに、荷主関与の蓋然性が高いと考えられる違反行為については、行政処分の有無にかかわらず早期に荷主に対し協力要請を行うなど制度の見直しを行い平成29年7月1日から運用を開始しました。
トラック事業者に対して、荷待ち時間の記録を義務付けたのもこの一環です。
従来のような、「行政処分を前提とする運用」を改め、都道府県の運輸支局が関係行政機関から長時間の連続運転や1日の拘束時間が長い等の違反情報を得た場合には、関係する荷主を特定し、早期に協力要請が行われます。
【勧告】
トラック事業者に対し行政処分を行うものについては、地方運輸局が荷主に関する調査を実施します。
その場合、例えば以下のような荷主の主体的な関与の具体例を示して、荷主勧告の判断基準が明確化されます。
○恒常的な荷待ち時間の発生
過労運転防止措置義務違反の原因が、荷主管理の荷捌き場での恒常的な荷待ち時間の発生であり、かつ、荷主に対し改善を要請しているにもかわらず荷主が応じず改善がなされていない場合
○過積載運行の強要
過積載運行の原因が、積込み直前に荷主から貨物量を増やすよう急に指示され、過積載となるこを認識しつ荷主から取引解消を示唆されるなど断り切れなかったことによるものである場合
○3年以内に警告を受けている
過去3年以内に同じ法令違反行為で警告を受けており、かつ、再発防止への取り組みが不十分である場合にも、勧告を行う
【警告】
荷主に関する調査の結果、勧告を行うまでの明らかな関与が認められなかった荷主についても、著しい過労運転防止措置義務違反の場合には、その違反件数の半数以上に関わる荷主に対して、地方運輸局から「警告」がわれます。
↓ 荷主勧告制度の改善を伝える国土交通省の資料より(クリックすると拡大されます)
荷主勧告制度の運用の改善
荷主勧告が想定される事例
「乗務等の記録」に荷待ち時間等を追加
(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第8条関係)
トラックドライバーが車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合、ドライバー毎に、
等について記録し1年間保存しなければならない、
とされています。
荷待ち時間記録のポイント
・荷待ち時間が30分以上が対象、30分未満の場合は省略が可能です
・荷主の指示による時間だけが対象で、事業者の都合によって生じた待機時間は含まれません
全日本トラック協会は国土交通省と連携して「荷待ち時間等の記録義務付け」に関するリーフレットを作成しました。
乗務記録への記載方法等の見本も掲載されていて大変わかりやすい内容です。
→ 詳しくは 全ト協のWEBサイトを参照してください。