運転中に携帯電話やスマートフォンを使用しての事故が多発し、社会問題となっています。
警察庁は、このたび2016年(平成28年)の
1年間に、スマートフォンや携帯電話などを運転中に使用したことによる交通事故が1,999件発生したと発表しました。
5年前の2011年(平成23年)と比較すると約1.6倍も増加しています。
事業所では既に運転中にスマホや携帯電話を使用しないよう指導していると思いますが、この機会に管理・指導面で問題がないか、チェックしてみましょう。
※警察庁の発表資料「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」より
★画像注視、画面操作による死亡事故が多発
上のグラフでもわかるように、携帯電話がらみの事故の中でも「ながらスマホ」など画面を見たり操作したことが原因となったケースは約2.3倍と、大幅に増加しています。
なお、2016年(平成28)中に携帯電話関連の死亡事故は27件発生しています。そのうち画像目的使用の事故は17件と死亡事故全体の約63.0%を占めています。
★スマホを見ていて自転車と衝突
2016年3月12日、東京都台東区で交差点を右折中の大型観光バスが、自転車で横断歩道を渡っていた小学1年生の男の子(当時7歳)と衝突して小学生が死亡しました。
観光バスの運転者(39歳)は事故の直前まで「ライン」のメッセージを見るため、スマートフォンを片手に持って運転していました。
右側ばかりを見ていて、向かい側から来た小学生には「全く気づかなかった」ため、ひいてしまったのです。
★ポケモンGOに夢中で横断中の小学生を轢過
2016年10月26日、愛知県一宮市で、横断歩道を渡っていた小学4年生の男の子(当時9歳)が1.5トンのトラックにはねられ死亡しました。
トラックの運転者(36歳)は、事故当時、運転中にスマートフォンでポケモンGOゲームをしていたと供述しています。
ゲームでキャラクターをゲットするのに夢中となっていて前方不注意となったのが事故原因だったとみられています。
(※この運転者は禁錮3年の実刑判決を受けています/平成29年3月8日名古屋地裁一宮支部)
★地図アプリを見ていて信号無視で衝突し、母親が死亡
2017年(平成29年)2月8日、埼玉県草加市で運転中に信号を見落としたトラック運転者(28歳)が出会い頭事故を起こしました。事故のはずみでトラックは歩道に突っ込み、歩道上の母子を轢いて30代の母親を死亡させました。
運転者は日頃は事故のあった市道と平行して走る県道を利用していましたが、混雑していたため迂回し、スマホの地図を使って目的地を確認しながらトラックを運転していて、脇見運転に陥ったということです。
(※この運転者は禁錮2年6月の実刑判決を受けています/平成29年7月3日さいたま地裁)
携帯電話がらみの事故では通話中に漫然運転となって追突したり、着信した携帯電話を取ろうとして、ハンドル操作を誤るといったケースも考えられます。
しかし、警察庁の統計でも明らかなように、ゲームやアプリなどを使ってスマートフォンなどの画面を注視・操作しているときの重大事故が増加しています。
またスマートフォンだけではなく、運転中に(正確には踏切待機中)タブレットでインターネットの操作をしていた乗合バスの運転者がいて、乗客の指摘で発覚したケースがあります(京都市)。
youtubeなどのサイトにコンテンツを投稿する運転者が増えているのです。
単なる電話使用とはいえないケースも想定して管理・指導をする必要があります。
乗合バスや貸切バスの運転者のスマートフォン注視は、事故にならないケースでも、乗客などから指摘されてコンプライアンス違反として信用を失ったり、運輸支局の監査を受けることになるため、中には本腰を入れて指導をするバス事業者も表れています。
下に掲げた乗務員規程の改訂例は、社員がバスの運転中にスマートフォンのゲーム画面を操作していた件が発覚して問題となったあるバス会社が、再発防止のため改訂したものです。
★ 乗務員規程を改定し「スマホ等の車内持ち込みを禁止、違反者は懲戒処分」
○運転中の携帯電話、スマートフォンの
使用を禁止していた
○緊急時に限って会社への連絡に携帯電話
の使用を認めていた
○個人の携帯電話車内持込みについて、確
認をする規則はなかった
○個人の携帯電話持込みや使用について、
懲戒処分などを命じる規則はなかった
○運転者のストレスチェックや個別の面談等
は実施していたが、携帯電話使用の依存度
などについて、特別にチェックする規則は
なかった
○個人で保有する携帯電話・スマートフォ
ン・タブレット等の端末は乗車スペース
への全面的持込み禁止とする
○緊急連絡用として通話機能のみ可能の会社
支給の携帯電話を設置。ただし運転中は携
帯電話に手が届かないように配備
○運転者以外の乗務員や交替運転者がいる時
は、相互に個人携帯端末の持込みがないか
チェックする決まりを設ける
○懲罰規程を改定し、車内への携帯端末の持
込みを懲戒事由の一つとして明文化し、違
反者には懲戒処分を科すと強調した
○毎年、携帯電話依存度のチェックを実施し
依存度が高い乗務員には個別に安全教育を
行い、ドライブレコーダーのモニタリング
も重点的に実施する
同乗者がいない場合、携帯電話の持込みを運行中にチェックするのは難しいでしょうが、出発前の点呼や朝礼時にカバンを開けさせて、所定の場所に携帯電話やスマートフォンが保管されているか管理者が確認することは可能です。営業連絡用に通話とメール通信だけできる携帯電話を会社が別途支給し、自分の携帯電話等は使用しなくても済むように配慮している会社もあります。
携帯電話は個人で管理できますので、出発前のチェックなど形式にすぎないと考えがちです。しかし、管理・指導を厳しくする姿勢を示して運転者の意識を喚起することが重要です。
また、運転中の携帯通話を禁止しておきながら、社内の連絡メールや電話の着信にすぐ反応しないと叱責する手前勝手な上司がいます。
このような管理上の矛盾がないか、安全担当の管理者は運転者の話をよく聞いて対策を考えてください。
運転中は携帯電話をカバンに入れてドライブモード等にしておき、定期的にコンビニなどで休憩したときに確認してから通話やメールをする規則を会社の中で明文化し、実際に習慣付けるように朝礼で指導しましょう。
営業所の管理職などにも徹底しておきます。
休憩中に通話する方が商談なども落ち着いてできるので、うまくいくはずです。
また、スマートフォン等の地図アプリは情報が最新のため便利ですが、手で持って使うのは危険です。同乗者がいないときには使用しないように徹底するか、専用のフォルダーをダッシュボードに設置し、カーナビゲーション装置として使用するなどの工夫が必要です。
初めての訪問先で慣れていない運転者には、出発前に経路をよく確認するように指導しましょう。
運転者に過失のある死亡事故原因の1位2位を占めるのが漫然運転と脇見運転です。その脇見運転のなかで問題になっているのが、スマートフォンを見ながら運転する「運転スマホ」です。
本作品は、事故の再現映像や実験映像などで、「運転スマホ」の危険性を科学的に検証しています。
車載カメラが捉えや危険映像や専門家の解説などを織り交ぜながら、「運転スマホ」の危険と安全運転の大切さを訴える安全運転教育DVDです。