平成29年6月3日(土)~4日(日)にかけて、東京の実践女子大学渋谷キャンパスにおいて、日本交通心理学会第82回大会が開催されました。
「交通心理学への期待」をテーマにシンポジウムが開かれたほか、2日間にわたり、19の研究発表が行われました。
今回は多彩な研究発表の中から 「アルコール摂取による生理と心理への影響Ⅱ」を取り上げ、 「飲酒後に道路横断行動がどのように変化したのか」を紹介します。
日本交通心理学会とは…
日本交通心理学会は1975年日本交通心理学研究会として創立しました。交通に関わる諸問題について心理学を中心とした研究を行うことにより、交通事故の抑止とよき交通環境の建設に寄与することを目的としています。学会の認定資格である交通心理士は、地域や企業の交通安全のリーダーとしての役割を担っており、今後ますますの活躍が期待されています。
実験対象者は22名で、2時間かけて好みのアルコールと食べ物を自由に飲酒し、飲酒前と飲酒後30分後の行動を比較した。
シミュレータを使った道路横断行動検査では、左右から時速30キロで車が接近してくる片側1車線の道路を横断するという設定で行われ、横断開始前の左右の確認動作頻度と、走行車両と接触回数及びヒヤリ・ハット回数を測定した。
横断開始前の左右安全確認は、飲酒後は減少傾向が明らかになり、右側は22名中8名が、左側は22名中13名が確認回数が減少しており、とくに左側の安全確認の減少が顕著であった。
また、横断中にヒヤリ体験をした人は飲酒前は14名だったが飲酒後は18名に増え、事故に遭遇した者も0名から9名に増えた。
酒を飲むと、運転はもちろんだが歩行行動にも影響を与え、道路横断時における危険性が示唆された。
日本交通心理学会第82回大会データ
・日時 平成29年6月3日(土)~4日(日)
・会場 実践女子大学渋谷キャンパス
・主催 日本交通心理学会
・共催 日本交通心理士会
・後援 一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会
・プログラム
<シンポジウム>
「交通心理学への期待」
講演1「高齢運転者対策における交通心理学の役割」
──岡本 努(警察庁交通局)
講演2「運転者データを用いた交通事故統計分析」
──西田 泰(交通事故総合分析センター)
講演3「眼から考える交通安全」
──川守田拓志(北里大学)
<研究発表>
・高齢運転者における認知機能低下と運転適性との関連に関する研究(1)
―認知機能の低下と運転行動との関連―
・高齢運転者における認知機能低下と運転適性との関連に関する研究(2)
―認知機能の低下とメタ認知との関連―
・児童のリスク認知と道路横断行動の自己評価に関する学年差―簡易アンケート調査による検討ー
・免許保有が歩行者と自転車運転者の交通行動に及ぼす影響の男女差
・免許停止処分講習の効果(7)
ー講習受講の有無との関連ー
・免許停止処分講習の効果(8)
ー免停経験有無と運転態度の比較ー
・免許停止処分講習の効果(9)
ーパーソナリティ特性の比較ー
・高齢免許保有者の事故経験と関連する因子の検討
ー自記式認知症チェックリスト、ドライバーズチェック等を用いてー
・交通警ら活動の効果検証実験(1)
ー実験計画の策定ー
・交通警ら活動の効果検証実験(2)
ー潜在成長曲線モデルによる事故の時系列変化の予備的分析ー
・速度超過習慣尺度の構成
・バス乗務員における車線変更/進路変更時の運転行動分析
ー合図、確認、ハンドル操作のタイミングに注目してー
・視野制限運転シミュレータを用いた交通場面に対するドライバ反応
・アルコール摂取による生理と心理への影響Ⅰ
ー呼気及び尿検査を行動抑制・行動欠勤システム尺度に表れる変化ー
・アルコール摂取による生理と心理への影響Ⅱ
ー飲酒に伴う下肢運動機能と道路横断の歩行機能の変化ー
・小学生の自転車利用における安全性アセスメントツールの開発Ⅰ
ー開発理念と潜在危険認知の評価ー
・小学生の自転車利用における安全性アセスメントツールの開発Ⅱ
ー質問紙法による安全性評価の試みー
・小学生の自転車利用における安全性アセスメントツールの開発Ⅲ
ーウェラブルカメラを用いた行動分析による評価ツールの生態学的妥当性ー
・走行速度帯別の危険車間時間自動車数の調査による事故防止対策の検討