先日、悪質な交通違反は特定違反行為にあたり、免許取り消しになる上、数年免許証が再取得できないということを知りました。特定違反行為とは一体どういった違反行為を指し、どのような罰則があるのでしょうか?
道路交通法は、公安委員会による免許の付与、及び免許を受けた者が違反等をした場合の免許取消しや停止等について規定しています(同法90条、103条等)。
免許の取消しに関する具体的な基準や取消し後の処分等については、同法、及び道路交通法施行令で定められていますが、道路交通法103条2項、及び8項や、道路交通法施行令33条の2以下などでは、特に重大な違反行為についての処分を定めており、特に施行令では、一般違反行為と特定違反行為を分けて規定し、それぞれの違反を行った場合の点数や処分に違いを設けています。
いわゆる特定違反行為の種類も施行令に定めがあり、
が特定違反行為とされています(同政令別表第2の2)。
特定違反行為の内容は、それぞれ以下のようなものです。
1・運転殺傷は、自動車の運転により、故意に殺人や傷害、建造物損壊を行った場合です。
2・危険運転致死傷は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律違反(いわゆる危険運転致死傷罪(※))の行為によって、人を死に至らしめたり、傷害を負わせたりした場合です。
3・酒酔い運転は、道路交通法65条1項違反のうち、酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)で運転していた場合です。
4・麻薬等運転は同法66条のうち、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤等により正常な運転ができないおそれがある状態で運転した場合です。
5・救護義務違反は、運転者が、人の死傷があった場合に同法72条1項前段の規定の措置を採らなかった場合です。
以上の各行為は、悪質な行為であるとして、特に処分等が重くなっています。
(※)危険運転致死傷罪
1・飲酒・薬物摂取の影響により正常な運転が困難な状態で走行
2・進行の制御が困難な高速度で走行
3・進行を制御する技能を有しないで走行
4・人・車を妨害する目的で割り込みなどを行い、かつ、重大な危険を生じさせる速度で運転
5・赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な危険を生じさせる速度で運転
6・「通行禁止道路」を進行し、かつ、重大な危険を生じさせる速度で運転
7・飲酒・薬物摂取の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転
8・「政令で定める病気」の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転
(7.8は正常な運転が困難な状態に陥った場合に限る)
特定違反行為は、いずれも悪質かつ重大な違反行為であり、重い刑事罰が科される場合が多いといえます。それぞれの罰則は以下のとおりです。
行政処分については、特定違反行為に該当する場合には、以下のとおりの基礎点数であり、いずれの場合も35点以上であるため、免許停止の処分ではなく、免許取消しになります。
(1)運転殺傷、及び(2)危険運転致死傷の場合は、相手が死亡した場合の基礎点数は62点です。
また、いずれの場合も、傷害の場合は、治療期間が3ヶ月以上、又は後遺障害が残った場合には55点、治療期間30日以上の場合は51点、治療期間15日以上の場合は48点、治療期間15日未満、又は(1)の建造物損壊の場合は45点となっています。
そして、(3)酒酔い運転、(4)麻薬等運転、(5)救護義務違反は、いずれの場合も基礎点数が35点となっています。
なお、道路交通法103条8項は、特定違反行為に該当した場合には、政令で定める基準に従い、3年以上10年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとするとしています。
免許取消しの欠格期間は、前歴や違反内容(基礎点数)によって変わりますが、一般違反行為の場合には1年から最長でも5年とされているところ、特定違反行為の場合には3年から、最長で10年になるとされています。
(執筆 清水伸賢弁護士)