トラブル発生時の措置を指導していますか

 さる2017年8月、徳島自動車道で故障停止中のマイクロバスにトラックが衝突し、高校生など16人が死傷する事故が発生しました。

 

 事故の直接原因は、トラック運転者の居眠り運転とされ既に起訴されていますが、マイクロバスの運転者も乗客を避難させるなどの安全確保を怠ったと判断され、被疑者死亡のまま過失致死傷の疑いで書類送検されています。

 停止表示器材の設置もなく、トラブル発生時の措置が徹底していなかったと推察されます。

 

 この事故を教訓として、故障など緊急時に行う措置を運転者に再度指導しておきましょう。

■こうして事故が発生した──追突で乗客など2名死亡

 事故は2017年8月25日午後5時ごろ、鳴門市大津町大幸の徳島自動車道下り車線で発生しました。

 

 エンジントラブルのため、30分ほど前から路肩に停止していたマイクロバス(徳島県阿波市のバス会社運行)に居眠り運転のトラック(松山市の運送会社運行)が車線をはみ出してブレーキを掛けずに追突し、バスはガードレールを突き破って、のり面を7~8メートルほど転落しました。

 

 バスには神戸市の専門学校体験入学から帰る途中だった徳島県内の高校生ら16人が乗っていて、車外に出ていたバス運転者(30)が即死し、車内最後部にいた女子高校生の1人も腹部圧迫で約2時間後に亡くなりました。

 

 バスからは非常電話や110番等に「故障で停車中」との通報がなかったため、県警高速隊・道路会社とも衝突事故が発生して初めてバスの故障停止を知りました。

■どうして避難誘導がされなかったのか?

 停止から事故まで30分近く時間があったにも関わらず、運転者はなぜ乗客をガードレールの外側などに避難させていなかったのでしょうか。

 

 気温が高く暑い日だったので乗客へのサービス意識が働き、代替バスが到着するまで冷房が機能している車内にとどまらせようと考えた可能性があります。

 

 しかし、高速道路では、故障車などの中にいた乗員や車の周りにいた運転者などが後続車に衝突され死亡する事故がたびたび発生しています。 

 

 また、後続車の衝突により車両火災が発生して、軽傷であるにもかかわらず人が亡くなってしまった例もあります。

 

 高速道路上で故障停止したときは、速やかな避難が重要です。

■停止表示器材の設置、道路会社への連絡がなかった

道路管理隊の救援例(事故事例とは直接関係ありません)
道路管理隊の救援例(事故事例とは直接関係ありません)

 事故前に現場を通過した車両運転者の証言では、バスの後方に停止表示器材の設置がなされていなかったようです。

 

 トラック運転者は居眠り運転をしていましたので、停止表示器材があったとしても衝突は避けられなかったと思われますが、故障などのため高速道路上で停車する場合、後続車のために停止表示器材を表示することが道路交通法で義務づけられています。

 表示していなかった場合は、「故障車両表示義務違反」の責任が問われます(違反点数1点)。

 

 また、会社には故障連絡をしたにもかかわらず、運転者・運行管理者からは警察、道路会社に故障の非常連絡がなかったため、道路管理隊や高速警察隊は出動していませんでした。

 

 非常連絡をしていれば、そのときに全員を避難させるように指導を受けたり、衝突前に管理隊などが現場に到着して避難誘導を行った可能性があります。道路情報板にも「○キロ先、故障車あり」等と表示されますので、死亡事故は避けられたかも知れません。

 

■トラブル発生時の措置を徹底しておこう
できるだけ広い場所に停止する

 高速道路上でやむを得ず停止する場合は、非常駐車帯を選びましょう。非常駐車帯まで行けなかった場合は、路肩に停止することになりますが、車線に車体がはみ出さないようになるべく広い場所を選び、ハザードランプを点滅させたまま停止します。

後続車に非常停止を知らせる → 続発事故の防止

 後続車から目を離さずに、停止車両の後方(高速道路ではなるべく50m以上は後方)の見えやすい場所に点火した発炎筒(※)と停止表示器材を設置します。


※燃料漏れがある場合は火災の危険がありますので、着火式の発炎筒は使わないようにします。最近は、発炎しないLED使用タイプの非常信号筒もあります。

乗員は安全な場所へ避難 → 車の中にはとどまらない

 後方車両に注意して助手席側・バス降車口側から降車し、すみやかに安全な場所に避難します。車線側には出ないこと。

 高速道路で「安全な場所」とは路肩ではなく、ガードレールの外などで後続車が衝突してきても被害を受けない場所をさします。

 後続車が衝突したとき車両がレールを突き破ってくる恐れがあるので、ガードレールの外側であっても停止車両の前方は危険です。停止した車の後方に避難しましょう。

 

(※運転者単独であれば続発事故防止措置を先に行い避難しますが、同乗者や乗客がいる場合は運転者が停止表示器材を置きに行っている間に、すみやかに避難する必要があります)

警察・道路管理者への連絡→ #9910 など

 高速道路では非常電話が約1キロごとに設置され、交通管制室に直接つながります。

 近くに非常電話が見当たらない場合は、携帯電話で道路緊急ダイヤル「#9910」に連絡するか、警察に110番通報します。

勤務先への連絡

 最後に勤務先に連絡して、トラブル・故障の状況と自分が行った措置について報告します。

■非常電話は自車線側の

 原則として停止場所よ

 り後方で探す。

■対向車線側に見えても、

 絶対に本線を横断しな

 いこと!


■車内装備品を事前に確認しておこう

・停止表示器材(三角表示版など

 取り出しやすい場所に搭載しているか

 ──器材の広げ方を事前に指導しておく

 

・有効期限内の発炎筒が設置されているか

  ──着火の仕方を事前に指導しておく

 ←  発炎筒は助手席の足下に設置されていること

  が多い


よくある「間違った」対応事例

JAFに電話して助けを待つだけで、#9910などに通報しなかった。

…………………………………………………

自動車修理工場に勤務する友人が近くに住んでいるので、連絡した

…………………………………………………………

契約している自動車保険のレッカー代サービスを利用するため、保険会社にだけ連絡した

…………………………………………………………

仕事中で配達が遅れるから、何よりも先に会社に電話した。

「寒いから、暑いから、雨が降っているから」等の理由で、故障している自分の車の中にいて救助が来るのを待っていた。

 

 

 

 


 

※上記の間違った対応事例は、警察庁のWEBサイト「緊急事態発生後の避難措置如何が「生死の分岐点」

 の掲載資料(資料3)より引用しました。

 

【参考ページ】

 政府広報オンラインやJAFのWEBサイトにも、わかりやいトラブル対処策が掲載されています。 

 

 → 「高速道路運転中にまさかの事故!高速道路の安全ドライブ3つのポイント」 

 → 高速道路で事故や故障が発生したらどうすればいいのですか?」 

 

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