事業用自動車の管理者は、指導・監督の指針にそった教育内容を立案するようにしてください。
なお、4月に実施される春の全国交通安全運動に向けて配布資料の準備や活動計画などをすすめておきましょう。
注意の偏りを防ぎ、満遍なく気を配ろう
■追突事故の多くが「注意の偏り・わき見」から発生
年度末が近づき、忙しい毎日を過ごされていると思います。
3月は季節の変わり目で暖かい日も増えて、子どもや高齢者などの歩行者・自転車が増えるため、より注意力を高めて運転することが求められます。
自転車や歩行者などに注意することは重要ですが、一つのものにとらわれ過ぎると、他の交通参加者の動きなどを見落としやすくなりますので、常に細かく短い目線の移動をして、満遍なく注意を払うことが大切です。
交通事故総合分析センターが追突事故について分析した資料によると、前車に追突した事故の多くが、目を離して前車の動きを見ていなかったことが原因で起こっています。目を離した理由を尋ねたところ、54%は他の物に注意を奪われたり、わき見をしていたと答えています。
イタルダ・インフォメーションNo.43「追突事故はどうして起こるのか」より
■どんなとき注意がそれるかを考え、自覚し
ておこう
運転中に注意が偏ったり、前方への注意力が落ちるのを防ぐためには、自分がどんなとき他の物に注意を奪われやすいか、過去のヒヤリ・ハット体験などを思い起こして、自覚しておくことが大切です。
たとえば、大型車を運転していてオーバーハングにより他車と接触したような経験のある運転者は、右左折時には自車の左右を慎重に確認するようになります。
しかし、そのとき長時間ミラーを見たり窓から確認をしていると、今度は前車の停止に気づくのが遅れて急ブレーキを踏むといったことが起こりかねないのです。
進路変更時なども後方や側方の確認は重要ですが、長時間目を離さないように意識して確認するとともに、状況に応じて徐行するなど速度コントロールをすることが大切です。
混雑した交差点などで、気を配るべき物が多いと感じる場合は、減速するか停止して安全確認に余裕を持ちましょう。
次年度の安全管理・指導計画を立てよう
■月別の安全計画を立てる
今年度(平成29年度)の事故・違反の実態や管理面での反省を踏まえて、安全運転目標・交通事故削減目標などを立案し、交通安全委員会の会議などを通じて周知しておきましょう。
月別の安全運転目標や年間の各種行事などに配慮して安全活動の計画を立てます。
【反省すべきポイント】
・実技指導などを計画どおり実施できたか
・マイカー通勤者への指導が抜けなかったか
・長時間運転の続く運転者はいなかったか
・伝達ミス、整備確認ミスはなかったか
・点呼、朝礼が形骸化していなかったか
・前年とは異なった興味・関心をひく指導資料を配布できたか
【配慮すべき行事等】
・春の全国交通安全運動(4月)
・秋の全国交通安全運動(9月)
・全国安全週間(7月)
・夏の交通事故防止運動/都道府県(7月)
・全国労働衛生週間(10月)
・年末年始の交通事故防止運動/都道府県 (12~1月)
・省エネルギー月間(2月)
・月例の実施例 危険予測訓練/交通安全委員会/一斉車両点検/安全衛生委員会議
・季節の実施例 危険箇所パトロール/ヒヤリ・ハット事例募集/正門指導 など
※ 年間の安全運転管理計画は → こちらからダウンロードできます。
■違反や物損事故の内容にも目を配ろう
あおり運転で重大事故を起こした運転者の事例などをみると、過去にも道路交通法違反をしていたり、同種の危険な運転による物損事故などのトラブルを起こしていることがあります。
こうした運転者は、違反や軽微な事故のうちに問題点を発見して指導しないと、やがて大きな人身事故を起こす恐れがあります。
運転者の違反実態を調べるため、次年度は運転経歴証明書を自動車安全運転センターに申請して、調査してみてはいかがでしょうか?
申請には一定の費用がかかりますし(※)、運転者の委任状も必要ですので、社内で無事故・無違反コンクールなどを計画して予算を取り、表彰のための資料として申請することを説明すると、社内のコンセンサスを得ることも容易になります。
※証明書の交付手数料は、1通につき630円( → 自動車安全運転センターのWebサイトを参照)
血管の健康に気を配ろう
■動脈硬化を防ぐ食事と運動
寒波はそろそろ峠を越しました。春に向けて健康増進に積極的に乗り出したい時期ですね。
食事の欧米化が進んでいることから、最近、若い人でもコレストロール値が高く動脈硬化疾患に陥りやすいと言われています。
コレステロールは人間の体に欠かせない脂質ですが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の原因となります。
進行すると、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患、脳梗塞を起こすリスクが高まりますので注意しましょう。
対策として、コレステロール値の高い人に対して、値を下げる薬もありますが、日常の食事改善とともに運動習慣をつけることが大切です。
■食事改善で注意すべきポイント
●食塩を取りすぎない
●肉の脂身、卵黄、炭水化物の摂取を減らす
●過渡のアルコール摂取を慎む
○大豆、魚類の摂取を増やす
○野菜、海藻、果物の摂取を増やす
○食物繊維の摂取を増やす
■運動で注意すべきポイント
○毎日、少しずつ運動し日常的な習慣にする
○1回20分から30分の有酸素運動をする
(少し汗ばむ、ややきついと感じる程度の運動)
○ウォーキング(速歩)・軽いジョギング・水泳・自転車・社交ダンス・太極拳など、
好みに合わせて、疲れすぎないで持続できるものにチャレンジする
(※この記事は、厚生労働省のe-ヘルスネット「疾病の予防・改善と運動」を参考に作成しました)
【こんな事故が起こっています!】
■46歳のバス運転者が心筋梗塞で死亡
2017年9月22日午後9時35分ごろ、宮城県大崎市内の東北自動車道下り線を走行していた大型路線バスが、急に減速して中央分離帯に接触しました。
運転者の男性(46歳)は意識を失っていたので、乗客2人がバスを停止させ、乗客に怪我人はでませんでしたが、運転者は収容先の病院で死亡しました。
死因は急性心筋梗塞でした。
運輸局の監査でも、バス事業者に過重労働があったとは認定されていないため、疾病原因で死亡したとみられています。
■春の全国交通安全運動の準備を
春の全国交通安全運動が4月6日から15日までの10日間に渡って実施されます。
今年の運動の重点項目には「子供と高齢者の安全な通行の確保と高齢運転者の交通事故防止」が第一に掲げられています。
最近、通学中の児童・生徒が事故に巻き込まれるケースや高齢運転者による事故が増えていますので、子どもの安全確保と加齢等に伴う身体機能の変化が高齢者の交通行動に及ぼす影響などに関する安全指導の徹底が強調されています。
その他の全国重点としては、
(2) 自転車の安全利用の推進
(3) 全ての座席のシートベルトとチャイルドシート
の正しい着用の徹底
(4) 飲酒運転の根絶
があげられています。
なお、交通事故死ゼロを目指す日は、4月10日(火)となっています。
詳しくは、内閣府のWEBサイトを参照してください。
■花粉症に配慮しよう
2018年春のスギ花粉は、極寒の影響で飛散開始が例年より少し遅くなる可能性があり、ピークは福岡では2月下旬から3月上旬、高松・広島・大阪・名古屋では3月上旬から中旬と予測されています。
金沢と仙台では3月中旬から下旬に、東京のピークは3月上旬から4月上旬ですが、多く飛ぶ期間が長い予報です(日本気象協会)。
■飲酒運転多発シーズンに備えよう
3月は異動の季節ですので、お別れ会などの行事をする部署が増えます。
インフォーマルな会合であっても、飲酒運転を絶対にしないように、十分に指導しておきましょう。
警視庁のある3年間の事故分析によると、年間のうちで飲酒運転事故がもっとも多かったのは3月だったという統計があります。
時間帯別では、午前6時~8時の早朝時間帯と、午後10時~午前2時の深夜時間帯に多発していました。
深夜に多いのは歓送迎会などの帰りといったケースでしょうが、早朝に多いのは運転者が前夜の「酒気残り」に気づかなかったケースです。
深酒をすると、体内にアルコールが残り、翌朝のマイカー通勤などで酒気帯び運転として摘発されることがあるので、厳しく指導しておきましょう。
ドライバーへの指導・監督を徹底しよう
■指導・監督指針に沿った教育計画を
自動車運送事業者が運転者に対して行う安全運転の指導及び監督の内容について、監督官庁である国土交通省は、かなり厳しい姿勢を示しています。
バス事業者に対しては、2016年1月に発生した軽井沢スキーバス事故が大きな契機となり、指導及び監督の指針が改正・強化されました。
また、トラック事業者についても、2017年3月12日から「準中型免許」が導入され、運転者への指導及び監督の指針が改正されました。
事業者が監査や巡回指導を受けた時、自社なりに安全運転教育を実施しているつもりでも、その内容が指導・監督の指針に沿ったものでないと判断された場合は、指導不十分で処分の対象となることがあります。
新年度を控え、指針の内容に沿った具体的な教育計画を立てましょう。
指針に基づく教育資料を確保することも重要です。以下のWEBサイトなどを参照してください。
→ 国土交通省 ドライバー指導実施マニュアル
→ シンク出版株式会社 運行管理者のためのドライバー教育ツール
→ シンク出版株式会社 バス運行管理者のための指導・監督ツール
【トラック運送事業の運行管理者向け】
労災事故の実態調査に取り組もう
■荷物の積み降ろし中の事故防止
平成29年中の陸上貨物運送事業の労働災害件数(休業4日以上)は13,402件と前年を5.7%上回り、増加傾向となっています。
なかでも、トラック運転者の災害が目立っています。
その背景には、荷主と運送事業者が荷役の役割分担を明確に定めないまま契約が結ばれ、トラック運転者が慣れない場所での荷役作業を強いられて労災に遭うケースが多いとみられています。
雇用関係にない荷主から一方的に作業を指示されたり、店舗などの陳列まで依頼されたりした運転者もいます。
また、荷物の積降ろしをする施設の老朽化が原因で運転者がけがをしたケースなどが労働局にも報告されています。
自社の運転者が荷主の無理な依頼により、構内等で災害にあったりヒヤリ・ハット体験をしていないか調査し、荷主と協議して契約にない急な荷降ろし作業や、危険な場所での作業をさせないように要望し、事故防止に取り組みましょう。
【バス・タクシー事業の運行管理者向け】
旅客事業者にもIT点呼を導入
■2018年3月に運輸規則を改正予定
すでに、トラック運送事業者に対して2007年(平成19年)より導入されている「IT点呼」が、バス・タクシーなどの旅客運送事業者に対しても、この春から導入される見通しです。
輸送の安全と旅客の利便の確保に関する取り組みが優良と認められるバス・タクシー事業者の営業所と車庫の間で、ICT(情報通信)を活用し対面点呼に替わるIT点呼を認めるものです。
国土交通省はパブリックコメントを募集中で、平成30年3月に省令改正が行われる見通しです。
IT点呼が認められる条件は以下のとおりです。
●開設して3年を経過している営業所
●過去3年間、自責の重大事故を起こしていないこと
●過去3年間、行政処分または警告を受けていないこと
●IT機器利用による点呼が実施できるのは、該当営業所と営業所の車庫間、または営業所
の車庫と当該営業所の他の車庫間に限る
※参考:国土交通省WEB
→ (平成30年3月30日公布・即日施行)
※ICT=パソコン、タブレット、スマートフォン、デジタルカメラ、インターネット通信など
を活用してコミュニケーションをとる情報機器システム
日 付 | 行 事 等 |
1日(木) ~31日(土) |
・自殺対策強化月間──政府は、毎年3月を自殺対策強化月間に設定し、啓発活動や支援策を重点的に実施しています。悩みを抱えた人たちに広く支援の手を差し伸べていくことにより「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指しています。事業所でもストレスチェックなどを推進して、自殺のない職場をめざしましょう。 |
1日(木) ~7日(水) |
・車両火災予防運動(春季全国火災予防運動)──消防庁と 国土交通省の共同主唱。車両交通の関係者や利用者の火災予防意識の高揚と車両火災防止のため、全国火災予防運動とあわせて同期間に実施されます(車両火災原因のトップは排気管ですが、大型バス等では電気系統の劣化も多くなっています)。 |
3日(土) |
・ひな祭り(桃の節句)/耳の日 |
4日(日) |
・運行管理者試験(平成29年度第2回試験)
──詳細は公益財団法人 運行管理者試験センターのWEBサイトを参照 |
6日(火) |
・啓蟄 |
7日(水) |
・消防記念日 |
8日(木) |
・国際女性デー──国連は1975年(国際婦人年)以来この日を「国際婦人デー」と定め、国連事務総長が女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に対し呼びかけている。 |
11日(日) |
・東日本大震災の日──2011年の震災から7年が経過します。政府主催の追悼式典のほか、合同追悼式などが被災地を中心に実施されます。 |
13日(火) |
・3月の製品安全点検日
経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っています。 |
14日(水) |
・ホワイトデー |
17日(金) |
・八本松トンネル事故から2年──2016年の同日、午前7時半頃、東広島市の山陽道下り線「八本松トンネル」内でトラック運転者の過労運転が原因で車12台が絡む多重衝突事故が発生しました。この事故で、71人が負傷、2人が亡くなり、運転者は懲役4年の実刑、運行管理者も逮捕され過労運転の下命容疑で起訴され有罪が確定、法人としての会社も有罪となりました。 |
21日(水) |
・春分の日 |
23日(金) | ・世界気象デー──1950年のこの日に世界気象機関条約が発効したことを記念して世界気象機関(WMO)が制定しました。 |
25日(日) | ・電気記念日──明治11年(1878年)3月25日、工部省電信局が東京・木挽町に電信中央局を設けてこの日に開局祝賀会を開催、会場で日本初の電気の灯り(アーク灯)を点灯したことにちなみます。 |
3月上旬 | ・平成29年中の労働災害の動向について(厚生労働省) |
3月上旬~ |
・34回安全衛生標語の募集──中央災害防止協会。 「平成30年度 年末年始無災害運動標語」、「平成31年 年間標語」の募集。 締切りは4月末。詳細は、同協会のWEBサイトを参照。 |
2月上旬~4月末 |
・平成30年度の「安全衛生標語」募集──陸上貨物運送事業労働災害防止協会。「荷役」「交通」「健康」の3部門で募集し、11月に富山で開催する全国大会で顕彰。締切は4月30日(月)詳しくは、同協会のWEBサイトを参照。 |
~3月15日 |
・平成29年分の所得税および復興特別所得税の確定申告(2月15日~) |
3月上旬 |
・平成29年中の交通事故発生状況(警察庁) |
3月下旬 |
・平成30年使用の交通安全スローガンポスターデザイン入選作の発表 (毎日新聞社) |
3月下旬 |
・平成29年賃金構造基本統計調査結果=賃金センサスの発表 (厚生労働省) |
◆3月の日没時間(国立天文台天文情報センターによる)
1日(木) | 福岡 18:15 |
大阪 17:54 |
東京 17:36 |
札幌 17:23 |
15日(木) |
福岡 18:26 | 大阪 18:05 | 東京 17:48 | 札幌 17:40 |
31日(土) | 福岡 18:38 |
大阪 18:18 |
東京 18:02 |
札幌 17:59 |
3月は日も長くなりますが、夕刻の人出が増える時期ですので、ライトの活用を意識してください。とくに人や自転車の多い薄暮時はとても事故が起こりやすいので、注意しましょう。
早めに点灯するあなたの配慮が、他の車や歩行者に注意を促し、交通事故を減らすことに結びつきます。遅くても日没の30分前には、ぜひ点灯するとともに、歩行者や自転車などの見落としを警戒して運転してください。
「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯をドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。横浜の運動事務局の呼びかけに呼応して全国で点灯活動を展開する運転者が増えています。
また、JAF(日本自動車連盟)も早期ヘッドライト点灯キャンペーンを展開しています。
JAFのインターネットWEBサイトではライト点灯
に関して様々な情報提供が行われます。
※詳しくは JAF Safety Light のサイトを参照してください