2019年3月8日、政府は道路交通法の一部改正案を閣議決定し、第198回国会に法案を提出しました。
今回提出された改正案の骨子は次の2点です。
携帯電話使用への罰則強化では、スマートフォンや携帯電話を手に持って通話するなどの違反行為が重大事故に結びついていることから対策を厳しくするものです。
たとえば、運転中にスマートフォンなどを使用していて交通事故などの危険に結びついた場合、現行の罰則は「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」ですが、これを「1年以下の懲役、または30万円以下の罰金」に引き上げます。
なお、反則金の適用はなくなり、すべて刑事罰が適用されることになります。
また、運転者がスマートフォンなどを運転中に使用した違反では(保持)、現行の罰則は「5万円以下の罰金」ですが、これを「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」と懲役刑を新設して、反則金限度額も5倍に引き上げられます。反則金などの支払いを拒む運転者には実刑適用もあり得ます。
さらに、携帯電話等を使用して交通の危険を生じさせ、交通事故で人を死亡させたり傷つけた場合は、免許の効力仮停止の対象とされます。
このほかの道交法改正点として、複数の幼児が乗せられる電動ベビーカーや手押し運搬車の規定を見直して「自動車」から除外します。これらの車両は、改正後は車道ではなく歩道を通行できるようになります。また、離婚等により姓を変更した人などが運転免許証の記載事項の変更届出をしたとき等の一定の場合に変更後の運転免許証の再交付申請が可能となります。
改正案が今国会で成立すれば、スマホの罰則強化等は早ければ年内に施行される見込みです。
(※編集部注)法案は4月12日に参院で可決、5月28日に衆院本会議で可決され成立しました。
携帯電話使用の罰則強化については今年12月までに施行されますが、施行日や
反則金額等は今後、内閣府令によって決定されます。
2については、2020年にも一部実用化が計画されている自動運転技術の定義等を明確化し、自動運転中、装置の作動状態を確認するために必要な情報を記録する装置の装備や記録の保存などを義務づけるため、道路運送車両法と連動した法改正に臨むものです。
ドライバーのように認知、予測、判断、操作に関する能力の全部を代替できる自動運転システムを、一定の条件付きで「自動運行装置」として新たに規定するとともに、装置を使用して自動車を用いる行為は法律上の運転に含まれることを明記しています。
さらに、自動運転レベル3(緊急時以外は自動運転をする)が実行されている状態で、一定の条件を満たさなくなった場合、直ぐにドライバーが手動運転に復帰して適切に対処することができる態勢にある場合に限って、携帯電話の通話やスマートフォン操作が可能になるといった規定が盛り込まれています。
つまり、自動運転レベル3では、ドライバーが車内で眠り込んだり、飲酒などをして手動運転にきちんと復帰できない状態では、従来どおり道路交通法違反等に問われる可能性があります。
自動運転関連の改正は、自動運転車の安全性を確保するための制度を整備するため、改正道路運送車両法の施行日と同時に施行となります。
(道路交通法第71条第5号の5の規定に違反した場合の罰則)
改正ポイント
携帯電話の使用等
(交通の危険)
携帯電話の使用等
(保持)
改正前
5万円以下の罰金
改正後
改正ポイント
携帯電話の使用等
(交通の危険)
携帯電話の使用等
(保持)
改正前
・大型車 2万円
・普通車 1.5万円
・小特等 1万円
・大型車 1万円
・普通車 8千円
・小特等 6千円
改正後
非反則行為となり
違反者には
刑事罰が適用される
・大型車 5万円
・普通車 4万円
・小特等 3万円
※法改正で変わるのは、「反則金の限度額」。2019年3月8日現在の反則金は、道路交通法施行令によっ
て限度額の範囲内で定められ、実際には下のようになっています。
・携帯電話の使用等(交通の危険)── 大型車1.2万円/普通車9千円/小特等6千円
・携帯電話の使用等(保持)───── 大型車7千円/普通車6千円/小特等5千円
●改正道路交通法の公布後、施行令も改正され、「携帯電話使用─保持」の場合の反則金額は、現行の普通車
6千円から1万8千円程度まで引き上げられるとみられています。
最近、他の車をあおったり、運転中にスマートフォンを操作して重大事故を誘発するなど、「ドライバー失格」と言える行為が目立つようになり、取締りや罰則が厳しくなっています。
この冊子では、代表的な危険・迷惑運転を取り上げ、その罰則の重さと、運転上の注意ポイントを解説しています。
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