「ながらスマホ」の罰則等大幅に強化──12月1日施行

■違反点数、反則金は約3倍に引き上げ

 

「ながら事故」を起こせば即免許停止処分に

 

 今年の国会で道路交通法が改正され(2019年6月5日公布)、車で走行しながらスマートフォンや携帯電話を使用したり、カーナビゲーション装置等の画面を注視する「ながら運転(※)」が厳罰化されました.

(※正確には「携帯電話使用等」違反──ただし、車が停止している間の使用を除きます) 。

 

 これに伴い道路交通法施行令が改正され、改正道交法の施行は12月1日と決まりました(施行令は2019年9月19日公布)。

 

 携帯電話等使用時の違反点数・反則金なども約3倍と大幅に引き上げられ、事故など交通の危険に結びついた場合は、即免許停止になります。

 

■携帯電話使用等に関する罰則・違反点数・反則金の引上げ──2019年12月1日施行

改正ポイント

 

 

 

 

携帯電話使用等により交通の危険を生じさせた場合 

 

 

 

 

改正前

【罰則】3月以下の懲役または5万円以下の罰金

【違反点数】2点

(酒気帯び点数14点 

反則金 大型1万2千円

    普通9千円

    二輪7千円

   小特等6千円

改正後

【罰則】1年以下の懲役または

    30万円以下の罰金

【違反点数6点(即免許停止)

酒気帯び点数16点─取消

 

 非反則行為となり、すべて

 罰則を適用

 


改正ポイント

 

 

 

 

携帯電話の

使用等

(保持) 

 

  

 

 

 

改正前

【罰則】5万円以下の

    罰金

【違反点数】1点

(酒気帯び点数14点 

反則金 大型 7千円

    普通 6千円

    二輪 6千円

   小特等 5千円

改正後

【罰則】6月以下の懲役または

    10万円以下の罰金

【違反点数3点

酒気帯び点数15点─取消

反則金 大型 25千円

    普通 1万8千円

    二輪 1万5千円

   小特等 1万2千円


 ※【罰則】道路交通法第71条第5号の5の規定に違反した場合の罰則の改正

 ※【違反点数・反則金】道路交通法施行令 別表第2及び別表第6の改正

 ※「酒気帯び点数」とは呼気中アルコール濃度0.15mg/リットル以上0.25mg/リットル未満の酒気を帯びていた場合の

   携帯電話使用等違反の点数です

 

●「交通の危険」の場合、1年以下の懲役

 運転中にスマートフォンなどを使用していて交通事故などの危険に結びついた場合、違反点数6点となるため、即、免許の停止処分を受けることになります。

 また、改正前の罰則は「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」でしたが、これも「1年以下の懲役、または30万円以下の罰金」に引き上げられます。

 交通の危険では反則金の適用はなくなり、すべて刑事罰が適用されることになります。

 

●「保持」でも酒気帯び違反点数は15点に

 運転者がスマートフォンなどを運転中に使用した違反(保持)では、改正前の罰則は「5万円以下の罰金」でしたが、これを「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」と懲役刑を新設しています。

 違反点数は3点、反則金も約3倍に引き上げられます。

 違反を繰り返したり反則金の支払いを拒む運転者には刑罰が適用される可能性もあります。

 

 なお、酒気帯び点数は携帯電話使用等(交通の危険)が16点、(保持)が15点となりますので、酒気を帯びてスマホなどを使用した場合は、即免許取消処分となります。

【解説──道路交通法改正のポイント】

 

 今回の道路交通法改正(2019年6月5日公布)の骨子は次の2点です。 

 

  1. 携帯電話使用等対策を図るための規定の整備  → ながらスマホ等への罰則強化
  2. 自動運転技術の実用化に対応した規定の整備  → 自動運転の定義等を明確化

 

 1の携帯電話使用等への罰則強化は、スマートフォンや携帯電話を手に持って通話するなどの違反行為が重大事故に結びついていることから対策を厳しくするものです。

 

 さらに、携帯電話等を使用して交通の危険を生じさせ、交通事故で人を死亡させたり傷つけた場合は、免許の効力仮停止の対象とされます。

 

 警察庁によると、2018年中にスマートフォンや携帯電話の操作などが原因で発生した人身事故は2,790件で、このうち45件は死亡事故でした。

 2013年の2,038件と比べて1.4倍の水準となっています。また、死亡事故率を比較すると携帯電話使用等の場合には、使用なしと比較して約2.1倍と高くなっています。

 

 なお、携帯使用等の年間取締り件数は約84万件で道交法違反全体の14%を占めています。 

携帯電話使用等の死亡事故は2.1倍
警察庁のホームページ資料より  
その他の改正要点

 

 1と同時施行されるその他の改正点は以下のとおりです。

 

・複数の幼児が乗せられる電動ベビーカーや手押し運搬車の規定を見直して「自動車」から除外します。これらの車両は、改正法施行後は車道ではなく歩道を通行できるようになります。

・離婚等により姓を変更した人などが運転免許証の記載事項の変更届出をしたとき等の一定の場合に変更後の運転免許証の再交付申請が可能となります。

・免許の取消しを受けた人が運転経歴証明書を申請する場合、現住所地での取得が可能になります。

 

 携帯電話使用の罰則強化などは2019年12月1日に施行されます。

 

 なお、以下に述べる自動運転関連の改正は2020年5月を目指すとしています。 

■自動運転レベル3においては、スマホ操作などが一部可能に

「自動運行装置の使用」を法律上の運転と明記

 2については、2020年にも一部実用化が計画されている自動運転技術の定義等を明確化し、自動運転中、装置の作動状態を確認するために必要な情報を記録する装置の装備や記録の保存などを義務づけるため、道路運送車両法と連動した法改正が行われました。

 

 ドライバーのように認知、予測、判断、操作に関する能力の全部を代替できる自動運転システムを、一定の条件付きで「自動運行装置」として新たに規定するとともに、装置を使用して自動車を用いる行為は法律上の運転に含まれることを明記しています。

 

●直ちに「手動運転に復帰できる」ことが前提

 ここでいう「一定の条件」とは、自動運行システムを使用できる「場所や天候、走行速度、時間等の制限」などの走行環境条件を国土交通大臣が車種ごとに規定することを指しています(道路運送車両法の改正による)。

 さらに、自動運転レベル3(緊急時以外は自動運転をする)が実行されている状態で、一定の条件を満たさなくなった場合、直ちにドライバーが手動運転に復帰して適切に対処することができる態勢にある場合に限って、携帯電話の通話やスマートフォン操作などが可能になるといった規定が盛り込まれています。

 つまり、自動運転レベル3では、ドライバーが車内で眠り込んだり、飲酒などをして手動運転にすぐにきちんと復帰できない状態では、従来どおり道路交通法違反等に問われることになります。

 また、道路運送車両法の改正により、保安基準対象装置に追加し、その作動状況を正確に記録する装置(作動状況記録装置)と記録の保存が義務づけられました。 

 

 自動運転関連の改正内容は、自動運転車の安全性を確保するための制度を整備するため、改正道路運送車両法(2019年5月24日に公布)の施行日と同時に施行となり、2020年度になると見込まれています。

■自動運転に関する改正ポイント──2020年度をめどに施行

「自動運行装置」の定義を道路交通法に明記

 装置の作動が「運転」にあたることを規定

 ──整備不良車運転の禁止と、作動状態記録装置の設置・記録の保存を義務づけ

(当面、レベル3について)スマートフォン・携帯電話によるメール、パソコン作業、読書、食事などを許容するが「直ちに復帰して確実に車の操作をできる状態」という条件付き

■自動運転車使用に関する罰則の新設──2020年5月までに施行予定

 (道路交通法第63条の2の2、第71条の4の2の規定に違反した場合の罰則)

改正ポイント

・自動運行装置使用に係る違反

(整備不良・使用条件違反等)

・作動状態記録装置不備 

改正後

 

 3月以下の懲役または5万円以下の罰金

 


■自動運転車の使用に関する違反点数・反則金の新設──2020年5月までに施行予定

  ※道路交通法施行令 別表第2及び別表第6の改正

改正ポイント

・自動運行装置に係る整備不良車両

 の運転禁止違反

・自動運行装置使用条件違反

 ──天候や道路(高速道路に限る

 等)が満たされない状態で運転 

・作動状態記録装置不備

 ──記録装置が正常に働かない状

 態で自動運転車を使用 

 

 

改正後

 違反基礎点数 2点

 反則金 大型 12千円

     普通 9千円

     二輪 7千円

    小特等 6千円

 違反基礎点数 2点

 反則金 大型 12千円

     普通 9千円

     二輪 7千円

    小特等 6千円


【参考記事】

改正道路交通法が施行されます──2020年4月1日施行(自動運転関連項目)

■危険・迷惑な運転をするドライバーを指導しよう

 最近、他の車をあおったり、運転中にスマートフォンを操作して重大事故を誘発するなど、「ドライバー失格」と言える行為が目立つようになり、取締りや罰則が厳しくなっています。

 

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