プライベートの運転で知人の子どもに怪我を負わせたら?

私はプライベートで自家用車を運転していますが、ときどき同じリトルリーグに所属する子どもの友達を送迎することがあります。安全運転には留意していますが、万が一、事故を起こしたらどうなるのかと不安です。このような送迎にはどのようなリスクがあって、どういった対処をしておけばよいのでしょうか?

■業務における他人の送迎時の事故

 送迎などのために無償で他人を乗せる場合は好意同乗と言われ、古い判例などでは乗車した方も利益を受けているとして、損害賠償額を減額されるようなことがありました。

 

 しかし現在ではそのような判断はされず、運転者に一定の過失がある場合には、傷害等を負った被害者に対して損害賠償責任を負います。これは民法第709条に基づく不法行為責任です。

 

 なお、運転者に過失がある場合、同運転者は過失運転致傷罪などの刑事責任を負うこともあります。またこの送迎が、会社の業務上行われたり、業務に付随して行われたりしたような場合には、運転者だけではなく、運転者に同業務を行わせていた会社に対しても、民法第715条使用者責任や、自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任を負います。

 

 この場合、被害者に対して運転者と会社がそれぞれ損害賠償責任を負うことになり、被害者はどちらに対しても生じた全ての損害について賠償請求できますが、賠償後の運転者と会社との間では、それぞれの負担割合に応じて分担することになります。

 

 そのため、どちらかが被害者に対して全額賠償した場合には、他方に対して協議、あるいは裁判所の判決等によって定められる負担割合に応じて求償することができます。

■リトルリーグなどの送迎の場合

 この点、会社の業務などではない場合でも、運転者の責任自体は変わりません。事故の発生について運転者に過失があれば、被害者に対する損害賠償責任が生じますし、また過失ある運転行為によって、とくに被害者に死傷の結果などが生じれば、刑事責任を負うことになります。

 

 しかし、リトルリーグなどの送迎の場合、保護者が善意で運転を行っていることが多く、通常はリトルリーグや他の保護者等に雇用されたり、命令されて行っているものではありません。

 

 そのため、業務上の運転のように、使用者にあたる存在は考えられない場合が多いといえますので、使用者責任は生じません。

 

 さらにこのような送迎は、運転する保護者の自家用車が使われることも多く、その運転者以外にいわゆる運行供用者責任を負う人や団体は存在しない場合が多数であるといえます。

 

 結局、質問のような送迎の場合、運転者の過失によって交通事故が起きて、被害者に損害が生じれば、運転者が自分一人で責任を負わなければならないことが多いといえます。

■まとめ

 以上のように、リトルリーグ等に保護者が善意で車を出すような場合に起こった交通事故では、その責任を負うのは運転者だけということになります。

 

 しかもこのような場合、一台の車で複数人を送迎することも珍しいことではないので、事故が生じた時に被害者が複数となることも多く、莫大な損害賠償額を負担しなければならなくなる可能性があります。

 

 質問のような送迎には、以上のようなリスクがあるため、運転にあたっては、必ず任意保険に加入しているかを確認し、万一の事故の場合、その保険がきちんと適用されるかについても確認をしておかなければなりません。

 

 そして事故の際に適用される保険に入っていない場合には、必ず加入しておくべきです。

 

 責任無制限の保険に加入することが最も安心であるといえますが、通常は保険加入の費用は、運転者が負担することになります。一時的なイベントの運転行為に対してかけることができる保険などを選んだり、またリトルリーグや、他の保護者と協議したりして、加入費用を負担し合うことも検討してもよいでしょう。

 

 またもちろん、交通事故を起こさないことが最も大事ですので、十分配慮して安全運転を行い、また車両の整備状況等も確認しておくべきです。

(執筆 清水伸賢弁護士)

>> 過去の安全管理法律相談へ

今日の安全スローガン
今日の朝礼話題

12月27日(金)

サイト内検索
運行管理者 安全運転管理者 出版物 教材

──新商品を中心に紹介しています



──ハラスメント、ビジネスマナー教育用DVDを好評発売中です

運行管理者 指導監督 12項目 トラック 貨物運送事業所
交通安全 事故防止に役立つリンク集
安全運転管理.COM 交通安全 事故防止 安全運転管理 運行管理 教育資料 ドライバー教育 運転管理

当WEBサイトのコンテンツの利用、転載、引用については「当サイトのご利用について」をご覧ください。

弊社WEBサイト、出版物においては「普通自転車」を「自転車」と表記しております。

詳しくはこちらをご参照ください。