さる4月8日、関東運輸局は千葉県野田市に本社をおく準大手貨物自動車運送事業者である関東西部運輸(株)の監査結果を公表し、2019年4月22日付で同社の運送事業許可を取り消すと発表しました。
同社ではすでに、「乗務時間等告示の遵守違反」「点呼の実施義務違反等」違反などを理由として、2018年7月18日から30日間にわたる事業停止処分を受けていました。
その処分に伴う「確認監査」を今年1月17日と23日の2回にわたって運輸局が実施した結果、「違法認定した行為が改善されない」と判断し10点の違反点数が付されました。
このため同社は累積違反点数が取消処分の基準である81点を2点上回る83点となり、事業許可の取消処分が決定しました。
■2年間の間に書類送検2回+
行政処分2回
多くのトラック運送事業者に対して、改善基準告示違反など重大違反を根拠に事業停止処分や車両の使用停止処分などが実施されていますが、400台規模のトラックを有する準大手運送会社の免許取消しは極めて異例の処分であり、代替物流の確保が難しいという問題が発生し注目されます。
同社は2017年5月に36協定を大幅に超過する最大246時間の時間外労働を行わせたことを理由に書類送検され、さらに同年11月に再び違反残業が発覚して書類送検されました。
発覚の端緒は、2015年に心臓疾患などで運転者2人が相次いで死亡したことにあります。
2度の書類送検を根拠に監査が実施され、2018年7月に今回の確認監査の理由となった30日間の事業停止処分が下りました。
そしてさらに同社は、2018年12月にも他の7営業所で法令違反を理由に3日間の事業停止処分を受けていました。
このため、すでに累積点数が73点という危険水域に達していたにもかかわらず、その後も違法な労働環境や運行状況を改善できなかったわけです。
同社ではトップが先頭に立って「コンプライアンス委員会」などを設置し、社内対策を熱心に講じてきたということです。それでも違反状況を改善できなかったという結果は、やはりこれまでの取引のしがらみから荷主や元請けの要求を断りきれなかったことが原因と思われます。
他山の石として運送事業者が肝に銘ずべきなのは、コンプライアンスを守るといっても取引先の協力があって初めて可能であり、荷主や元請けに主張すべき点を勇気をもって要請しなければ、運転者の生活と安全を守れない時代になっていることを示しています。
違 反 事 項 | 処分根拠法令 |
・乗務時間等「改善基準告示」の遵守違反 |
貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項 |
・点呼の実施義務違反等 |
貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条 |
・運行指示書の記載事項義務違反 |
貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の3 |
・運転者に対する指導・監督の義務違反 |
貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項 |
・事業計画事前届出違反 |
貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条第3項 |
──以上5件(本社営業所) | 行政処分により本社営業所に付された違反点数10点 |
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