2019年12月1日から携帯電話使用等の罰則が厳しくなりますが、その詳細を教えてください。また「交通の危険を生じさせた場合」というのは、「事故を起こした場合」と言い換えても良いのでしょうか?
令和元年6月5日に交付された、道路交通法の一部を改正する法律では、歩行補助車等及び軽車両に係る規定の整備や、運転免許証の再交付申請に関する規定の見直しなどの改正がされましたが、大きな改正点は、運転中の携帯電話等の使用に対する罰則が重くなったことです。
携帯電話等の画面を見ながらの運転を原因とする事故は、近年増加の一途をたどっており、より厳しい処罰を科することで、このような運転をさせないようにするものといえます。また、これに伴い、これらの違反に関する反則金や、基礎点数の引き上げも行われています。
これらの規定は、本年12月1日から施行されます。
まず、そもそも携帯電話使用等の規定は、道路交通法71条の5の5において、運転者の義務として定められています。
同条による義務の内容は、自動車等を運転する場合には、停止している時を除き、原則として携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと、というものです。
本改正の前までは、同条の規定に違反した者の場合(以下「携帯電話等保持の場合」といいます。)の罰則は、五万円以下の罰金でしたが(旧法120条11)、改正により六月以下の懲役又は十万円以下の罰金と重くなりました(法118条3の2)。
また、71条の5の5の規定に違反し、よって交通の危険を生じさせた場合(以下「交通危険の場合」といいます。)の罰則は、改正前は三月以下の懲役又は五万円以下の罰金でしたが(旧法119条)、改正により、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金と重くなっています(法117条の4第1号の2)。
なお、交通の危険の場合に、その生じた危険が原因で交通事故を起こして人を死亡させ、又は傷つけた場合が、免許の効力の仮停止の対象とされました(法第103条の2第1項2号)。
改正により、携帯電話等保持の場合の反則金の限度額(※)が、大型自動車等については1万円だったものが5万円に、普通自動車等については8千円が4万円に、小型特殊自動車等については6千円から3万円に引き上げられました(法別表2)。
携帯電話等保持の場合の具体的な反則金の金額も、大型車については7千円から2万5千円、普通車については6千円から1万8千円、二輪車については6千円から1万5千円、原付車については5千円から1万2千円とされています(道路交通法施行令別表第6)。
また、改正前は反則行為であった交通危険の場合については、改正により非反則行為となりました。すなわち、行政処分として反則金を支払うことで刑事処分を免除されるものではなくなりました。
※反則金の限度額・・・各反則行為について、政令で定めうる反則金の上限額
さらに、交通の危険の場合の基礎点数は、改正によって2点から6点に引き上げられたため、交通の危険の場合は免許停止となります。
携帯電話等保持の場合でも、基礎点数は1点から3点となりました(令別表第2)。
上述の免許の効力の仮停止(法103条の2第1項2号)の規定を細かく見ると、「71条の5の5の規定に違反し、よって交通の危険を生じさせた者」が違反行為をし、それに「よって交通事故を起こして人を死亡させ、又は傷つけた場合」とされています。
すなわち、法律の規定上は、「交通の危険を生じさせた」からと言って、必ずしも「交通事故を起こした」ことは前提とされていません。
そのため、法律の規定上は、交通事故が起こっていなかったとしても、「交通の危険を生じさせた」場合とされることもありうることになります。
いわゆる「交通事故」が起きれば当然交通の危険は生じているといえるので、実際に摘発される事例は交通事故が生じた場合が多いと思われます。
しかしながら具体的に衝突や転倒等が無くても、例えば著しく蛇行して他の車の急停車を誘発したり、車線から大幅にはみ出したりなど、文字通り「交通の危険を生じさせた」といえる場合には、対象となる場合もあると考えられます。
(執筆 清水伸賢弁護士)