街中にある点字ブロックの上に、自転車を駐輪している光景をよく目にします。このような行為は許されるものではないと思いますが、具体的な罰則はあるのでしょうか?また白杖を利用している視覚障害者の方もよく目にしますが、万が一、視覚障害者の方と事故を起こした場合、通常の交通事故よりも責任は重くなるのでしょうか?
視覚障害を含む身体障害者の公共交通に関する法律は、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律や、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律などがあります。
いわゆる点字ブロックは、正式名称を視覚障害者誘導用ブロックといいますが、発祥は日本の岡山県で1967年の3月に県立岡山盲学校近くの交差点に230枚が設置されました。その後、徐々に普及が進み、現在では日本のみならず、75か国以上で導入されるまでになっています。
さて、同ブロックについては、「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準 を定める省令」(2006年12月19日国土交通省令第116号)第34条に定められています。
同条では、第1項で歩道や立体横断施設の通路等、視覚障害者の移動等円滑化のために必要であると認められる箇所に、同ブロックを敷設する旨が記されています。
第2項でブロックの色は黄色その他の周囲の路面との輝度比が大きいこと等により当該ブロック部分を容易に識別できる色とすること、第3項でさらに必要な箇所に音声による案内設備を設けるとの規定がされています。
しかしながら、同ブロック上に自転車や物を置いたことについての罰則規定などはありません。
そのため、いわゆる点字ブロック上に自転車を駐輪していたとしても、現状では同行為は法律によって処罰されるものではなく、マナーやモラルには反するものに留まることになります。
ただし、同行為自体を処罰する規定がないというだけであり、歩行してきている視覚障害者の存在を知ってあえて点字ブロック上に物を置いて転倒等させたりすれば、傷害罪等が成立しうることになります。
過失で同ブロックの上に自転車や物を置いていた場合でも、当該視覚障害者が転倒等した際の状況等によっては、民事上の損害賠償責任が生じることもありえます。
道路交通法第14条は、子どもや高齢者、身体障害者等の道路通行について定めており、その1項では、視覚障害者が道路を通行する場合には、白杖を携え、または盲導犬を連れてなければいけないとしています。
これにより、視覚障害者の安全を守ることができ、また周囲の道路通行者から見ても、通行の際に注意を喚起することができると考えられます。
道路通行においては、一般的に通行の際に、当然これらの子どもや高齢者、障害者等の保護の要請がありますので、障害者との間で交通事故が生じた場合には、その過失割合は、通常の場合と比べて障害者にとって有利に判断されます。
具体的には当時の道路の状況や事故原因等によりますが、障害者ではない場合と比べると、概ね5%~20%程度過失割合が障害者にとって有利に判断されることが一般的です。
運転者としては、周囲に白杖を持ち、あるいは盲導犬を連れて歩いている人を認識した場合、よりその人の安全に注意して運転すべきです。
注意義務の程度も通常に比べて重くなるといえ、交通事故が生じた場合には、責任の程度も重くなると考えられます。
(執筆 清水伸賢弁護士)