国土交通省は、路線バスのバス停が横断歩道や交差点のそばにあるため、歩行者が死角に入って危険を誘発する恐れがあるとして調査を実施しています。
このほど、36道府県でこうしたバス停が計7,325か所にのぼったと公表し、安全対策を急ぐとともに、今後残る11都府県分についても、調査がまとまり次第公表するとしています。
同省では、全国約40万箇所のバス停について、危険度が高い順に以下のような基準で3ランクに分類する調査を実施しています。
36道府県の危険なバス停の内訳は、Aが17%の1,228か所、Bが56%の4,116か所、Cが27%の1,981か所となっています。
Aランクに分類されたバス停では、バスの前方を乗客が横断しようとして追い越そうとした車などにはねれれるケースが8件報告されています。
■自社路線バス停の危険度チェックを独自に実施しましょう
同省が調査したバス停に限らず、事業所の運転者が気づいている停留所での危険があるかも知れません。この機会に自社路線のバス停における安全性について、運転者を交えて調査・検討してはいかがでしょうか。
バス停の移設等はバス会社の一存ではできない場合が多く、自治体や地元警察との調整が必要であり、道路状況によっては移設がすぐには難しい状況がみられます。また、バス停の方が先にあって後で横断歩道ができたケースも少なくありません。
しかし、危険ポイントを具体的に検討することで、乗客が不便にならない範囲で停止場所を調整したり、「降車後バスの前後を横断するのは危険です。バスが発車した後、左右をよく確認してから横断するようご協力ください」といった乗客への積極的なアナウンスの動機づけとなるなど、運転者の安全教育に結びつくと考えられます。
【続報──全国で危険なバス停が計1万か所を超える】
国土交通省による全国調査のまとめが、3月下旬に公表されました(全国のバス停およそ40万か所の調査)。交通事故の危険性があるバス停は全国で約1万か所に上り、危険度に応じて以下の3段階に分類されています。
同省では、地元の自治体や警察、バス会社などとバス停の移設や廃止などを協議して対策を進めるとともに、調整には時間がかかることから、歩行者に注意を促すよう求めています。
これを受けて、各地のバス会社では対応を始めています。例えば以下は徳島県の例。
・県内ではAに該当するバス停が30か所、Bが118か所、Cが55か所あった。
・徳島市交通局と徳島バス、四国交通、徳島バス南部、徳島バス阿南の4社に対するNHK徳島
放送局の取材に対して、いずれも指摘を受けたバス停を別の場所へ移設する方針を明示。
・全141か所と最も多かった徳島バスは、バス停に注意喚起の掲示を設置するとともに代替地
の選定も進め、年内に移設を完了させる方針。
日時 | 事故の概要 |
2018年3月 |
●滋賀県大津市/20歳代の乗客がバスの前方から道路を横断しようとした際、 バスを追い越してきた車にはねられ、1か月の重傷を負った。 |
2018年6月 |
●高知県高知市/路線バスから降車し、前方にある横断歩道を徒歩で渡って いた9歳の男児が、バスを追い抜こうとした軽乗用車にはねられ重体に(※)。 |
2018年9月 |
●神奈川県横浜市/横断歩道をまたいで停車したバスの前を横断した小学校 5年の女児が、ワゴン車にはねられ死亡した。 |
2020年7月 |
●静岡県伊東市/停車したバスの前方にある横断歩道を渡っていた小学2年の 女児が、バスを追い越してきた車と接触し軽傷を負った。 |
※高知市の事故現場は実際のバス停からは離れており、バス運転者は児童が長い距離を歩かなくて
すむように配慮して、横断歩道近くで停車させていて事故が発生した。
※編集部注──バス停留所の安全対策は各地方運輸局に情報ページがあり、対策の進捗状況に応じて情報が
更新されています。
左の図は、国土交通省がバス停留所安全性確保対策のため、危険なバス停抽出の参考として各運輸局の自動車交通部に配布した資料の一部。
運輸局では、バス停留所安全性確保合同検討会を組織して、警察本部、道路管理者、バス事業者と協議し対策を継続している。
図には横断歩道のみが描かれているが、実際には交差点でも同じような観点で調査が行われた。
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