2020年12月から今年1月にかけての大雪などで、関越自動車道や北陸自動車道では非常に多くの車両が路上で立ち往生し、大規模な交通混乱が発生しました。
これらの事案を踏まえ、国土交通省はこのたび関連通達を改正し、バスやトラック運送事業者に対して、冬用タイヤの安全性を確認することを義務づけ、ルールに違反して未確認のまま事故等を起こした場合は事業者を処分することを決めました。
「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」の規定を改正したもので、適正な冬用タイヤを使用しているか確認することを義務づけました(公布・施行は2021年1月26日)。
具体的には、雪道を走行する可能性がある場合は、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤを装着することはもちろん、
が定められました(乗合バス、貸切バス、トラック運送事業者に限る)。
自動車のタイヤは残り溝が保安基準の限度である1.6mm以上あることが求められています。しかし、1.6mm以上の溝があっても残り溝が全体の50%を下回った場合、冬用タイヤにはトレッドにプラットホームが現れるようになっていて、「冬用タイヤとしての使用限度を越えた」としてメーカーが交換を求めています(50%は多くの国内メーカーが定める基準)。
保安基準上は乾燥路の走行を制限しているものではありませんが、都道府県の規定する道路交通法施行細則では「(積雪・凍結路では)チェーン使用か、全輪に接地面の突起部が50パーセント以上摩耗していない冬用タイヤ装着に限る」と明記している地方があります。
同省では、摩耗した冬用タイヤの使用で路上スタックやスリップが起こって大規模な立ち往生に結びついていると判断し、新たなルール化に踏み切ったものです。ルールに違反して確認を怠り、雪道事故やスタックによる路上滞留などが発生した場合は、事業者への監査を実施して処分するとしています。
*図は、国土交通省WEBサイト「冬用タイヤの安全性を確認することをルール化しました」より
従来からあるように、トラック・バスなどの事業用自動車が雪道で冬用タイヤやチェーンの未装着による事故や滞留などを引き起こした場合、当然、運輸局の監査や行政処分の対象となります(点検整備義務の違反)。
今回の改正では、さらに冬用タイヤの摩耗劣化にも十分に注意することを義務化したものです。さすがに夏用タイヤで雪道を走行する事業者は減ったものの、経費節減からスタッドレスタイヤの更新を先延ばしにしているケースは少なくないと考えられます。
スリップ事故が発生し、処分を受けてからでは遅いので、定期点検時にタイヤの溝をよくチェックして、早めに交換するスケジュールを立てておきましょう。
なお、立ち往生事例を受けて、国土交通省では2021年1月に警察庁や自動車関係団体とともに対策の勉強会を設置し、立ち往生の原因や防止策について技術的に分析・検討を進めています。
その一環として、勉強会で得られた知見を基に大型車を使用する運送事業者などを対象に、冬用タイヤ・チェーンの注意事項をまとめたパンフレットを作成しました。
パンフレット記載の注意事項は、以下のポイントです。
※パンフレットは、国土交通省のWEBサイトからダウンロードできます(2021.2.19更新)。
小冊子「雪道・凍結路の危険をイメージしよう」は、冬道を走行するドライバーに対して、安全な運転方法を指導するのに最適の教材です。
雪道を走行するにあたって、必要な知識が身についているか、また危険な行動をしていないかを「はい」「いいえ」でチェックすることにより、冬道走行の基本を学んでいただくことができます。
バスドライバー教育用テキスト「バス運行管理者のための指導・監督ツール」は、旅客自動車運転者に対する指導・監督の指針13項目にそった内容で編集されています。
点呼時や安全教育の機会をとらえて、簡単に各項目について指導できるように、大きなわかりやすいイラストで解説し、キーワードで印象付ける内容となっています。
言葉だけでは伝わりにくい安全運転の知識や注意事項も、イラストがあればより具体的に危険ポイントをイメージすることができます。また、付属の教育記録簿を使用すれば、そのまま指導・監督の記録として保存できます。