国土交通省は、事業用自動車の運転者が疾病が原因で事故を起こしたり、運転を中断したりしたケースを2013年から2019年までの7年間にわたって分析した結果を公表し、健康起因事故が増加傾向であると警鐘を鳴らしています(2021年2月5日)。
2019年の健康起因による人身事故は23件、物損事故が66件発生し、事故には至らなかったものの運転を中断したケースは238件と合計で327件になり、2013年(平成25年)の2.4倍に増加しています。
また2019年までの7年間に事故を起こしたり、運転を中断したりした運転者は、合わせて1,891人にのぼり、病気の内訳は心臓疾患が15%(275人)、くも膜下出血など脳疾患が13%(253人)、大動脈瘤などが3%(65人)、呼吸器疾患が6%(116人)、消化器疾患が5%(87人)、その他と不明が58%(1,095人)でした。
運転者の高齢化がすすみ体調不良に伴う事故が増加傾向にあることを踏まえ、同省では事業者に運転者の健康管理を徹底するよう呼びかけています。
*図は、国土交通省 事業用自動車健康起因事故対策協議会のWEBサイト掲載資料より引用しました。
健康起因事故を防ぐ対策として同省は、事業用自動車の運転者に脳の検診を受けてもらうスクリーニング検査のモデル事業を2018年度から実施していますが、その分析結果も公表しました。
分析によると、2019年にモデル事業に協力した運転者4,068人のうち、脳検診や精密検査で動脈瘤など「緊急性の高い異常な所見あり」とされた人は27人いました。
事業者が運転者の業務を近距離運行や別業務に変えるなど制限や配慮をしたケースが9件、受診指導や定期的な面談をしているケースが14件ありますが、残る4件について対応していないという結果でした。
「緊急性はないものの異常な所見あり」とされた人は200人いて、このうち53%(107人)は受診から半年以内に精密検査を受けましたが、42%(83人)は検査を受けていません。
また、2018年度から追跡調査をしている人では、「緊急性はないものの異常な所見あり」とされた人97人のうち36%(35人)は、受診からおよそ1年半がすぎても精密検査を受けていませんでした。
同省では、脳ドッグなどの取組みは運転者の意識向上や会社の健康管理の取組み増進につながると評価する一方、診断結果を受けての対応が容易ではなく、従業員の受診管理が難しいなどの問題点があると課題を指摘しています。
※国土交通省:「自動車運送事業者への脳健診普及に向けたモデル事業の結果」より
2021年2月11日沖縄県浦添市でダンプカーが中央分離帯を越えて対向車線に進入、若い親子2人が死亡し4人が重軽傷を負う多重事故が発生しました。
警察の調べで、他車のドライブレコーダー映像などから、ダンプカーが事故前に蛇行運転をしている様子が見られ、運転者(60歳)が衝突より少し前のトンネル付近ですでに意識を失っていた可能性があることが判明しています。
運転者は事故直後に意識不明の状態で、病院で脳内出血がみられることがわかりました。
警察は過労運転の疑いも視野に入れて勤務先の産廃会社を捜索し調査中ですが、今のところ勤務時間等に大きな問題はなかったようです。
沖縄県トラック協会は2月12日に会員事業所に対して「乗務前と乗務後に運転者の健康状態の確認を徹底することや、乗務前の車両点検、定期健康診断の実施徹底を求める」通知を出したことを明らかにしました。
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本チェックテストは、ドライバーが日頃の健康管理を振り返り、48に質問に「ハイ」「イイエ」で答えていただくことで、安全運転に必要な健康管理がどの程度できているかを簡単に知ることができる自己診断テストです。
具体的な健康管理の弱点を知ることができますので、自身の健康を守り安全運転に活かしていただくことができます。