令和2年度も終わりを迎えようとしています。
交通事故や違反などの実態を調査し、次年度の運転管理・指導に活かしてください。
コロナ禍の影響で交通量が減少したことから交通事故や死亡事故件数が減少傾向にあり、喜ばしい傾向と言えます。一方で慣れないマイカー通勤車やバイク利用者、自転車利用者が増えたことで新たな交通問題も生まれつつあります。
新年度の運行管理は未だ不確かな点もあるでしょうが、事業所の運行実態にあった管理・指導をすすめてください。
なお、そろそろ花粉症を抱える運転者の症状が出始める時期です。
症状の悪化が運転に支障をきたすことがないように配慮するとともに、花粉症症状で新型コロナウイルス感染の危険性が増すという指摘もありますので、注意を促してください。
■甘え・依存の心理を警戒しましょう
「だろう」運転は甘えから生じる
運転していると、つい交差交通は出てこないだろうとか、歩行者は自分を先に行かせてくれるだろうとか、自分の都合の良い解釈をして走行しようとしてしまうことがあります。
こうした「だろう運転」には、相手の好意を期待する甘えの意識が心の底にあり、急いでいるときなどそれが前面に出てきます。
甘えの心理から思惑違いとなり、相手が止まると思い込んで衝突するといった事故になりがちです。
このような思い込みを防ぐには、甘えの心理を自覚することが重要です。
そして、見ず知らずのドライバーや歩行者をなぜ根拠もなく信用して甘えることができるのか?と自問しましょう。信頼できるのは自分が実行する行為だけであり、自車が停止しなければ衝突しても不思議はない、と考える必要があります。
■右左折時などの安全確認を他者に依存しない
交差点通過時や右左折時など、安全確認をしないまま前車に続いて行こうとする車が少なくありません。
前車が行けるなら自車も大丈夫だろうと軽く考えての行動ですが、安全確認を他者に依存していては安全確保はできません。
実際に前車との車間距離が短い状態で追従して右左折したとき、ごく稀にその間隙を縫ってバイクや自転車等がやってくることがあります。
事故は正にそうした「稀な」ケースで発生しています。
たとえ前車が一時停止して安全確認をした後に発進した場合でも、自車がそのまま追従して安全だという保障はありません。
また、交通整理をする警備員が「行ってよし」の合図をした場合であっても、必ず自分の目で安全確認をするなど、安全確認を他者に依存しない習慣をつけてください。
■以下の項目をチェックし、すべてハイとなるように自らの態度を反省してください
・一時停止交差点では、完全に安全だと確認できるまでは発進しない
・交通警備員が自車の進入を合図してくれても、安全確認は自分でする
・対向直進車が減速した場合でも、待ってくれると思い込まない
・歩行者が立ち止まったとき、自車の通過を待つだろうと期待しない
・進路変更の合図を出したから後続車は待つはずだと信じ込まない
・対向自転車の速度が緩んでも、止まってやり過ごすだろうと期待しない
・高齢歩行者が「まさかこんな場所で横断しないだろう」と思わない
・前車が順調に右折しても安易に追従しないで、一時停止して確認する
・黄信号で前車が通過したとき確認しないで追従することはしない
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■車両使用実態を調査し、指導計画を立てよう
新型コロナ禍に見舞われた影響で、不要不急の車両使用が減ったため、交通事故が減少していると言われています。自社の実態はどうでしょうか?
各事業所における2020年度の車両運行の実態と交通事故・違反の状況を調査し、次年度の管理計画に活かしましょう。
また、マイカーやバイク・自転車による通勤者が増加していないか、リモート勤務の従業員については日常的にバイクや自転車などの利用が増えていないか、アンケート調査などを行って、実態をつかんでおきましょう。
調査を基に以下のような分析をして、課題や変更すべき点があれば対策を実行に移しましょう。
都市部での死亡事故多発に注意
2020年中の全国交通事故死者数は2,839人で前年を376人も下回り、11.7%減と大幅に減少しています。
しかし、東京都では死者数が増加し(22人増)、神奈川県も8人増、愛知県でもわずかしか減少していない(2人減)など、都市部での死亡事故の多発が特徴的でした。
警察庁では、交通量の減少によるスピード超過などが死亡事故に結びつく例が多かったと分析しています。
時速40キロ以上の事故ではとくに歩行者の死亡事故が急増するというデータがあり、スピードの出しすぎが横断歩行者などの死亡事故に結びついた例が目立っています。
国土交通省の分析によると、緊急事態宣言が発令された2020年4~5月に東京23区内の一般道の平日平均渋滞距離は前年同期比39%も減少し、一方この間、平日に都内を走行する車の平均速度は時速35~40キロの水準で推移しました。前年よりも時速にして5~10キロ程度もスピードが上がっていたということです。
交通閑散時は逆に速度の出しすぎに注意するなど、安全指導の力点をスピード抑制と歩行者の安全確認に置くよう指導計画を立てましょう。
今年はとくに花粉症予防を徹底
■新型コロナ対策としても重要
すでに、一部の地方ではスギ花粉などの飛散が始まり、花粉症の人には悩ましい季節となっています。
本格的な花粉の飛散が始まるのは、北九州で2月下旬から、四国・中国・近畿・南関東などで3月上旬から、関東北部から東北地方で3月下旬からと予測されていますが、今年はとくに徹底した予防対策をとっておきましょう。
というのは、花粉症に伴う症状によって新型コロナウイルスに感染する危険性が高まると考えられるからです。
目がかゆかったり、鼻水が気になると目や鼻を度々手で触ってしまいますが、ウイルスは目、鼻、口などの粘膜から侵入することで感染するため、リスクが高まります。
また、頭痛、鼻水、鼻づまりなど、新型ウイルス感染症の初期症状と花粉症の症状は似ています。PCR検査をしないとウイルスなのか花粉症なのかは判別できないのですが、自分は花粉症だからいつもの症状だろうと考え感染の初期症状を見落とす危険があります。
早めに耳鼻咽喉科などを受診し、花粉症が悪化しないような予防措置を徹底しておきましょう。
■WEB検診でも受診が可能に
耳鼻科などの専門医は「花粉症予防薬の注射や服用、ゴーグル着用など早めの対策を心がけましょう」「発熱や強いけん怠感がある場合は、新型コロナ感染を疑って早めにかかりつけ医などに相談してほしい」と呼びかけています。
「症状があるとなかなか受診できない」と思い込まないで、WEB問診やオンライン診療などを行う専門医もありますのでネット検索や電話で相談してみましょう。
処方歴や過去のカルテがあれば、診断後にWEB経由で花粉症薬などの処方をしてくれる医師があります。また、発熱や味覚異常などの症状から医師が新型コロナ感染が疑わしいと判断すれば、相談センターへの連絡やPCR検査実施を促してくれます。
一人で悩まないで早めに相談することが重要です。
なお、ゴーグルやフェイスガード、携帯用消毒液などが入手しやすくなっていますので、この時期、人前や屋外でためらわずにフェイスガードなども着用し、目等がかゆくてどうしてもかくときは、必ず手指を消毒することが大切です。
*この記事は、日本耳鼻咽喉科学会のWEBサイトなどを参考にしました。
春の全国交通安全運動が4月6日(火)から15日(木)までの10日間に渡って実施されます。
事業所では、地域の交通関係団体の主催する活動などに積極的に参加するため、運転者啓発資料の入手など交通安全運動の準備を進めましょう。
今年の運動の全国重点として、
(1)子供と高齢者を始めとする歩行者の安全の確保
(2)自転車の安全利用の推進
(3)歩行者等の保護を始めとする安全運転意識の向上
があげられています。
運転者に対して、歩行者の安全確保の重要性を指導し、とくに子供や高齢者などの横断歩道における優先の徹底と歩行者に対する思いやりのある模範的な運転の推進をはかることが求められています。
信号がない交差点でも歩行者の横断を優先するなど、運転者の交通ルール遵守の徹底が重要です。
また、運転中のスマートフォン等の使用等の危険性の周知とあおり運転などへの罰則強化についての広報啓発活動を行うことを企画しましょう。
なお、交通事故死ゼロを目指す日は、4月10日(土)に設定されています。
詳しくは、内閣府のWEBサイトを参照してください。
■年度末の車検場は大混雑します
年度末に向けて、社有車の検査、新車登録事務が必要かどうか早期に調査し、手配・実施しておきましょう。
とくに3月は例年、運輸支局の検査・登録窓口が混雑を極めて非常に時間がかかります。3月末の車検事務を避けましょう。
2020年3月は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを防止するため、検査証の有効期間が2月28日から3月31日までの自動車に対して、有効期間を4月30日まで伸長する措置が講じられました。
今年も伸長する可能性が高いでしょうが、早めに予約をしておくことが得策です。
検査予約はインターネットでも可能です。
過去7年間で健康起因事故が2.4倍
国土交通省は、バスやトラック、タクシーなど事業用自動車の運転者が疾病が原因で事故を起こしたり、運転を中断したりしたケースを2013年から2019年までの7年間にわたって分析した結果を公表し、健康起因事故が増加傾向であると警鐘を鳴らしています。
2019年の健康起因による人身事故は23件、物損事故が66件発生し、事故には至らなかったものの運転を中断したケースは238件と合計で327件になり、2013年(平成25年)の2.4倍に増加しています。
また2019年までの7年間に事故を起こしたり、運転を中断したりした運転者は、合わせて1,891人にのぼり、病気の内訳は心臓疾患が15%(275人)、くも膜下出血など脳疾患が13%(253人)、大動脈瘤などが3%(65人)、呼吸器疾患が6%(116人)、消化器疾患が5%(87人)、その他と不明が58%(1,095人)でした。
こうした分析を踏まえ、同省では事業者に運転者の健康管理を徹底するよう呼びかけています。
脳検診モデル事業を分析
健康起因事故を防ぐ対策として同省は、事業用自動車の運転者に脳の検診を受けてもらうスクリーニング検査のモデル事業を2018年度から実施していますが、その分析結果も公表しました。
分析によると、2019年にモデル事業に協力した運転者4,068人のうち、脳検診や精密検査で動脈瘤など「緊急性の高い異常な所見あり」とされた人は27人いました。
事業者が運転者の業務を近距離運行や別業務に変えるなど制限や配慮をしたケースが9件、受診指導や定期的な面談をしているケースが14件ありますが、残る4件について対応していないという結果でした。
「緊急性はないものの異常な所見あり」とされた人は200人いて、このうち53%(107人)は受診から半年以内に精密検査を受けましたが、42%(83人)は検査を受けていません。
また、2018年度から追跡調査をしている人では、「緊急性はないものの異常な所見あり」とされた人97人のうち36%(35人)は、受診からおよそ1年半がすぎても精密検査を受けていませんでした。
同省では、脳ドッグなどの取組みは運転者の意識向上や会社の健康管理の取組み増進につながると評価する一方、診断結果を受けての対応が難しく、従業員の受診管理が難しいなどの問題点があると課題を指摘しています。
(※詳しくは、国土交通省の事業用自動車健康起因事故対策協議会のWEBサイトを参照)
他社の健康職場づくりの実践を参考にしよう
全日本トラック協会では、トラック運転者の過労死等根絶への取組みとして『過労死等防止計画』を策定し、「2022年度までに脳・心臓疾患による過労死等の発症を20%削減」すること等を目標に掲げています。
具体的には、長時間労働の削減、健康管理強化などが中心ですが、このたびこの一環として、積極的に従業員の健康管理に取り組んでいるトラック運送事業者の優良事例を紹介した、『健康職場づくり-事業者訪問PART2』を発行し、WEBサイトで紹介しています。
事業規模数十人の中小業者による活動事例も多く、創意と工夫あふれる具体的な実践例は他の事業者が取り入れやすい内容となっています。
同協会では、広く全国のトラック運送業界の事業者が参考にして、積極的に健康管理に取り組んでほしいと呼びかけています。
*詳しくは、同協会のWEBサイトを参照してください。
日 付 | 行 事 等 |
1日(月) ~31日(水) |
・自殺対策強化月間──政府は、毎年3月を自殺対策強化月間に設定し、啓発活動や支援策を重点的に実施しています。悩みを抱えた人たちに広く支援の手を差し伸べていくことにより「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指しています。事業所でもストレスチェックなどを活用して、自殺のない職場をめざしましょう。 |
1日(月) ~7日(日) |
・車両火災予防運動(春季全国火災予防運動)──消防庁と 国土交通省の共同主唱。車両交通の関係者や利用者の火災予防意識の高揚と車両火災防止のため、全国火災予防運動とあわせて同期間に実施されます(車両火災原因のトップは排気管ですが、大型バス等では電気系統の劣化等も多くなっています)。 また、コロナ禍で使用機会の増えている消毒用アルコールの安全管理の徹底をすすめ、バスの車内放置などに留意しましょう。 |
3日(水) |
・ひな祭り(桃の節句)/耳の日 |
5日(金) |
・啓蟄 |
6日(土) |
・「36協定」の日──すべての職場における「時間外・休日労働に関する協定」=「36(サブロク)協定」を見直してより良い働き方を実現するため日本労働組合総連合会(連合)が制定。労働基準法の改正に伴い、時間外労働(残業)の上限規制を守るよう訴えています。 |
7日(日) |
・消防記念日 |
7日(日) |
・運行管理者試験(令和2年度 第2回試験)
──詳細は公益財団法人 運行管理者試験センターのWEBサイトを参照 |
8日(月) |
・国際女性デー─国連は1975年(国際婦人年)以来この日を「国際婦人デー」と定め、国連事務総長が女性の十全かつ平等な政治・社会参加の環境を整備するよう、加盟国に対し呼びかけています。近年はこの日に合わせた#MeToo運動の集会や性別を問わない性被害者に関する講演会なども企画されています。 |
9日(火) |
・3月の製品安全点検日
経済産業省は、毎月第二火曜日を「製品安全点検日」として製品の安全な使用法やリコール製品等について情報提供・注意喚起を行っています。 |
11日(木) |
・東日本大震災の日──2011年の震災から10年がたちました。節目の年ですが新型コロナウイルスの感染予防に配慮してオンライン参加なども取り入れ、政府主催の追悼式典のほか合同追悼式などが被災地を中心に実施されます。 |
14日(日) |
・ホワイトデー |
17日(水) |
・八本松トンネル居眠事故から5年──2016年のこの日午前7時半頃、東広島市の山陽道下り線「八本松トンネル」内でトラック運転者の過労運転が原因で12台が絡む多重衝突事故が発生しました。この事故で71人が負傷し、2人が亡くなり、運転者は懲役4年の実刑、運行管理者も逮捕され過労運転の下命容疑で起訴され有罪が確定、法人としての会社も有罪となりました。 |
20日(土) |
・春分の日 |
23日(火) | ・世界気象デー──1950年のこの日に世界気象機関条約が発効したことを記念して世界気象機関(WMO)が制定しました。今年は国連の持続可能な開発のための海洋科学10年(2021-2030)を踏まえ「海洋と気候、天気」がテーマ。 |
25日(木) | ・電気記念日──明治11年(1878年)3月25日、工部省電信局が東京・木挽町に電信中央局を設けてこの日に開局祝賀会を開催、会場で日本初の電気の灯り(アーク灯)を点灯したことにちなみます。 |
3月上旬 | ・令和2年中の労働災害の動向について(厚生労働省) |
3月上旬~ |
・37回 安全衛生標語の募集──中央災害防止協会。 「2021年度 年末年始無災害運動標語」、「2022年 年間標語」の募集。 締切りは4月末。詳細は、同協会のWEBサイトを参照。 |
2月上旬~4月末 |
・2021年度の「安全衛生標語」募集──陸上貨物運送事業労働災害防止協会。「荷役」「交通」「健康」の3部門で募集し、秋に開催する全国大会で顕彰。締切は4月末、詳しくは、同協会のWEBサイトを参照。 |
2020年12月~ 4月30日 |
・令和2年度 安全衛生教育促進運動──中央労働災害防止協会(中災防)が提唱し展開する活動。年間計画を定めて、雇入れ時教育、特別教育などの義務付けを踏まえ安全衛生教育の確実な実施を促しています。特にコロナ禍で安全衛生教育が十分行えなかった状況の改善を求めています。 |
3月上旬 |
・令和2年中の交通事故発生状況(警察庁) |
3月下旬 |
・2021(令和3)年使用の交通安全スローガンポスターデザイン入選作の発表 (毎日新聞社) |
~3月 |
・貸切バス、観光バスを対象とした街頭監査 年末から貸切・観光バス発着場等における街頭監査が実施されています。平成28年度より街頭監査に関係する処分は強化されています。また貸切バスについては平成29年度より覆面添乗調査も実施されています。 |
◆3月の日没時刻 (国立天文台 暦計算室による)
1日(月) | 福岡 18:15 |
大阪 17:54 |
東京 17:36 | 札幌 17:24 |
15日(月) |
福岡 18:26 |
大阪 18:06 |
東京 17:48 |
札幌 17:41 |
31日(水) | 福岡 18:38 |
大阪 18:18 |
東京 18:02 |
札幌 18:00 |
3月になると、春のおとずれとともに日の長さが実感できますが、午前6時台前半は日が出ていない地域もあります。早朝に運転する場合はライト点灯を意識してください。
あなたが点灯することで歩行者や自転車などからもあなたのクルマが確認しやすくなります。ライト活用を意識して、周囲の警戒を徹底しましょう。
薄暮・夜間には横断歩道の発見遅れが目立ちます。前方の路面にダイヤマークを見かけたら横断者の存在を予測しましょう。
「おもいやりライト運動」は、夕暮れ時のヘッドライト早期点灯をドライバーに呼びかけて交通事故を削減する運動です。全国で点灯活動を展開する運転者が増えています。
また、JAF(日本自動車連盟)も早期ヘッドライト点灯キャンペーンを展開しています。
JAFのインターネットWEBサイトではライト点灯
に関して様々な情報提供が行われます。
※詳しくは JAF Safety Light
のサイトを参照してください