国土交通省は、事業用自動車の運転者が疾病が原因で事故を起こしたり、運転を中断したりしたケースが増加していることを踏まえ、このたび、関連通達を改正し、健康診断の未実施など健康状態の把握を行わないで重大事故などの悪質な違反が発生した場合は、行政処分の対象に追加します(2021年6月1日施行)。
「自動車運送事業者に対する行政処分等の基準」の改正で、初違反で40日車、再違反で80日車という比較的厳しいものです。
■健康起因事故が7年間で2.4倍
国土交通省の調査によると2015年から2019年までの7年間に健康起因事故を起こしたり、体調不良で運転を中断したりした事業用自動車の運転者は、合わせて1,891人にのぼり、病気の内訳は、心臓疾患が15%(275人)、くも膜下出血など脳疾患が13%(253人)、大動脈瘤などが3%(65人)、呼吸器疾患が6%(116人)、消化器疾患が5%(87人)、その他と不明が58%(1,095人)でした。
事故件数は増加基調にあり、2015年の135件から2019年は327件と2.4倍に増えていることを同省は重視し、健康管理の徹底を呼びかけています(※)。
2020年12月には、コロナ禍で健康診断を延期していたタクシー運転者が心不全で意識を失って死亡事故を起こした例が報告されています。
また、最近では2021年2月11日に沖縄県浦添市で、産廃事業所に勤務する大型トラックの運転者が運転中に脳内出血を発症して対向車線に突っ込む事故を起こし、26歳の若い母親と乳児の2人が即死、3人が重軽傷を負っています。
■脳・心臓疾患、意識障害事故が対象
なお、今回の改正で運転者の「健康起因事故」として処分対象となっているのは、「脳疾患・心臓疾患及び意識障害により生じた重大事故」とされていますので、運転者が走行中に腹痛などを覚えて前かがみとなり、減速した前車に追突し物的損害が発生するといった程度の事故は、対象に含まれないと考えられます。
※事故数値は国土交通省 事業用自動車健康起因事故対策協議会のWEBサイト掲載資料より引用しました。
以下の違反を新たに行政処分の対象に追加 | ||
未受診者による健康起因事故が発生したもの | 初違反: 40日車 | 再違反: 80日車 |
※(注1)健康起因事故とは、運転者が脳疾患、心臓疾患および意識喪失により生じた重大事故をいう。
※(注2)事業者が、過去1年以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させていた場合などに適用。
1 疾病、疲労等のおそれのある乗務
① 未受診者1名 | 初違反: 警 告 | 再違反: 10日車 |
② 未受診者2名 | 初違反: 20日車 | 再違反: 40日車 |
③ 未受診者3名以上 | 初違反: 40日車 | 再違反: 80日車 |
2 疾病、疲労等による乗務 |
初違反: 80日車 | 再違反: 160日車 |
3 薬物等使用乗務 | 初違反: 100日車 |
再違反: 200日車 |
2021年2月11日沖縄県浦添市でダンプカーが中央分離帯を越えて対向車線に進入、若い親子2人が死亡し4人が重軽傷を負う多重事故が発生しました。
警察の調べで、他車のドライブレコーダー映像などから、ダンプカーが事故前に蛇行運転をしている様子が見られ、運転者(60歳)が衝突より少し前のトンネル付近ですでに意識を失っていた可能性があることが判明しています。
運転者は事故直後に意識不明の状態で、病院で脳内出血がみられることがわかりました。
警察は過労運転の疑いも視野に入れて勤務先の産廃会社を家宅捜索するなど捜査中ですが、今のところ勤務時間や労働日数等に大きな問題はなかったようです。また、ダンプカーの車体に不具合は認められませんでした。
沖縄県トラック協会は2月12日に会員事業所に対して「乗務前と乗務後に運転者の健康状態の確認を徹底することや、乗務前の車両点検、定期健康診断の実施徹底を求める」通知を出したことを明らかにしました。
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本チェックテストは、ドライバーが日頃の健康管理を振り返り、48に質問に「ハイ」「イイエ」で答えていただくことで、安全運転に必要な健康管理がどの程度できているかを簡単に知ることができる自己診断テストです。
具体的な健康管理の弱点を知ることができますので、自身の健康を守り安全運転に活かしていただくことができます。