先日、幹線道路を自家用車で走行していましたら、突然対向車線の切れ目から車がUターンしてきました。この道路は転回禁止場所だったのですが、このような無謀とも言えるUターンが原因で事故になったときの過失割合や責任について教えてください。
一般に「転回」には、Uターンとスイッチターン(バックで路地などに入り、前進後右折をして進行方向を転換する)がありますが、ここではUターンを前提として述べます。
いわゆるUターンは、1回の操作で短時間内に自車の進行方向を180度変える転回です。通常は相反する方向の道路二車線を使用するものであり、事故が生じる危険も高いため、慎重に行う必要があります。
道路交通法の規程も、右左折や横断・後退等、事故が生じる危険が高い運転行為と一緒に制限がされています。
転回の禁止等については、道路交通法25条の2に規程があり、第1項では「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない」としています。
また第2項では、「車両は、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはならない」とされています。
このように、転回について同法第1項は「歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるとき」、いわゆる転回危険場所における転回を禁止しており、第2項は、転回禁止場所における転回を禁止しています。
なお、転回禁止場所については、標識等で転回禁止場所であることが表示されていることが一般ですが、転回危険場所は、道路状況に応じた制約であり、標識等で明示されているわけではありません。
それぞれの違反行為には、罰則も定められており、第1項違反の行為については3月以下の懲役又は5万円以下の罰金(同法119条1項2号の2)、第2項違反の行為については5万円以下の罰金が定められており(同法120条1項4号)、第2項の違反行為は過失であっても5万円以下の罰金が定められています(同条2項)。
また、転回を開始する際には、30m手前から合図をしなければいけないとされています(同法53条1項、2項、道路交通法施行令21条)。
このように、転回は道路交通法上も制限されている危険が生じやすい行為ですので、転回によって事故が発生した場合の過失割合も、転回した運転者が高く認められるようになっています。
他の運転者にも、一般的な安全運転義務(道路交通法70条)がありますので、直ちに全ての事故の責任が転回した車の運転者にあるとされるわけではありませんが、その態様によっては100%の責任を負う場合もあります。
具体的な過失割合については、以下のようになっています。
まず転回における事故は、大きく分けて、
があります。どちらも危険が生じやすい態様ですので、1の場合、転回した車と他車の過失割合は、基本的に80:20とされており、2の場合は、70:30とされています。
1の方が割合が高くなっていますが、転回中は突然後続車の進路を塞ぐような形になることが多く、転回する車の運転者に対してより高度の注意義務を負うものと考えられます。
1でも2でも、他車に速度違反や過失等があれば、転回した車の過失割合は10%~20%減じる場合があります。逆に転回した車にさらに過失等があれば、その過失割合はさらに高くなります。
例えば、転回危険場所での転回や、合図をせずに転回した場合、その他著しい過失(通常想定されている過失の程度を超えるような過失)がある場合は、過失割合は10%増加するとされています。
さらに、転回禁止場所での転回や、重過失(著しい過失よりさらに重い、故意に比肩する重大な過失)がある場合には、20%増加するとされますので、1の場合には100%責任を負うことになります。
質問のケースでは、幹線道路で突然対向車線の切れ目から車がUターンしてきていますので、他の車両も通常は自動車が出てくると想定しておらず,他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがありますし,また見通しも悪い状況であることも考えられます。つまり、転回危険場所の可能性が高く、また事故が生じた場合、著しい過失も認められる可能性があります。
しかも現場は転回禁止場所とされている道路だったということですから、他車にみるべき過失がなければ、転回した車の過失割合の負担は1の場合の事故なら100%、2の場合でも90%から100%となる可能性が高いといえます。
このように転回は、通常の運転行為の中でも危険性が高い行為であるといえますので、十分に注意して運転することが必要です。
(執筆 清水伸賢弁護士)