運転中にアクセルとブレーキペダルを踏み間違えて、建物に突っ込んだといった事故例をよく見聞きします。
報道されるのは高齢ドライバーの事故が多いので、「高齢者が起こす事故であって、自分は関係ない」と思い込んでいる人がいるようですが、踏み間違いは若年運転者にも多く、決して他人事ではありません。
また、個々の事故事例の分析などを読むと、特殊な状況でついうっかり踏み間違えるケースがあり、まれにしか起こらないとはいえ、誰でも警戒する必要があります。
今回は、国土交通省の資料や交通事故総合分析センターの資料を参考に、どんなときに踏み間違い事故を起こしやすいのか、考えてみましょう。
路線バスのベテラン運転者が踏み間違い事故を起こす
2019年(平成31年)4月21日、神戸市中央区のバス停で乗合バス(AT車)が乗客の降車扱いを終えた後、前方の横断歩道まで進んで停止しようとしたところ、運転者が運転操作を誤って、歩行者の青信号に従って横断中の歩行者に衝突、そのまま進行し、中央分離帯のガードレールに衝突して停止する事故が発生しました。
この事故により、20代の男女の歩行者2名が死亡し、1名が重傷、3名が軽傷を負っています。
64歳のバス運転者は事故当時「ブレーキを踏んでいたが急発進した」と供述していましたが、その後にペダルの踏み間違い事故だったことがわかりました。
運転姿勢などに問題があった
この事故を調査した国土交通省の事業用自動車事故調査報告書によると、運転者は以下のような「いつもと違う」状況の中でミスをおかしたものと分析されています。
●姿勢が悪い場合やずれた形で座ったとき、足の位置を勘違いして、誤操作する恐れがある。
→ 常に正しい運転姿勢で座席についてから発進の操作をする。
●焦っていると踏み間違いを起こしやすい。
→ 時間が気になっても慌てて発進しない。いつもの操作と安全確認を行うよう徹底する。
駐車場で方向転換中に、慌てて前後に連続衝突
交通事故総合分析センターが発行するイタルダインフォメーション№137に、以下のような事例が紹介されています。
駐車場で40歳台前半の女性運転者が普通乗用車(AT車)に乗り込み、車両をバックして離れた場所にいる知人のところに「早く行こう」として、いつもより強めにアクセルを踏んで後方の確認をしないままバックしたため、駐車場外側の電柱に衝突しました。
そこで電柱から離れるため急いで一旦前進し、車を止めようとブレーキを踏んだつもりが、ふたたびアクセルを踏み込んでしまい車が暴走し、駐車場内の施設建物に衝突、運転者は軽傷でしたが同乗者が重傷を負いました。
「乗り慣れない車」で慌てたときなどに踏み間違いが起こりやすい
この事故のミクロ分析調査を行った交通事故総合分析センターでは、以下のように事故の発生過程を考察しています。
●「乗り慣れない車」ではペダル位置を身体が習熟していないためミスを起こしやすい。
→ 乗り慣れないうちは、運転する前にアクセル・ブレーキペダルを踏んで確認する。
→ とくに操作の難しいバック時や車庫入れ時などは、連続操作をしない。落ち着いてレバー
の位置やペダル位置を確認しながら操作を切り分けて行う。
●気を取られたり動転していたりすると、踏み間違い事故を起こしやすい。
→ 運転に集中し他のことに気を取られない。何かに当たっても慌てずに、アクセルから足を
離し、ブレーキの位置を確認してその場で一旦停止する。
★駐車場などで特に注意する
交通事故総合分析センターの調査によると、四輪車ドライバーがアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違えたことによる死傷事故発生件数は、右図のように2010年(平成22年)の6,328件から2019年(令和元年)の3,845件と、10年間で4割ほど減少しています。
しかし、依然として每日10件ほどの事故が起こっていることになります。
また、最近の交通事故続計データ等の分析により、アクセルとブレーキの踏み間違い事故について次のようなことが判明しています。
なお、ミクロな事故分析を踏まえた対策として、同センターでは以下のようなポイントを挙げていますので、指導の参考にしてください。
この記事は以下のサイトを参照にしました。
・「事業用自動車事故調査委員会 報告書1963101/大型乗合バスの衝突事故」(2021年5月28日公表)
・ 若い人でもペダルの踏み間違いをする危険がある(朝礼話題)
・ バックするときはアクセルとブレーキの踏み間違いに注意(朝礼話題)