踏み間違い事故は誰でも起こす危険がある

■焦っているときや運転姿勢の崩れたときには注意しよう

踏み間違い

 運転中にアクセルとブレーキペダルを踏み間違えて、建物に突っ込んだといった事故例をよく見聞きします。

 報道されるのは高齢ドライバーの事故が多いので、「高齢者が起こす事故であって、自分は関係ない」と思い込んでいる人がいるようですが、踏み間違いは若年運転者にも多く、決して他人事ではありません。

 

 また、個々の事故事例の分析などを読むと、特殊な状況でついうっかり踏み間違えるケースがあり、まれにしか起こらないとはいえ、誰でも警戒する必要があります。

 

 今回は、国土交通省の資料や交通事故総合分析センターの資料を参考に、どんなときに踏み間違い事故を起こしやすいのか、考えてみましょう。

■事故事例1(国土交通省資料より)

路線バスのベテラン運転者が踏み間違い事故を起こす

神戸市バスの踏み間違え事故

 2019年(平成31年)4月21日、神戸市中央区のバス停で乗合バス(AT車)が乗客の降車扱いを終えた後、前方の横断歩道まで進んで停止しようとしたところ、運転者が運転操作を誤って、歩行者の青信号に従って横断中の歩行者に衝突、そのまま進行し、中央分離帯のガードレールに衝突して停止する事故が発生しました。

 

 この事故により、20代の男女の歩行者2名が死亡し、1名が重傷、3名が軽傷を負っています。

 

 64歳のバス運転者は事故当時「ブレーキを踏んでいたが急発進した」と供述していましたが、その後にペダルの踏み間違い事故だったことがわかりました。 

運転姿勢などに問題があった

 

 この事故を調査した国土交通省の事業用自動車事故調査報告書によると、運転者は以下のような「いつもと違う」状況の中でミスをおかしたものと分析されています。

神戸市バス誤発進死亡事故
図は事業用自動車事故調査報告書を参考に作図しました

 

  • 停留所で客扱いが終了した直後に乗車してきた外国人に対する道案内で、約2分の時間を要し、少し焦りの気持ちを持っていた。
  • 道案内を終えた2秒後に発進操作を始めた。通常の操作手順と異なり、発進後に車両前後・側方の安全確認と前扉の閉扉操作を行っていた。本来、車両発進時には前扉を閉めた上で、車両周囲の安全確認を行った後に車両の発進操作を行うところだが、このときは十分な安全確認をすることなく、車両を発進させている。
  • 外国人への案内対応は座面左端までお尻をずらし、外国人に接近した形で行った。その後、通常の着座位置・着座姿勢に座り直すことなく、臀部が座面の左縁の上に乗って、姿勢はやや前方に傾斜し、背中は背もたれには接触していない状態で発進操作をしたため、ペダル操作の正確性を欠いた可能性が考えられる。 

【事故の教訓】

●姿勢が悪い場合やずれた形で座ったとき、足の位置を勘違いして、誤操作する恐れがある。

 → 常に正しい運転姿勢で座席についてから発進の操作をする。

●焦っていると踏み間違いを起こしやすい。

 → 時間が気になっても慌てて発進しない。いつもの操作と安全確認を行うよう徹底する。

■事故事例2(交通事故総合分析センター資料より)

駐車場で方向転換中に、慌てて前後に連続衝突

駐車場での踏み間違え事故

 交通事故総合分析センターが発行するイタルダインフォメーション№137に、以下のような事例が紹介されています。

 

 駐車場で40歳台前半の女性運転者が普通乗用車(AT車)に乗り込み、車両をバックして離れた場所にいる知人のところに「早く行こう」として、いつもより強めにアクセルを踏んで後方の確認をしないままバックしたため、駐車場外側の電柱に衝突しました。

 そこで電柱から離れるため急いで一旦前進し、車を止めようとブレーキを踏んだつもりが、ふたたびアクセルを踏み込んでしまい車が暴走し、駐車場内の施設建物に衝突、運転者は軽傷でしたが同乗者が重傷を負いました。

 

「乗り慣れない車」で慌てたときなどに踏み間違いが起こりやすい

 

 この事故のミクロ分析調査を行った交通事故総合分析センターでは、以下のように事故の発生過程を考察しています。

バック時のペダル踏み間違え事故
図はイタルダインフォメーション№.137を参考に作図しました

 

  • 低速度で、後退→(衝突)→前進→停止する過程で、踏み間違いが起きた。後退の際にアクセルを踏んでいたことから、前進時もそのままアクセルを操作していたと推測され、前進後に停止しようとアクセルからブレーキに踏み替える時に、踏み替えを適切に行えず直前まで操作していたアクセルを踏み込んでしまった。
  • 踏み間違いのきっかけとして、1つには、車を購入して2か月と日が浅かったことが挙げられ、乗り慣れない車で、ペダル位置を身体が習熟していなかった可能性が考えられる。また、運転者の証言から、知人に「気を取られた」ことや電柱との軽微衝突によって慌てたことも挙げられる。
  • この事例の他に、車庫入れで車の向きを真っ直ぐにするために後退→前進→停止しようとブレーキを踏もうとして、誤ってアクセルを踏み込んでしまったという事例もある。やはり車は購入して1か月の乗り慣れない車で、購入間もない事故例として共通する。

【事故の教訓】

●「乗り慣れない車」ではペダル位置を身体が習熟していないためミスを起こしやすい。

 → 乗り慣れないうちは、運転する前にアクセル・ブレーキペダルを踏んで確認する。 

 → とくに操作の難しいバック時や車庫入れ時などは、連続操作をしない。落ち着いてレバー

   の位置やペダル位置を確認しながら操作を切り分けて行う。

 

●気を取られたり動転していたりすると、踏み間違い事故を起こしやすい。

 → 運転に集中し他のことに気を取られない。何かに当たっても慌てずに、アクセルから足を

   離し、ブレーキの位置を確認してその場で一旦停止する。

■踏み間違い事故の全体的な傾向

踏み間違い事故の推移
イタルダ・インフォメーション№137より

★駐車場などで特に注意する

 

 交通事故総合分析センターの調査によると、四輪車ドライバーがアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違えたことによる死傷事故発生件数は、右図のように2010年(平成22年)の6,328件から2019年(令和元年)の3,845件と、10年間で4割ほど減少しています。

 しかし、依然として每日10件ほどの事故が起こっていることになります。

 

 また、最近の交通事故続計データ等の分析により、アクセルとブレーキの踏み間違い事故について次のようなことが判明しています。

  • 高齢者や若年運転者の事故割合が高い
  • 単路、駐車場等で多く起きている
  • 直進、発進時に多く起きている
  • 単独事故(駐車車両、工作物等に衝突)が多く起きている

 なお、ミクロな事故分析を踏まえた対策として、同センターでは以下のようなポイントを挙げていますので、指導の参考にしてください。

■踏み間違いを防ぐポイント(イタルダインフォメーション№137より引用)

  • 駐車場には様々な危険が港んでいると考え、歩行者や自転車など周囲に気を配りながら低速で前進・後退する際には、ブレーキに足を軽く載せたまま、クリープ現象を利用する。
  • 信号交差点に向けて進行している際の信号の変わり目では、ブレーキに足を載せてブレーキ速度を調整しながら惰性で進行する。
  • 車を乗り換えたばかりで慣れないうちは、運転を始める前にアクセルとブレーキを実際に踏んでみて、それぞれのペダル位置を確認する。
  • サンダルなどアクセルやブレーキを操作しにくい履物は控えるとともに、濡れて滑りやすくないかなど、履物の状態を確認する。
  • 軽微な衝突や危険な状態に陥って慌てたりパニックにならないように、 思込みをせずに危険を予測しながら運転すること。前方注視、一時停止などを徹底すること。

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