トラックの健康起因事故が増加傾向に

■心臓疾患・脳疾患・大動脈関係疾患が全体の3割を占める

健康起因事故の危険
死亡事故では54%が心臓疾患により亡くなっている

 国土交通省は、事業用自動車の運転者が疾病が原因で事故を起こしたり、運転を中断したりした、いわゆる健康起因事故の統計を毎年公表しています。

 

 2022年2月2日の公表分によると、令和2年中(2020年中)の事業用自動車における運転者の健康状態に起因する事故の報告件数は286件あり、前年を41件下回っています。

 平成30年(2018年)をピークに減少傾向にはありますが、トラックの事故報告件数に限ってみると、令和元年(2019年)は77件で前年の98件より減少しているものの、令和2年は104件(+27件)で再び増加に転じています。

 

 また、過去8年間に健康起因事故を起こした運転者2,177人の疾病別の内訳をみると(平成25年から令和2年までの合計)、心臓疾患、脳疾患、大動脈瘤および解離で全体の31%を占めています。

 

 さらに、死亡した運転者(374人)に限ってみると、心臓疾患が54%、脳疾患が11%、大動脈瘤および解離が13%となり、この3大疾患で全体の8割弱を占めています。

 

 運転者の高齢化がすすみ体調不良に伴う事故が多発傾向にあることを踏まえ、同省では事業者に運転者の健康管理を徹底するよう呼びかけています。

*図は、国土交通省 事業用自動車健康起因事故対策協議会のWEBサイト掲載資料より引用しました。

■トラックのスクリーニング検査実施事業者は伸び悩む

 健康起因事故を防ぐ対策として、同省は事業用自動車の運転者にSASのスクリーニングや脳ドッグ検診などを受けてもらうよう働きかけています。

 これらのスクリーニング検査への取組みについてアンケート調査を行ったところ、トラック事業者については、いまだにSASなどにおいても、3社に1社程度の事業者しか実施していないことがわかりました。

 

 SASのスクリーニング検査を最もよく実施しているのはバス事業者で、近年少し下降傾向にありますが、全体の7割以上が実施しています。

 一方、タクシー・トラックの実施率は低く、トラックは33%となっていて近年は横ばい傾向です。

■脳疾患ではわずか14%の実施率

 脳血管疾患のスクリーニング検査では、さらに実施率は低く、バス事業者が48%に対して、トラック事業者の場合は14%程度となっています。

 また、心臓・大血管疾患のスクリーニング検査に関しては、バスでも18%と低く、トラックで15%と低調です。

 

 一方、スクリーニング検査を受診させていない事業者に対して、「検査の必要性を感じているか」という設問には、トラック事業者が、SASでは91%、脳血管疾患では82%、心臓・大血管疾患では79%と高い意識をもっています。

 

 健康面での様々な検査を実施したいという気持ちは強いものの、費用負担や業務多忙などさまざまな理由で、なかなか受診させることができないという実態があるようです。

※国土交通省:「健康起因事故防止に係る取組に関するアンケート調査結果(令和3年度)」より

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