「アルコール依存症」に関する指導・監督の強化を

■「指導及び監督の実施マニュアル」を改訂──国土交通省

アルコール依存症の監督指導
イラストは国土交通省のマニュアルより

 2022年3月、国土交通省は「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」(指導・監督マニュアル)を改訂、アルコール依存症に関する記述を大幅に追加して、全日本トラック協会など事業用自動車の事業者団体に通知し、指導・監督の強化を求めました。

 

 昨年6月に発生した八街市のトラック運転者(白ナンバー)による飲酒運転死傷事故は、2名の児童が下校中に死亡、3名が重傷を負うという悲惨なものでしたが、運転者の多量な飲酒習慣や業務中の飲酒運転が常習化していたことから、アルコール依存症が背景にあるのではないかとされています。

 

 酒気帯び違反は減少傾向にあるとはいえ、事故の発生がゼロではなく、依存症患者の飲酒運転は悲惨な死亡事故に結びつきやすいことを鑑み、政府は昨年8月に交通安全対策に関する緊急閣僚会議を開き、通学路における安全対策の強化と飲酒運転根絶を柱にした緊急対策に取り組むことを決めました。

 2022年4月以降、安全運転管理者選任事業所に対するアルコール検知の義務化など、踏み込んだ対策が取られていますが、今回のマニュアル改訂もその一環と考えられます。

 

 改訂された「指導・監督マニュアル」は、国土交通省のWEBサイトからダウンロードできます。同省では、事業所ではこれらの資料を参考にして、とくに飲酒傾向の強い運転者に対する適切な指導・監督を実施してほしいと呼びかけています。 

※指導・監督マニュアルは国土交通省の「運転者に対する指導監督の概要サイト」に掲載されています。

■アルコール依存性の基礎知識(国土交通省のマニュアルより抜粋)

アルコール依存症に対する理解 ・アルコール依存症は、多量の飲酒を続けることで脳の機能が変化して、自分では酒の飲み方(飲む量、飲む時間、飲む状況)をコントロールできなくなる病気です。
・本人は自覚がなく気づきにくいため、本人の意志でコントロールしようとしても度々失敗します。

・本人が回復の必要性を自覚するまでには時間がかかることから、周囲の人の適切なサポートが必要です。

サポートのポイント(職場全体)

・孤立を解消する  ・叱責しない  ・あまりに世話をやきすぎない

・健やかな人間関係を作る  ・たった 1 杯のアルコールでも勧めない

サポートのポイント(事業者として)

・アルコール依存症に関する正しい理解を進める

・飲酒運転違反者に対するプログラム──警察庁による、「多量飲酒・依存症に対する介入プログラム」
・同──法務省による、「飲酒運転により保護観察下にある者に対する多量飲酒・依存症の教育プログラム」
・専門機関への相談を援助する

専門機関への相談

 

地域の相談窓口/全国の保健所・精神保健福祉センター

民間団体(自助グループ・支援団体)──本人または家族同士が体験を共有しながら、依存症の回復を目指します。

指定病院での受診──事業者指定の病院を予め決定しておきます。

専門機関で得られる治療の可能性

  → ・心理社会的治療/◆動機づけ面接◆認知行動療法◆自助グループによる

     体験談の語らい◆入院社会復帰プログラム(ARP)

  → ・薬物治療◆離脱症状の治療◆飲酒行動の改善のための薬物療法◆中枢神

     経に作用し、飲酒欲求などを抑える薬物治療

アルコール依存症の診断基準(WHOのICD-10診断ガイドライン)

過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1か月以上続いたか、又は繰り返し出現した場合
 飲酒したいという強い欲望あるいは脅迫感

 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難

 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状

 耐性の増大

 飲酒にかわる興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が

 延長

 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒

※WHOでは「ICD-10」診断ガイドラインを定めており、6項目のうち3項目に当てはまればアルコール依存症と診断されます。「2」の典型は連続飲酒です。「4」は酩酊効果を得るための量が以前より明らかに増えているか、または同じ量では効果が明らかに下がっている場合です。 「6」では、本人が有害性に気づいているにもかかわらず飲み続けていることを確認します。

■アルコール依存性の症状例(国土交通省の指導・監督マニュアルより一部を引用)

遠隔点呼最終取りまとめ
【指導・監督マニュアルの改訂概要】

 (1)アルコール依存症に関する基礎知識の拡充  ※本編P98~P100

  1. アルコール依存症の定義
  2. アルコール依存症の症状の例
  3. アルコール依存症の診断基準(ICD-10診断ガイドライン)
  4. アルコール依存症スクリーニングテスト・アルコール使用障害同定テストの活用

 (2)アルコール依存症の対応方法        ※本編P101~P102

  1. 職場全体での疾病者に対するサポート
  2. 事業者としての疾病者に対するサポート
  3. 事業者独自の飲酒運転対策の取組事例の紹介

 【関連記事】

★参考ページ★ 

  → 飲酒運転根絶に向け指導を強化しよう (当社サイト)

  → 政府広報オンラインウェブサイト「暮らしに役立つ情報」(内閣府大臣官房)

  → アルコール健康障害対策(厚生労働省)

  → 生活習慣病とその予防/飲酒(日本生活習慣病予防協会)

  → かながわの依存症対策(神奈川県立精神医療センター等)

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ホーム >運転管理のヒント >運行管理者のための知識 >「アルコール依存症」に関する指導・監督の強化を

 

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