●八街市飲酒運転事故が契機に
皆さんは、2021年千葉県八街市で発生した飲酒運転のトラックによる児童死傷事故をご記憶のことと思います。
事故を起こした運転者は飲酒運転の常習者であることが判明し、事業用トラック・バスなど青ナンバー事業所では実施されているアルコール検知を自家用自動車の事業所でも義務づけるきっかけとなりました。
また、この事故で運転者が勤務していた会社が、道路交通法に基づく安全運転管理者を選任していなかったことも判明し、会社と同社代表取締役の男性が道交法違反の罪で起訴され、それぞれに罰金5万円の略式命令が出されています(法人両罰)。
この問題を政府は重視し、道路交通法の一部が改正され、今年10月1日からは、安全運転管理者の未選任事業所等への罰則が大幅に強化されることになります。
*安全運転管理者の選任義務がある対象事業所については、こちらを参照してください。
八街市の事故は、日中の通学路で子どもたちが悲惨な飲酒運転の犠牲になったこと、安全運転管理者が未選任であったこと等が連日マスコミで報道されて社会問題となりました。
新型コロナウイルス感染症の再拡大やオリンピック開催問題で批判の矢面に立っていた政府は、これを重視して異例の迅速な対応を行いました。
2021年8月4日に内閣府は閣僚会議で「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」を決定しています。
この決定を踏まえて、道路交通法施行規則の一部が改正され、安全運転管理者の行う業務として酒気帯び有無の確認と記録の保持、アルコール検知器を用いた酒気帯び確認等が追加されることになりました(道路交通法施行規則、第9条の10の改正/2021年11月10日公布)。
さらに2022年4月27日、道路交通法の一部が改正されて公布され、安全運転管理者等選任義務違反(副管理者の選任義務違反も同様)、安全運転管理者の解任命令違反の罰則が、現行の「5万円以下の罰金」から「50万円以下の罰金」へと強化されることになりました(施行日は2022年10月1日*)。
また、安全運転管理者が業務を行うための必要な権限や機材が付与されていないため安全運転が確保されていないと認められる場合は、自動車の使用者に対して、是正のための必要な措置命令を出すという規定が新設されました。
この是正措置命令に対して違反した場合についても、50万円以下の罰金が科せられることになりました(※ここで新たに「必要な機材整備」が道路交通法に規定されていますので、使用者がアルコール検知器などを整備せず、是正命令にも違反する場合は罰則が適用されることになります)。
安全運転管理者とは名ばかりで実際に管理業務が実行できていない環境の企業に対して、厳しい指導と取締りをする意図がみられます。
このほか、安全運転管理者等の選任や解任を行った場合、自動車の使用者は公安委員会へ15日以内に届け出る義務がありますが、届出を怠った自動車の使用者に対する罰則も「2万円以下の罰金または科料」から「5万円以下の罰金」に引き上げられます。
なお、警察庁から都道府県警察に対し、安全運転管理者未選任事業所を効果的に把握する施策として、以下のポイントが通達で指示されています。
(*道路交通法施行規則の公布により施行日が決まりましたので、2022年9月14日に一部更新しました)
道路交通法 第74条の3(安全運転管理者等)