4月1日から白ナンバーでも酒気帯びチェックとその記録が義務づけられたことを先月お伝えしましたが、運転前・運転後のチェックだけでは、飲酒運転根絶はなかなな実現しません。
多量飲酒の習慣のある人は、前夜のお酒が体内に残っていることに気が付かないまま、マイカー通勤などをしていて、酒気帯び運転が発覚することがあります。
また、アルコール依存症にかかっている人は、家族や同僚に隠れて昼間からお酒を飲む場合が多く、仕事中の休憩時などにコンビニエンスストアでお酒を購入して、運行中に飲酒することがあります。
飲酒運転への規制が厳しくなったこの時期をチャンスと捉えて、飲酒運転根絶に向けた啓発活動を強化しましょう。
安全運転管理者選任事業所を始め、トラック・バス・タクシーの事業所においても、アルコールチェックが全国的に強化されるこの機会を踏まえて、運転者への啓発指導を積極的に行いましょう。
今回の対策強化には、八街市で発生した飲酒運転事故が背景にありますが、それ以前から、死亡事故に結びつかなかった場合でも、ひき逃げ事件に飲酒運転がからんでいるケースが多くみられています。
飲酒が発覚するのを恐れて逃げるという運転者が多いことを考えると、大きな事故を起こしていないものの、飲酒運転をしている運転者が水面下で隠れているという実態が考えられます。
事業所では、次のような活動に取り組んで根絶への機運を高めましょう。
人間の体内に入ったアルコールを分解するには一定の時間が必要です。
たとえば、体重60キロの人が缶ビール(500ml)を1缶飲んだ場合、ビールに含まれるアルコール20g(2ドリンク=1単位)が体内から消えるまでに3~4時間かかるとされています。
このため、ビールを4缶・5缶も飲んだ場合は、15時間~20時間はアルコールが体内から抜けないことになります。
このように多量に飲酒しても、翌朝は「11時に宴会を切り上げて7時間寝たから大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。
しかし早朝からマイカーで通勤していたら「酒気帯び運転」となりますし、事業所でアルコール検知器に息を吹き込むと警告音が鳴ることになります。
アルコール濃度が違反とされる基準値(*)未満であっても、検知器で酒気帯びが判明した場合には、業務運転はできませんので、注意する必要があります。
(*呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上が罰則適用の基準値)
運転者には、下の計算式などを目安に大量の飲酒が翌日以降にどう影響を与えるかを理解させましょう。なお、アルコールが処理される時間には個人差が大きく、就寝中は能力が落ちることも知っておく必要があります。
また、そのときの体調や飲酒を続けた時間などにも左右されるということを理解させ、勤務に影響を与える深夜までの飲酒を控えるよう指導しましょう(最近は酒造メーカーがホームページでビール類や缶チューハイの純アルコール量をグラム表記で開示する取り組みが始まっています)。
*日本では、基準飲酒量として「単位」を使用してきました。1単位は日本酒1合に相当し約20gのアルコール量ですが、基準飲酒量は飲酒の最小単位と捉えられることが多く、この量は飲酒問題の観点から多すぎると考えられています。近年2分の1単位=1ドリンク = 10gという基準量が提案され使用されています。
11年前、トラック貨物運送事業所やバス事業所で、検知器による酒気帯びチェックを導入した当時、休み明けの点呼時にアルコール検知器の音が鳴り続く、というような事例がよくありました。
などと運転者は意外な顔をしていることが多かったそうです。
本人は自分なりに酒量を控えたつもりなのになぜ、酒気残りが発生したのでしょうか?
それは土曜日の飲酒量に理由がありました。
人間の身体は一定量のアルコールしか分解できないので、もし、土曜日に非常に多くの酒を飲んでいると、その何割かは、まだ日曜日に身体に残っています。
こんな状態で、さらに日曜日に飲酒すると、たとえ本人はいつもより酒量を控えたつもりでも、分解できなかったアルコールが月曜日の朝に残ることになります。
たとえわずかでも酒気残りがあれば、アルコール検知器に検知され、その朝は運転者としての仕事ができないのですから重大な問題です。
こうした事態が発生するのを防ぐためには、単に前日の何時までに飲酒を切り上げるといった指導をするだけではなく、どのような飲酒をしたら実際にハンドルを握るべきときに運転ができなくなるのか、自分の飲酒習慣の中で気づいてもらうことが大切です。
そして、自分が飲む飲料でどの程度のアルコールが体内に入るかを意識させ、少しずつ飲酒習慣をコントロールすることを体得させましょう。具体的な行動目標を立てて、自己評価すると習慣化できます。下のような表をつけるのも一つの方法です。
なお、今回の飲酒運転規制の強化では管理者が酒気帯びチェックをして、少しでも酒気残りが発覚した場合は、飲酒運転違反として罰則が適用される基準値未満でも、運転を控えるように指示する必要があります。
これは、道路交通法の「何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならない」という規定があるからです。
事業所で酒気帯びを検知していながら運転を認めると、飲酒運転の下命・容認に問われ兼ねませんので、運転業務を認めるわけにはいきません。この点を運転者によく理解させておきましょう。
また、アルコールの運転に与える影響を調べた研究によると、基準値未満の飲酒であっても運転者の反応時間が遅れ、反応にバラツキが出ることがわかっています。単純な刺激に対する反応の時間も素面のときより遅くなりますし、複雑な反応はさらに遅れます。
(*呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上が罰則適用の基準値)
飲酒運転には厳しい罰則が科せられます。
呼気中濃度が25mg/l未満の酒気帯び運転でも即「免許停止」となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い罰則があることを再認識しておきましょう。
また、多量の飲酒では免許取消(最低2年は免許を取得できない)となります。
さらに、酒酔い運転に問われると、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となり、事故を起こした場合は危険運転致死傷罪の適用を受ける恐れがあります。
この記事は以下のサイトや掲載資料を参照しました。
新たに安全運転管理者の業務として、運転前・運転後の「酒気帯び有無」の確認とその記録、記録の保存、並びにアルコール検知器を使用したチェックが義務づけられました。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、飲酒運転根絶に向けた取組みとして位置づけられたのです。
本冊子は、運転者の酒気帯び確認をする方法についてイラスト入りでわかりやすく解説しています(パワーポイント資料付)。
ホーム > 運転管理のヒント > 危機管理意識を高めよう >飲酒運転根絶に向け指導を強化しよう