近年、大災害の危険が日常のものとなっています。
短時間の大規模豪雨によって事業所や車庫が浸水したり、土砂崩れにあったりする恐れがあります。
また、運行中の車両が水没する事故や強風のため、高架道路で車が横転したり落下するといった事故が各地で報告されています。
事業所の管理者としては、運転者の安全確認や従業員への的確な指示、連絡について事前にシュミレーションしておき、緊急時の連絡網・避難方法などを決めておきましょう。
車のダッシュボードに連絡票を入れたり、運転者に配布する手帳などに連絡網を貼り付けるとともに、災害時安否確認アプリなどを登録して、事業所の従業員全員がリスク対策を共有・確認できる仕組みを整備しておくことが求められています。
過去に、大地震などに対する対策として災害連絡網を整備し、社内に掲示している事業所は少なくないと思われます。
しかし、よく調べてみると、多くが固定電話の連絡網であったり、すでに使用されていない行政機関の電話番号が記載してあったりします。
現在、連絡のほとんどは携帯電話の場合が多いので、運行管理者や安全運転管理者の電話番号など、デスクの固定電話番号を記載していても、あまり意味がありません。
緊急時に本人と即座に直接つながる番号であるかを点検しておきましょう。場合によっては運転者の携帯電話番号が必要な場合があるでしょう。しかし、従業員個人の電話番号を表などに記載する場合は、本人の同意が必要です。
さらに、こうした連絡網が一人歩きして、個人情報の社外流出に結びつかないように管理を徹底することが必要です。
また、掲示物等に掲載する災害時の情報先はQRコードなどを印刷しておくと便利です。すぐに電話がつながらなくても、情報ページがスマートフォンなどに表示できるからです。このほか、自治体やNHKが提供する防災アプリがありますので、QRコードなどを掲示しておきましょう。
*気象庁災害情報サイト → 「キキクル」WEBサイト(同庁では、キキクルの5段階危険度変化を警戒レベルを付して分かりやすくプッシュ型でスマートフォンなどに通知するサービスを実施、5つの民間事業者が協力している)
最近の線状降水帯発生に伴う大規模水害は、ハザードマップを確認しておくと、リスク強度をつかむことができます。
事業所、倉庫、車庫などが浸水区域ではないか、会社の近くの河川の氾濫危険性はどの程度かなどを知っておくことが重要です。
食堂など社員の目に届きやすい場所に大きく拡大したハザードマップを貼り、グループ単位で被害の想定と避難経路、避難方法等を確認する機会を設けましょう。
大雨警報が出たら、最低でもこのパソコンとこの書類だけは階上に運び上げる、会社駐車場の車を立体駐車場に入れておくことなどを事前に決めていた会社があります。
この会社では、事務所が床上浸水したとき、被害を最小限に留めたということです。
こうした作業をいざ実行するかどうかの判断を誰が決定し、誰が担当するかも事前に決めておくことが重要です。
運転者に対する運行停止措置の連絡も同様です。
※1 市町村が災害の状況を確実に把握できるものではない等の理由から、警戒レベル5は必ず発令される
情報ではありません。
※2 避難指示は、以前の「避難勧告」のタイミングで発令されることになります。
※3 警戒レベル3は、高齢者等以外の人も必要に応じ普段の行動を見合わせ始めたり、避難の準備をした
り、危険を感じたら自主的に避難するタイミングです。
大規模災害が発生した際、電話が被災地に集中し、携帯電話などもつながりにくい状況が起こります。
そこで、災害用伝言ダイヤルの使用方法も皆で確認しておきましょう。
このダイヤルは災害発生時に、安否等の情報を音声により伝達する『声の伝言板』であり、平常時はつながりません。
災害時に落ち着いて利用できるように練習しておくことが重要です。
伝言ダイヤルの基本的な操作方法は、以下のとおりです。
■録音するとき
■再生するとき
※パソコンやスマートフォンから電話番号を入力して伝言登録ができる「WEB171」サービスも、
災害時の状況によっては提供されます。
新型コロナの社内感染により事業が一時的にストップしたケースが多く、改めて防災計画のなかでの事業継続計画(BCP)の取り組みが重視されています。
運転管理・車両管理面でも、災害時の事業継続という視点から、どんな対策が必要かを整理しておきましょう。
とくに、災害当初は社内で事業継続を担当する従業員の飲料水と食料確保が重要です。
最低でも、事業に従事する人数×3日(9食分)分ぐらいは常に確保しておくとよいでしょう(賞味期限を確認しておくこと)。
安否確認システムとは、従業員全員を通知対象としてシステムに登録しておき、一定規模の地震など大きな災害が発生したとき、自動で緊急連絡を送信し、従業員はパソコン・スマホアプリなどから安否を回答するシステムです。
安否回答は自動で集計され、未回答者には事前に設定した回数・時間に応じて自動リトライする機能などがついています。
基本は自動送信ですが、相互に掲示板などに書き込んで情報を共有する機能もあり、平時にはコロナ感染症の健康確認などに利用することが可能です。
大企業の場合は自社でこうした通信システムを独自に構築していくことが可能でしょうが、中小事業所では、既存サービスを活用していくのが一つの方法です。
■従業員の位置確認なども可能
なお、返信時の運転者の位置情報をGPSで確認する機能をもったサービスがあります。運転者が災害地域にいるか、脱出したかどうかなどが確認できるのです。
運行管理のクラウドサービスを利用して車の位置情報などを管理している事業所では、サービス事業者と相談して緊急時の一斉通信や安否確認機能をつけてもらうことが可能かも知れません。
安否確認システムのサービスは、大手通信事業者や警備業、webのクラウドサービスを手がける事業者などが参入して、日に日に機能が充実していると言われています。ネットで検索して相談してみてはどうでしょうか。
・異常気象時のトラック輸送措置、目安を公表/国土交通省(運行管理者のための知識)
・新しい避難情報と事業所の対応(安全管理法律相談/清水伸賢弁護士)
・車両の災害対策は万全ですか?(危機管理意識を高めよう)
近年は地球温暖化等を原因とした異常気象により、豪雨や強風・突風、猛暑、豪雪等の自然災害が多発しています。
また我が国は地震大国ですので、いつ何時、大きな揺れに襲われるかわかりません。しかし、日々自然災害への対応意識を高めておけば、被害を最小限に留めることができます。
本冊子は、運転中に自然災害に見舞われた以下の6つの運転場面を提示しており、それぞれの危険要因と対処方法を考えていただくのに最適の教材です。
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