平成30年に成立した「働き方改革関連法」を踏まえて、自動車運転者の労働条件を改善する「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)の見直しがすすめられてきましたが、2022年9月27日に厚生労働省の専門委員会でトラック運転者の基準に関して改正内容が取りまとめられ、同年12月23日に改正告示が公布されました。
以下がそのポイントです。
改正のスケジュールとしては、周知期間や荷主等への対策期間を経て、時間外労働上限規制=年960時間=の適用に併せて、2024年4月1日(令和6年4月)から適用されます。
項目 | 現行の改善基準告示 | 改正後の内容 |
拘束時間 |
●原則:1か月 293時間以内 |
●原則:1か月 284時間以内
1年間 3,300時間以内 ※1か月284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、1か月の時間外・休日労働が 100時間未満となるよう努める。 |
●1日 原則13時間 最大16時間 (※15時間超は1週2回まで) |
●1日 原則13時間 最大15時間 ※例外:1週間の運行が全て長距離(450km以上) であり、かつ、住所地以外の場所において1週間に2回に限り最大16時間にできる ※1日14時間を超える回数をできるだけ少なくするように努める(1週2回まで目安) |
|
休息期間 |
●継続8時間以上 運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるよう努めること |
●基本として継続11時間以上与えるように 努める(下限継続して9時間以上) ※例外:1週間の運行が全て長距離(450km以上) であり、かつ、住所地以外の場所における休息について1週間に2回に限り8時間以上とすることができる。この場合、一の運行終了後に継続12時間以上の休息を与える |
運転時間 |
●2日平均で1日あたり9時間 ●2週平均で1週間あたり44時間 |
●現行どおり |
拘束時間・休息期間の特例 |
●休息期間の特例(分割) 業務の必要上やむを得ない場合に限り、当分の間1回4時間以上の分割休息で合計10時間以上でも可(一定期間における全勤務回数の2分の1を限度とする)。 3分割も可(4時間+4時間+4時間) |
●休息期間の特例(分割)
業務の必要上やむを得ない場合に限り、1回3時間以上の分割休息で合計10時間以上でも可(一定期間における全勤務回数の2分の1を限度とする。一定期間は1か月程度) 3分割も可、ただし3分割するときは合計12時間以上(3時間+4時間+5時間または3時間+3時間+6時間など) 3分割が連続しないよう努める |
●2人乗務の特例 1日 20時間 2人乗務(ベッド付き)の場合、最大拘束時間は1日20時間まで延長でき、休息期間は4時間まで短縮できる。 |
●2人乗務の特例は以下の①~②の基準を満たす車両ベッドまたはこれに準ずるものの場合 1日拘束24時間まで延長可
⇒勤務終了後継続11時間以上の休息が必要。 ●車両内ベッドで8時間以上の仮眠をする場合には拘束時間を28時間まで延長可 ①長さ198cm以上、幅80cm以上のベッド ②クッション材等による衝撃緩和
|
|
●隔日勤務の特例 2暦日 21時間 2週間で3回までは24時間が可能(夜間4時間の仮眠が必要)。ただし、2週間で総拘束時間は126時間まで。勤務終了後、継続20時間以上の休息期間が必要。 |
●現行どおり | |
●フェリーに乗船する場合の特例 トラック運転者に限って、フェリー乗船時間は、原則としてすべて休息期間として取り扱う。ただし、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはならない。 |
●現行どおり | |
連続運転 時間 |
●4時間以内 ●運転中断は、1回連続10分以上で、かつ、合計30分以上の運転離脱が必要) |
●4時間以内。SA・PA等に駐車できない場合は4時間30分まで延長できる ●運転中断時は1回が概ね10分以上、かつ合計30分以上の休憩を原則として与え、10分未満の運転中断は3回以上連続しない ●当該運転の中断は原則として休憩 |
予期し得ない事象 | (新設) |
●事故、災害、故障、フェリー欠航等の予期し得ない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間については、その対応に要した時間を除くことができる ●勤務終了後は休息期間11時間以上を与えるように努め、9時間を下限とする |
休日労働 | ●2週間に1回以内、かつ、1か月の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内。 | ●現行どおり |
労働時間の取り扱い | 労働時間は拘束時間から休憩時間(仮眠時間を含む)を差し引いたもの。事業場以外の休憩時間は仮眠時間を除き3時間以内。 | ●現行どおり |
休日の取り扱い | 休日は休息期間に24時間を加算した時間。いかなる場合であっても、30時間を下回ってはならない。 | ●現行どおり |
適用除外 | 緊急輸送・危険物輸送等の業務については、厚生労働省労働基準局長の定めにより適用除外。 | ●現行どおり |
※こちらも参照→ 「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!」PDF(厚生労働省WEBサイト)
すでに2019年に、一般の労働者に対しては時間外労働時間の上限規制が実施され、時間外労働の限度時間が罰則付きで法律に組み込まれています。
自動車運転者は5年間の適用猶予期間がありましたが、いよいよ令和6年から適用されます。
項目 | 現行の時間外労働規制 | 改正後の内容 |
時間外労働、休日労働の上限規制 |
●法律上は、時間外労働時間の上限 なし(⾏政指導のみ) |
●法律で時間外労働時間の上限を定め、これを超える残業はできない。 自動車運転者は、年間で960時間 を上限とする |
●月ごとの時間外労働と休日労働の 合計にも上限なし |
●時間外労働+休日労働の合計 → 月100時間以内 |
全日本トラック協会では、2024年4月から適用される「改善基準告示」の改正内容等について、会員事業者及び荷主に対し周知するため、パンフレットを作成しました。
事業者向けパンフレット(8頁)は同協会の機関紙である「広報とらっく・令和5年3月20日号 」に同封して配布され、荷主向けパンフレット(4頁)は本年4月以降に同協会から直接荷主に対し郵送される予定です(2023年3月20日更新)。
事業者向け 改正改善基準告示パンフレット
(8ページ/PDF)
荷主向け 改正改善基準告示パンフレット
(4ページ/PDF)
項目 | 現行の改善基準告示 | 改正後の内容 |
拘束時間 |
(「1か月の拘束時間」を新設) |
●年間の総拘束時間が3,300時間、かつ、1か月の拘束時間が281時間を超えないものとする。 ●ただし、労使協定があるときは1年のうち6か月までは、1年間についての拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において294時間まで延長可) ※1月281時間を超える月が4か月を超えて連続しないものとし、1月の時間外・休日労働が 100時間未満となるよう努める。 |
●4週平均で1週間当たり 65時間 |
●52週間の総拘束時間が3,300時間、かつ4週間を平均し1週間当たりの拘束時間が65時間を超えない (ただし貸切バス乗務者は、労使協定がある場合、52週間のうち24週間までは総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内で、4週平均で1週間当たり68時間まで延長可能。この場合、4週間を平均し1週間当たりの拘束時間が65時間を超える週が16週間を超えて連続しない) |
|
●1日 原則13時間 最大16時間 (※15時間超は1週2回まで) |
●1日 原則13時間 最大15時間 1日14時間を超える回数(※)をできるだけ少なくするように努める (※ 通達において、「1週間について3回以内」を目安として示す) |
|
休息期間 |
●継続8時間以上 運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるよう努めること |
●基本:継続11時間以上与えるように努 める(下限継続して9時間以上) 運転者の住所地での休息期間がそれ以外の場所での休息期間より長くなるよう努めること |
運転時間 |
●2日平均で1日あたり9時間 ●4週平均で1週間あたり40時間 (貸切バス・高速バスは、労使協定がある場合、52週間の運転時間が2,080時間を超えない範囲内において、52週間のうち16週間まで、4週平均で1週間当たり44時間まで延長可) |
●現行どおり (貸切バス等乗務者については、労使協定がある場合、52週間の総運転時間が2,080時間を超えない範囲内において、52週間のうち16週間まで、4週平均で1週間当たり44時間まで延長可) |
拘束時間 休息期間の特例 |
●休息期間の特例(分割) 業務の必要上やむを得ない場合に限り、当分の間1回4時間以上の分割休息で合計10時間以上でも可(一定期間における全勤務回数の2分の1を限度とする)。 3分割も可(4時間+4時間+4時間) |
●休息期間の特例(分割)
業務の必要上やむを得ない場合に限り、1回4時間以上の分割休息で合計11時間以上でも可。(一定期間における全勤務回数の2分の1を限度とする。一定期間は1か月程度) 3分割以上は不可。2分割のみ |
●2人乗務の特例 1日 20時間★ 2人乗務(ベッド付き)の場合、最大拘束時間は1日20時間まで延長でき、休息期間は4時間まで短縮できる。 |
●2人乗務の特例 ※身体を伸ばして休息できるリクライニング方式のバス運転者専用座席が1席以上ある場合は、1日の拘束時間を19時間まで延長して、休息期間を5時間まで短縮可。 また、以下の①~②のいずれかの場合は、1日の拘束時間を20時間まで延長して、休息期間を4時間まで短縮可。 ①車両内ベッドが設けられている場合 ②上記※を満たし、カーテン等で他の 乗客からの視線を遮断する措置を講 じている場合 |
|
●隔日勤務の特例 2暦日 21時間★ 勤務終了後、継続20時間以上の休息期間が必要 |
●現行どおり | |
●フェリーに乗船する場合の特例★ 乗船中の2時間は拘束時間として取り扱い、それ以外は休息期間として扱う。減算後の休息期間は、フェリー下船から勤務終了時までの時間の1/2を下回ってはならない |
●フェリーに乗船する場合の特例
フェリー乗船時間は、原則としてすべて休息期間として取り扱う。ただし、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはならない。 ●フェリーの乗船時間が9時間を超える場合には、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始されるものとする。 |
|
連続運転 時間 |
●4時間以内 ●運転中断は、1回連続10分以上で、かつ、合計30分以上の運転離脱が必要 (※高速乗合バス・貸切バスのワンマン走行は運行計画上2時間以内) |
●4時間以内 ●運転中断は、1回連続10分以上で、かつ、合計30分以上の運転離脱が必要 ●高速バス及び貸切バスの高速道路の実車運行区間における連続運転時間は概ね2時間までとするよう努める (例外/緊急通行車両の通行に伴う軽微な移動の時間を、30分まで連続運転時間から除くことができる) |
予期しえない事象 | (新設) |
●事故、災害、故障、フェリーの欠航等予期し得ない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間については、その対応に要した時間を除くことができる ●勤務終了後は休息期間11時間以上を与えるように努め、9時間を下限とする |
休日労働 | ●2週間に1回以内、かつ、4週間の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内。 | ●2週間に1回以内、かつ、休日労働によって拘束時間の上限を超えない。 |
労働時間の取り扱い | 労働時間は拘束時間から休憩時間(仮眠時間を含む)を差し引いたもの。事業場以外の休憩時間は仮眠時間を除き3時間以内。 | ●現行どおり |
休日の取り扱い | 休日は休息期間に24時間を加算した時間。いかなる場合であっても、30時間を下回ってはならない。 | ●現行どおり |
適用除外 | 緊急輸送・危険物輸送等の業務については、厚生労働省労働基準局長の定めにより適用除外。 |
●現行どおり |
※こちらも参照→ 「バス運転者の改善基準告示が改正されます!」PDF(厚生労働省WEBサイト)
詳しくはこちらを参照 → 厚生労働省「自動車運転者の改善基準のポイント」