●荷主などに対する要請と働きかけが重要
厚生労働省は、2022年12月23日、「改善基準告示」(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準/平成元年労働省告示第7号)を改正しました。
改正の概要については、厚生労働省が簡単なリーフレットを運輸交通モード別に公表しています。
今後、詳しい解説資料などについては、国土交通省や全日本トラック協会などの事業者団体が作成して配布するものとみられています。
2018年に成立した「働き方改革関連法」を踏まえ、一般の労働者に対してはすでに2019年から、時間外労働時間の上限規制が施行されています。限度を超えて時間外労働を命ずることが法律で禁止され、違反した使用者には罰則が科せられます。
自動車運転者は5年間の適用猶予期間がありましたが、いよいよ2024年4月から適用されます。
これに併せて、自動車運転者の拘束時間の基準なども見直され、告示が改正されたものです。
適用は2024年(令和6年)4月からですので、まだ猶予期間があると考えがちですが、改正内容を実現するためには多くの課題があるため、周知期間の間に事業者や運転者だけでなく荷主などステークホルダーに対しても徹底することが重要となっています。
特に、トラック貨物運転者における長時間労働の要因には、取引慣行など個々の事業主の努力だけでは見直すことが困難なものがあり、発着荷主の意識改革が最も重要です。
そこで、厚生労働省では「荷主特別対策チーム」を編成し、都道府県労働局にトラック運転者のための特別チームを置いて荷主や一時元請運送事業者などに対して、ト ラック運転者の長時間労働是正のため、要請と働きかけを行うとしています。
*改正基準告示のリーフレットは、厚生労働省のWEBサイトからダウンロードできます。
とくに、トラック運転者の長時間労働改善を困難にしている要因の一つが、荷主・元請運送事業者の都合による「長時間の荷待ち」です。
そこで同省では、荷待ち時間の情報を集めるために、「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」を開設しました。
運転者の長時間・過重労働の主な要因が荷主・元請運送事業者による「長時間の荷待ち」である場合(労働基準法等の違反が疑われるものに限る)、その情報をメールで情報提供することができます。
担当は同省の労働基準局監督課で、情報の受付対象となる法律等として、以下の2つを挙げています。
また、荷主一般への啓蒙活動も同時に強化しています。12月には荷主向けリーフレット「STOP!長時間の荷待ち」を改訂しました。
国土交通省では、告示改正前からすでに、長時間の荷待ち、契約にない附帯業務の強要などの違反原因行為を行っているおそれのある荷主情報を積極的に収集してきました。
運送事業者が国土交通省WEBサイト「輸送・荷待ち・荷役などに関する輸送実態把握のための意見等の募集について」のメールフォームに入力する形で知らせます。情報に対して同省が事実確認を行った上で、荷主等に働きかけや要請を実施しています。
同省が法に基づく対応を行い、状況が改善された事例もあります。
それによると
といった過酷な実態がありましたが、運輸局が荷主側に具体的な改善計画の作成を要請したところ、「トラック予約システム」の導入や荷受・仕分要員の配置、到着時間の設定などで、平均荷待ち時間が大幅に短縮した事例がみられます。
改善事例については → こちらを参照。
【参考WEBサイト】
■「荷主特別対策チーム」を編成しました──厚生労働省・報道発表資料
■自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)──厚生労働省
■長時間の荷待ちに関する情報メール窓口──厚生労働省
■STOP!長時間の荷待ち(PDF)──厚生労働省
■輸送・荷待ち・荷役などに関する輸送実態把握のための意見等の募集について──国土交通省
■【改善基準告示】改正の概要/2024年適用 ──(運行管理者のための知識)