令和5年6月1日(木)、(一社)岡山県トラック協会は「事故防止セミナー」を開催しました。
このセミナーではNPO法人 安全と安心 心のまなびば代表であり、川崎医療福祉大学名誉教授の金光義弘氏が講師に招かれ、ドライバーの視覚機能の健康をテーマに講演が行われました。
今回は、その内容の一部を紹介します。
一般的に、車の安全運転は「認知」、「判断」、「操作」という手順で行われていると言われます。しかし、「目」により危険情報が感じられなければ、認知・判断・操作は無理でしょう。それほど、視知覚、とくに「視野」は重要であると考えます。
近年、視野が狭くなったり、一部が欠ける「視野障害」が問題として取り上げられるようになってきました。実際に、車の運転には視野の確保も重要であり、視野障害は事故を誘発させる危険があるため、十分に注意する必要があります。
こうしたことから、令和4年3月に、国土交通省から「自動車運送事業者における視野障害対策マニュアル」(以下マニュアル)が策定されました。
マニュアルの内容につきましては、みなさんも確認しておいてください。
実際に、視野障害による重大事故が発生しています。
事例1は、事故後に視野障害が判明した事例であり、「目の難病で視野が欠け、被害者を見つけるのは困難だった」として、刑事裁判において無罪となっています。
一方の事例2は、事故と視野障害の因果関係が認められた事例であり、事故前に網膜色素変性症(指定難病)と診断され、医師には運転は難しいと伝えられていたにも関わらず運転したものであり、その過失は飲酒運転に匹敵するとして、多額の損害賠償が命じられました。
一般に、60歳を過ぎる頃から視野の狭小化は進行します。身近な問題としては、「止まれ」の標識など、高い位置にあるものを、見落とすのではなく、見えなくなるおそれがあります。
視野障害の自覚に乏しい高齢ドライバーの危険意識は低いため、とくに高齢者の視野障害を早期に発見することは、事故の予防に不可欠です。
緑内障等の視野障害のスクリーニングと早期治療のために、定期的に視野検査を行うなど、目の健康管理の充実を図りましょう。
マニュアル以外の視覚機能障害についても理解が必要です。その1つに「アイフレイル」というものが挙げられます。
「フレイル」とは、虚弱を意味する言葉であり、「フレイル」というと一般的に、加齢により身体が衰え、弱くなってきた状態を指します。
この衰えが目に現れたものを「アイフレイル」と呼んでいます。体のフレイルが体操により予防できるように、アイフレイルも予防することができます。
セルフチェックリストのほか、無料で視聴できる動画「ドライビングアイフレイル予防『ビジョントレーニング』」もありますので、ぜひ活用してください。
アイフレイルのほか、最近では「サギングアイ」が新たな問題として取り上げられています。
眼球は「プリー」と呼ばれる組織によって支えられているのですが、このプリーが減少することで眼球の位置や向きがずれてしまいます。
その結果、1本のセンターラインが2本に見えたり、1台の対向車が2台に見えるなど、物が2重に見えるようになってしまいます。
「サギングアイ」はプリズム矯正や斜視手術により治療することができます。
目の障害は気づきにくいものです。なぜなら、目の一部が不調になっても、その他の健全な部分が補ってしまうからです。
目の健康は、脳や身体の健康と密接な関係があり、脳などの健康と同様に大切であることをしっかりと理解してください。
事故防止セミナー
・日 時 令和5年6月1日(木)
・会 場 岡山県トラック総合研修会館
・主 催 一般社団法人 岡山県トラック協会
◆講演
『ドライバーの視覚機能の健康』
~国土交通省の「自動車運送事業者における視野障害対策マニュアル」策定を機に~
金光義弘(川崎医療福祉大学名誉教授・NPO法人 安全と安心 心のまなびば理事長)