今回は、右折二輪車と左折専用車線を直進してきた乗用車との事故で、過失割合が争われた事例を紹介します。
本来、左折専用車線として設置された車線をそのまま直進してきた車があった場合、右折車との関係で直進車優先の原則が成立するのかという問題と、右折する側の車が直進車の直進を予測するように、左折車線の車の直進を的確に予測できるかという点が争点となっています。
【事故の状況】
平成29年(2017年)2月25日午前11時42分ごろ、二輪車を運転していたAは大阪市内の信号機のある交差点を右折しようとしたところ、左折専用車線を直進してきた乗用車Bと衝突しました。
Aは、Bが直進して進入してはならない義務を無視して交差点に進入してきており、また、このような通行区分違反を行っているにもかかわらず、右折進行する対向車両の存在を想定するなどの必要な安全確認を怠ったとして、事故の責任のすべてはBにあると主張しました。
一方B側は、Bの一定の注意義務違反は認めるものの、右折車Aは直進車優先の原則に反しており、また、左折専用車線を走行する車両の動静を十分に確認していなかったため、Aの過失は小さくはないと反論しました。
【裁判所の判断】
民事訴訟の裁判官は、
「B(乗用車)は、通行区分違反をして交差点内に進入した以上、対向車線から右折する車両の有無及びその動静に関し、注視する義務があるにもかかわらず、進路前方左右の安全確認が不十分なまま交差点に直進進入し、事故を引き起こした」
「確かに、右折車と対向直進車とでは、対向直進車が優先するのが原則であるが、このような通行区分違反を犯した車両は、そもそも対向右折車との関係で優先されるべき直進車には当たらないというべきである」
「Aも、対向直進車の存在及びその動静に関する安全確認が不十分の過失が認められるものの、(中略)左折専用車線を走行する車両は左折するものと信頼することは当然であり、左折専用車線を走行する車両の動静に関し、注意が散漫になったとしても強くは非難できない」
──などとして、Bの過失が圧倒的に大きいとし、過失割合をAが20%、Bが80%としました。
(大阪地裁 令和2年3月26日判決)
【教訓】
左折専用レーンや右折レーンなどを走行している車は、当然「右左折するもの」と対向車線の車は考えていますので、そうした車線から直進するのは危険です。実際には、通行区分を間違えたなどの理由で強引に直進する車がいるため、事故が発生しやすくなっています。
通行区分に違反した直進行動は、事故発生時に過失責任が重くなることを肝に銘じ、通行区分を間違えた場合はあきらめて右左折し、別の交差点から戻るように心がけましょう。