今回は、交差点を直進していた乗用車と右折していた二輪車が衝突して、二輪車ライダーが路上に投げ出され、乗用車の後ろを走行してきた中型トラックが二輪車ライダーを轢過して死亡させた事故で、第1事故と第2事故の過失割合等が争われた事例を紹介します。
第1事故と第2事故が時間的・場所的に近接している場合に、事故の共同責任と過失相殺をどのように考えたらよいのか、その点が争点となりました。
【事故の状況】
平成27年12月14日午後8時57分ごろ、Aは乗用車を運転して京都府八幡市内の信号機のない丁字路交差点を直進しようとしたところ、対向車線から右折してきた自動二輪車Bと衝突し、Bは路上に投げ出されました(第1事故)。
その直後、Aの後ろを走行していた中型トラックCは、路上に横臥していたBに気づかず乗り上げました(第2事故)。
この一連の事故で、Bは多発外傷を原因とする出血性ショックにより死亡しました。
Bの家族らは、Aが制限速度を20キロも超過して走行するなどの過失があり、Cも路上横臥しているBを轢過するなどの過失があり、A、Cの過失は60%は下らないと主張しました。
一方Aらは、2つの事故は時間的にも場所的にも近接しており、AとCは一体的に走行してきたと考えるべきであり、Bが70%、A、Cがそれぞれ15%とするのが相当であると反論しました。
【裁判所の判断】
この事故の裁判官は、
「第1事故と第2事故は、時間的にも場所的にも近接しているうえ、第2事故後にAとCがBの救出活動を行っている時点ではBは生存しており、Bの死亡が第1事故により生じたものか第2事故により生じたものか不明であるので、AとCには人的損害について共同不法行為責任が成立する」
「過失割合については、第1事故が直進する四輪車と対向車線を右折する二輪車の事故であること、Aが制限速度を相当超過する速度で進行していること、第2事故が夜間の出来事であり、Cにとって路上に倒れているBを発見するのは可能だったとはいえ、相当困難であったと言えることなどの事情に照らし、Bの過失を60%、Aの過失を30%、Cの過失を10%とするのが相当である」
としました。
なお、過失相殺の方法は、AとCの行為を一体的に捉え、これとBの過失割合とを対比して過失相殺する方法(いわゆる絶対的過失相殺)を採用しています。
(大阪地裁 令和2年3月12日判決)
【教訓】
一般的に、二輪車右折の右直事故の場合は、基本の過失割合は右折二輪車側70%に対して直進四輪車側30%と認定されますが(*)、四輪車の速度超過が10%の修正要素となって、乗用車とトラックの行為を一体ととらえた上で、60対40とされています。
後続トラックCの過失割合が10%と低いのは、第2事故ですので当然でしょうが、避けきれないと感じるような場合でも損害賠償責任を負うということが交通事故の現実です。
交差点での右折は非常に危険な運転行動であることを基本的な認識としてもつべきです。
さらに、前の車とは車間距離を十分に取って、できるうる限り事故に巻き込まれないように運転することが、悲惨な事故の被害を少しでも減少させることに繋がります。
(*別冊判例タイムス38:「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準/全訂5版」)