警察庁はこのほど、一定台数以上の自家用自動車(白ナンバー)を業務などで使用する企業に対するアルコール検知器の使用義務化を令和5年12月1日から施行することを決めました。
世界的な半導体不足などの理由から、検知器の使用義務化を延期していたものですが、全国の安全運転管理事業所に十分行き渡る検知器確保のめどがたったと判断しました。
道路交通法施行規則を再び改正し、今年8月15日に公布しています。
安全運転管理者による酒気帯び有無の確認については、2021年(令和3年)11月10日に道路交通法施行規則が改正され、運転の前および運転後の目視によるチェックと記録の保存が義務化され、2022年(令和4年)4月1日からすでに施行されています。
安全運転管理者を選任する事業所では、運転前後における点呼等の実践化に取り組むとともに、記録の明確化やアルコール検知器の導入に向けて準備をすすめる必要があります 。
なお、8月15日に警察庁から「アルコール検知器を用いた酒気帯び確認についての留意事項」を解説した通達が、都道府県警察本部宛に発せられています。一部は過去の通達と重複する内容ですが、個人で購入したアルコール検知器の取り扱いに関する事項など、検知に関する細かい情報が記載され、安全運転管理者にとっても参考になります。
また、弊社からは小冊子「安全運転管理者のための酒気帯び確認の手引き」を発行していますので、参考にしてください。
チェック義務化の端緒となったのは、2021年6月に千葉県八街市(やちまたし)で白ナンバートラックによる飲酒運転事故が発生し、小学生5人が死傷する惨事となったことです。
事故の車両は建設資材を運ぶ自家用自動車(白ナンバー)であったため、アルコール検知器によるチェックの義務はありませんでした。
この事故を踏まえ、政府は安全運転管理者を選任する事業所に対しても、出発前と帰社時の酒気帯びチェックを強化する方針をとりました。
道路交通法施行規則には以前から安全運転管理者が点呼等により「飲酒、過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができない恐れがないか確認する」ことは義務づけられていました。
しかし、実態として毎日しっかりと点呼業務を行ってきた安全運転管理事業所は少ないと思われます。
自家用自動車の運行であっても、運転業務を専従的に行う従業員は少なくないので、施行規則の改正に踏み切って、アルコールチェックと記録を具体的に規定したものです。
●酒気帯びチェック
酒気帯びの有無を目視等で確認する
●確認の内容を保存
確認の記録を1年間保存する
施行規則 第9条の10(安全運転管理者の業務) に以下の条文が追加される
第6号[号を追加]
運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認すること。
第7号[号を追加]
前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存すること。
※改正前の第6号・第7号は → 第8号・第9号に
公布日:2021年11月10日
施行日:2022年4月1日
【注意ポイント】
●アルコール検知
目視だけでなく、アルコール検知器で確認する
●検知記録の保存
検知による確認の記録を1年間保存する
●常時有効に保持
検知器を常に有効に機能するよう管理する
施行規則 第9条の10(安全運転管理者の業務)
第6号
運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。
第7号
前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。
施行日:2023年12月1日
【注意ポイント】
■スマートフォンなどを活用
安全運転管理者が行う酒気帯び確認は、警察庁交通局の通達によると、
『「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することをいう』
としていますから、対面で運転者をじっくり確認することが求められています。
ただし、自宅や出先から現場に直行する運転者などに対しては、対面での酒気帯びチェックが難しくなります。そこで警察庁では、直行直帰などの場合を想定して、以下のように電話による確認やIT機器による点呼を認めています。
『酒気帯び確認の方法は対面が原則であるが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、
等の対面による確認と同視できるような方法が含まれる。』
■スマホアプリによる代行サービスも利用が可能
これらの措置に対応して、インターネットで酒気帯び確認をする際に利用するアプリなどが作られており、クラウド利用の運行管理システムと連動したサービスを提供している事業者があります。
また、アルコール検知を運転者がリモートで実施したとき、安全運転管理者が不在又は通勤中などで確認が遅れる場合を想定して、クラウド情報を管理する事業者がチェックを代行するサービスなども導入されています。
警察庁の通達では、 安全運転管理者以外の補助者による酒気帯び確認については、業務委託であっても差し支えないとされています。ただし、「運転者が酒気を帯びていることを補助者(委託業者)が確認した場合には、速やかに安全運転管理者の指示を仰ぐことができることとするなど、安全運転を確保するために必要な対応が確実にとられる必要があること」に留意する必要があります。
ネット対応システムを導入すると、対面で確認する場合もアプリが自動記録するので、管理者の業務が効率化できます。 運転者数の多い事業所では、導入を検討してみましょう。
1・運転者の適性等の把握──運転者の適性、技能及び知識並びに運転者が法令の規定等を遵守しているか把握するための措置をとる
2・運行計画の作成──最高速度違反、過積載、過労運転、放置車両等の行為の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成する
3・交替運転者の配置──長距離運転又は夜間運転となって、疲労等により安全な運転が継続できないおそれがあるときは交替するための運転者を配置する
4・異常気象時等の措置──異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に安全確保に必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を講ずる
5・点呼、日常点検、運転者の状態把握──運転しようとする運転者に対して点呼を行う等して、日常点検整備の実施及び過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与える
6・酒気帯び有無の確認──運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いて確認を行うこと(*)
7・酒気帯び確認の記録と保存──前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。(*)
8・運転日誌の備付、記録──運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他運転状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる
9・安全運転指導──運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う
(改正道路交通法施行規則 2021年11月10日改正/2022年4月1日施行/*2023年12月1日施行)
安全運転管理者が行わなければならない9つの業務については、
小冊子「やる気を持って管理業務を進めよう」にて詳しく紹介しております。
2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、安全運転管理者が行うべき業務が7つから9つに増えました。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、酒気帯び確認が重要な業務として位置づけられています。
本冊子は改訂新版として、9つそれぞれの根拠法令に基いて、やる気のない管理者、やる気のある管理者それぞれの業務に対する姿勢をイラストで比較し、わかりやすく解説しています。管理者がやる気を持って業務に臨むことの重要性を実感していただくことができます。
安全運転管理者の業務として、運転前・運転後の「酒気帯び有無」の確認とその記録、記録の保存、並びにアルコール検知器を使用したチェックが義務づけられました(検知器チェック義務の施行は2023年12月1日の予定)。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、飲酒運転根絶に向けた取組みとして位置づけられたのです。
管理者が行うべき運転者の酒気帯び確認方法についてイラスト入りでわかりやすく解説しています(詳細なパワーポイント資料付)。
※オンライン研修、リモート研修には「自己診断型・教材ツール」の活用を!
コロナ禍を経て、安全講習も多数の運転者を一堂に集めて行う形式が減少し、小グループのオンライン研修やリモート研修を行う事業所が増えています。
このため、運転者個々に「自己診断テスト」や「飲酒運転防止のセルフチェックツール」などを送付して自己チェックを促し、管理者へはメールによって報告しそれに対して個別指導を行うなどの形態で教育活動を実施している事業所が少なくありません。
ぜひ、指導形態を工夫して、安全指導に努めてください。
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