警察庁交通局交通企画課はこのほど、全国の警察本部に通達を発し、アルコール検知器を用意していないため安全運転管理者が酒気帯びチェックをできなかったり、管理者に必要な権限を与えていないことが判明した事業所の使用者に対して発する、「是正措置命令」の基準を明確に定めました。
2022年の道路交通法改正により、社有車を5台以上使用する自家用自動車の使用者に対する罰則が大幅に強化されましたが、今年12月1日から、安全運転管理事業所におけるアルコール検知器の使用が義務化されることに伴い、管理が形骸化している事業所に対する摘発と指導を厳しくする狙いがあります。
是正措置命令を発する基準として、以下のような具体例を挙げています。
なお、「是正措置命令」が発せられても改善しないなどの違反をした場合、自動車の使用者には50万円以下の罰金が科せられます。
※警察庁丁交企発第202号(2023.8.15/警察庁交通局交通企画課長)
また、今回の通達では、各都道府県警察本部が安全運転管理者の解任命令を行う場合の基準についても、具体的に明確化しています。
たとえば、
自家用自動車の運行であっても、居眠運転や飲酒運転、無理な運行スケジュールにより速度超過運転を行って事故が発生した場合、運転者の責任だけでなく事業所における安全運転管理の実態が厳しく問われるということです。
【是正措置命令を行う基準】
1 是正措置命令は、次のいずれかに該当することとなった場合に行うことを原則とする。
(1) 自動車の使用者が、安全運転管理者に対し、必要な権限を与えていないため自動車の安全な運転が確保されていない場合
→ 具体的には、夜間又は長距離の運転時における交替運転者を配置する権限を安全運転管理者に与えていないことにより、運転者が過労による居眠り運転に起因する交通事故を起こした場合等が該当する。
(2) 自動車の使用者が、安全運転管理者が法第74条の3第2項の業務を行うため必要な機材を整備していないため自動車の安全な運転が確保されていない場合
→ 具体的には、運転者に対する酒気帯びの有無の確認を行うために必要な数のアルコール検知器を用意していないことにより、当該確認が適切に行われず、運転者が酒気帯び運転を行った場合等が該当する。
2 是正措置命令を行う場合には、是正措置命令を行うに至った原因に応じ、自動車の安全運転を確保するために自動車の使用者が実施すべき内容を適切に示すこと。
→ 具体的には、
・ 安全運転管理者の業務の実施状況を点検し、必要に応じてその改善のために必要な措置をとること。
・ 安全運転管理者による自動車の運転者への指示等が当該運転者に確実に伝わっているか点検し、必要に応じてその改善のために必要な措置をとること。
・ アルコール検知器等の機材が適切に作動する状態にあることを確認し、不具合がある場合等には、その改善のために必要な措置をとること。
・ 運転者の数に対してアルコール検知器等の機材が不足していないかなどを確認し、不足している場合等にはその改善のために必要な措置をとること。
が想定される。
【解任命令を行う基準】
1 解任命令は、次のいずれかに該当することとなった場合に行うことを原則とする。
⑴ 安全運転管理者等が法第74条の3第1項又は第4項の府令で定める要件(以下、単に「要件」という。)を備えないこととなった場合
具体的には、
・ 安全運転管理者等が自ら酒気帯び運転等の違反行為をした場合
・ 30歳未満で安全運転管理者に選任された者について、その後、当該事業所において副安全運転管理者が選任され、要件を備えないこととなった場合等が該当する。
⑵ 安全運転管理者が法第74条の3第2項の規定を遵守していないため自動車の安全な運転が確保されていない場合
具体的には、
・ 安全運転管理者が、最高速度を超過する速度による運転をしなければ、目的地に期限までに到達できないような運行計画を漫然と作成し、当該計画に従って、運転者に自動車を運転させたため、当該運転者が最高速度違反に起因する交通事故を起こした場合
・ 安全運転管理者が、必要な権限が与えられているにもかかわらず、夜間又は長距離の運転時における交替運転者を配置せず、運転者が過労による居眠り運転に起因する交通事故を起こした場合
・ 安全運転管理者が、運転後の運転者に対する酒気帯びの有無の確認を日常的に実施せず、業務中の飲酒に対する抑止効果が失われたことにより、運転者が酒気帯び運転を行った場合
等が該当する。
【通達のポイント】
1・運転者の適性等の把握──運転者の適性、技能及び知識並びに運転者が法令の規定等を遵守しているか把握するための措置をとる
2・運行計画の作成──最高速度違反、過積載、過労運転、放置車両等の行為の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成する
3・交替運転者の配置──長距離運転又は夜間運転となって、疲労等により安全な運転が継続できないおそれがあるときは交替するための運転者を配置する
4・異常気象時等の措置──異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に安全確保に必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を講ずる
5・点呼、日常点検、運転者の状態把握──運転しようとする運転者に対して点呼を行う等して、日常点検整備の実施及び過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与える
6・酒気帯び有無の確認──運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いて確認を行うこと(*)
7・酒気帯び確認の記録と保存──前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。(*)
8・運転日誌の備付、記録──運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他運転状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる
9・安全運転指導──運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う
(改正道路交通法施行規則 2021年11月10日改正/2022年4月1日施行/*2023年12月1日施行)
安全運転管理者が行わなければならない9つの業務については、
小冊子「やる気を持って管理業務を進めよう」にて詳しく紹介しております。
■道路交通法に基づく自動車の使用者に対する是正措置命令等の基準について──警察庁通達
■道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯び
の有無の確認等について──警察庁通達
■「安管選任義務違反」等の罰則を強化──道路交通法改正(最近の法令改正)
■酒気帯びチェック体制は万全ですか(危機管理意識を高めよう)
2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、安全運転管理者が行うべき業務が7つから9つに増えました。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、酒気帯び確認が重要な業務として位置づけられています。
本冊子は改訂新版として、9つそれぞれの根拠法令に基いて、やる気のない管理者、やる気のある管理者それぞれの業務に対する姿勢をイラストで比較し、わかりやすく解説しています。管理者がやる気を持って業務に臨むことの重要性を実感していただくことができます。
安全運転管理者の業務として、運転前・運転後の「酒気帯び有無」の確認とその記録、記録の保存、並びにアルコール検知器を使用したチェックが義務づけられました(アルコール検知器によるチェック義務の施行は2023年12月1日)。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、飲酒運転根絶に向けた取組みとして位置づけられたものです。
管理者が行うべき運転者の酒気帯び確認方法についてイラスト入りでわかりやすく解説しています(詳細なパワーポイント資料付)。