車輪の脱落事故を防ぎましょう

■いろいろな車種で「車輪脱落事故」が多発しています

 最近、走行中の車からタイヤが外れる事故が相次ぎ、問題になっています。

 

 国土交通省は大型車の落輪事故が毎年多発しているため、大型トラックや大型バスを使用する自動車運送事業者に対して、「令和5年度緊急対策」を提示して事故防止を呼びかけています。

 

 また、軽自動車や乗用車でも、走行中に車輪が外れ対向車線の車に衝突したり、歩道上の歩行者に衝突し、人身事故となっているケースがあります。 

車輪脱落事故が多発

 とくにスタッドレスタイヤなどに交換した後に事故が多発していますので、一般の事業所でも、安全運転管理者、車両管理者などが中心となって社有車のタイヤをチェックし、運転者には日常点検整備はもちろん、走行時に異音や振動がしないかなど警戒を呼びかけてください。 

■こんな事故が起こっています

車輪脱落による人身事故
自動車工業会の動画より/子どもと大型タイヤの大きさ比較

●不正改造とみられる車からタイヤが

 外れ、歩道の女の子を直撃

 さる11月14日午後1時半ごろ、北海道札幌市西区で、軽自動車に装着されていたオフロード走行用タイヤが外れ、歩道にいた3~4歳ぐらいの女の子に衝突し、女の子は意識不明の重体となっています。

 

 国土交通省の見解によると、軽乗用車の車検時の写真と、事故後に報道された映像に写ったタイヤが異なっているとみられ、不正改造の可能性があるとのことです。

 

 軽自動車を運転していた者が、オフロードタイヤを車に取り付けたのではないかとみられています。

●高速道路で大型車の車輪が外れ、作業員を直撃して死亡させる

 さる12月1日午後3時50分ごろ、青森県八戸市の八戸自動道下り線で、走行中の大型トラックから外れた後輪タイヤが、路肩で道路保全作業をしていた32歳の男性作業員に衝突しました。

 作業員は意識不明の状態で搬送され病院で死亡が確認されました。また、はね飛ばされた作業員と接触した60代の男性作業員も病院に搬送され、軽傷と診断されました。

 トラックを運行していた運送会社によると、約2週間前に冬タイヤに交換したばかりでした。

 会社では点検ハンマーでボルト等を確認する運行前点検を義務づけていましたが、運転者は「目視だけで行い、ハンマー点検を怠っていた」と話しています。

●冬用タイヤが外れ、対向車線の車に衝突

 さる11月29日午後1時半ごろ、札幌市南区の国道で走行中の乗用車の右前輪が外れ、対向車線を走行していた軽乗用車に衝突しました。 

 この事故で、対向の軽乗用車を運転していた3女性が胸を打つなどしてけがをしました。タイヤは冬用タイヤとみられ、不正改造ではないそうです。 

●大型車の車輪が外れ、歩行者に衝突

 さる11月30日午後3時すぎ、島根県浜田市の国道で走行中の大型トラックの左側の後輪が脱落し、付近を歩いていた75歳の男性に衝突しました。 

 この事故で、男性は軽いけがをしましたが、命に別条はありませんでした。トラックを運行する会社では、事故の前日にタイヤを交換したということです。

 

 このほか、次のような事故が発生しています。

・札幌市西区では11月24日にも走行中の軽自動車から車輪が外れる事故がありましたが、幸い、後続車や歩行者にけが人はいませんでした。

・12月1午前7時20分ごろ、北海道留萌市の国道233号で走行中の乗用車から左前輪が落輪する事故がありましたが、巻き込まれた歩行者などはいませんでした。タイヤのナット4つ全てが外れていたということです。

・12月5日午前9時前、北海道小樽市の国道5号で、走行中のトラックから前輪2本が外れて対向車線の大型車に衝突する事故がありました。双方の運転者や周辺の人にけがはありませんでした。

※編集部注/これらの事故続発を受け、国土交通省は12月4日、全国9つの運輸局と沖縄総合事務局を通じ

 て、自動車運送事業の会社に対し、

  • タイヤを固定するナットが緩んでいないか
  • タイヤを交換し一定距離を走行した後に締め直す「増し締め」が確実に行われているか

 を一斉に点検するよう緊急の指示を出しました。

■スタッドレスタイヤに履き替えた車は要注意です

大型車の車輪脱落事故防止
国交省ポスター/66%がタイヤ交換後に脱落

 車輪脱落事故は、その多くがタイヤ交換と関係があるとみられています。

 国土交通省の資料によると、全国の大型車の車輪脱落事故は2022年度に140件発生し、対前年度17件増と統計史上最多となり、このうち6割弱が12月以降に起こっています。

 また、脱落事故の約66%が冬用タイヤへの交換後に発生しています。タイヤを脱着したときの整備ミス、ホイールの潤滑剤塗布の不十分、あるいはその後のタイヤ増し締め措置を怠ったこと等が原因ではないかと考えられています。

 

■余裕を持った交換作業を

 同省では、脱落事故防止緊急対策として、以下のようなポイントを呼びかけています。

  • 整備管理者は適切なタイヤ脱着作業を行うため、タイヤ脱着作業日程及び作業時間に余裕を持った、計画的なタイヤ脱着作業を実施する。
  • 自社でタイヤ脱着作業を行う際は、正しい知識を有した者に実施させる。
  • 特に車輪脱落事故の多い左側後輪や積雪地域、舗装されていない道路を走行す る大型車については、重点的な点検・整備の実施を心がける。 

タイヤ交換後の増し締めを忘れない

 なお、整備ポイントとして、特に以下のような事項を確認するよう強調しています。

  • 著しくさびたホイール・ボルトやホイール・ナット、ディスク・ホイールは適正な締付力が得られない。脱着作業時に点検・清掃や潤滑剤の塗布を行ってもさびが著しいディスク・ホイールやひっかかり等の異状がありスムーズに回らないホイール・ボルト及びホイール・ナットは、使用せず交換する。
  • ボルト、ナットが新品の状態から4年以上経過している車両は入念に確認する。 
  • タイヤ脱着後、50~100km走行後の増し締めを実施する。 
車輪脱落事故の月別発生件数

■「タイヤ脱着作業管理表」による確実なタイヤ交換を

 また、国土交通省では、自社で大型車のタイヤ脱着作業を行うときは、作業者に以下のような作業管理表に沿って実施させ、その結果を記録させることを呼びかけています。

 運送事業者に限らず、自社でタイヤ交換を行う会社では参考にしてください。

  • タイヤ交換作業完了後、作業管理表をもとに適正なタイヤ交換作業が行われていることを確認する。
  • 作業管理表を使用して、増し締めの実施結果を記録する。
  • 増し締め実施後、ホイール・ナットへのマーキングを施す。または、ホイールナットマーカーを活用したマーキングのずれの確認手法により、ホイール・ナットの緩みの目視点検を確実に確認する。
ホイールナットマーカー
タイヤ脱着作業管理表(国土交通省)

 ※タイヤ脱着作業管理表(PDF)は、国土交通省の「点検・整備」ページよりダウンロードできます 

■タイヤ脱落実験の動画でも注意を呼びかけています(国土交通省)

 国土交通省が公表している車輪脱落の実験動画では、時速60キロで走行している大型トラックからタイヤが外れたとき、タイヤがぶつかった男性とベビーカーは約4m飛ばされています。

■日本自動車工業会でも啓発動画を作成して注意を呼びかけています

 一般社団法人日本自動車工業会などが正しい車輪交換作業の方法や交換後のトルクレンチによる増し締め、日常点検・定期点検の確実な実施方法などに関する啓発動画を作成して、動画サイトなどで公開して注意を呼びかけています。 

・防ごう!大型車車輪脱落事故(短編バージョン)

・ドラマ仕立てによる脱落事故防止の啓発動画(長編バージョン)

・動画で学ぶ「車輪脱落事故防止のための車輪の取扱い方法」

・【車輪脱落防止】ホイールナットの緩み点検方法

■自動車運送事業者と整備管理者に対する行政処分を強化

車輪脱落事故に対する行政処分

 すでに運行管理者の皆さんはご存知のことと思いますが、2023年10月1日より、車両総重量8トン以上の大型車で車輪脱落事故を起こした事業者に対する行政処分が強化され、(公社)全日本トラック協会なども啓発活動を強化しています。

 

 ホイールボルトの折損、ホイールナットの脱落などに起因する車輪脱落事故を起こした場合、事業者は車両の使用停止処分=20日車停止=を受けます。

 

 さらに、3年以内に再び大型車の車輪脱落事故を起こした事業者は(再違反)、40日車の車両使用停止処分となり、整備管理者は解任命令を受けます。

 解任された整備管理者は、選任資格要件が2年間なくなります。車輪脱落事故防止に向け、整備管理規程などの見直しをすすめましょう。

 なお、国土交通省の点検整備に関するwebサイトには、「整備管理規程の例」や「整備管理者制度の運用一部改正について(令和5年10月)」などが掲載されていますので、参考にしてください。 

 

車輪脱落事故
車輪脱落事故

 ※「お・と・さ・な・い」(自動車工業会作成のチラシ)

ホーム 運転管理のヒント危機管理意識を高めよう >車輪の脱落事故に注意しよう

【参考ページ】

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