令和6年1月25日(木)、大阪府立男女共同参画・青少年センター7F「ドーンセンター」ホールにおいて、国土交通省近畿運輸局主催による「第15回自動車事故防止セミナー」が開催されました。
今回のセミナーでは、国土交通省の取組み発表や自動車運送事業者の事故防止対策の紹介、学識経験者による情報提供等が行われました。
今回は、この中から「山陽バスにおける車内事故防止の取り組みについて」を紹介します。
山陽バス株式会社は、兵庫県神戸市西部にある垂水区において、1936年(昭和11年)に垂水駅前・神戸高商前間にて乗合自動車運送事業の営業を開始して以来、垂水区の発展とともに、地域の足としての役割を果たしてきました。
2023年10月現在、一般路線車両143両、高速路線車両11両、貸切・送迎車両28両を保有しており、垂水地区の住宅地と鉄道駅を結び、通勤・通学の乗客の輸送や、近年では高齢者した沿線の要望を受け、通院や買い物等の需要にも積極的に応えています。
同社が運行する垂水区は、9つの区がある神戸市のなかでも、特に高齢化が著しい区です。
さらには、垂水区は山を切り開いてつくられた土地が多いため、急な坂道や狭隘路が多く存在します。
こうしたことから、同社では、減少傾向にはあるものの、高齢者が関係する車内事故がたびたび発生している状況です。
同社では、車内事故をはじめとする事故が発生すると、事故報告書を作成して、乗務員に周知を徹底しています。
発進時に高齢者が転倒した車内事故が発生した際には、車内マイクでの案内が不十分であったことから、発進時の車内確認の徹底と、「発車します、ご注意ください」と車内マイクでの注意喚起の必要性を訴えました。
同社では、乗務員の目につく場所にモニターを設置して、車内事故を発生させないための基本動作等の「動画」を流すことで、車内事故等に対する注意喚起を行っています。
乗務員が必ず通る場所に設置することで、足を止めてもらうことができ、効果的に注意を促すことができています。
同社が運行するエリア内には商業施設も多く、その出入口付近では他車の割込み等が頻繁に発生しており、それに伴う急ブレーキによる車内事故がたびたび発生しています。
そのため、こうした車内事故に結びついた他車の危険な行動がみられる場所には、直前のバス停等に掲示物を掲出し、乗務員に注意喚起を行っています。
掲示物は、直観的に理解できるように工夫しています。
ドア操作時に乗客の降車を確認せず挟んでしまった事故が発生したことを受け、同社では扉スイッチにストッパーを設置しています。
扉の開閉行程に作業を1つ加えることで、うっかり事故防止に努めています。
また、合わせて扉開閉時の動作をマニュアル化し、周知しています。
同社では、乗客に対する車内事故防止の呼びかけも行っています。
たとえば、「ICカード等は事前にご準備ください」といった案内(お願い)文をバス停に掲示することで、乗車後のスムーズな着席を促しています。
また、車内の床や窓枠など、目につく場所に「手すりをお持ちください」「ドアが開いてから席をお立ちください」といったステッカーを貼り付けています。
このほか、外部での高齢者向け安全教室も実施しており、実際に発生した車内事故のドライブレコーダー映像を見せながら、車内事故の傾向等を説明することで、沿線住民への啓発活動を実施しています。
同社の濱田隆弘氏は最後に、「事故防止に終わりはありません。地道にこつこつ、いろいろなことを実践していきます」と述べられました。
第15回自動車事故防止セミナーデータ
・日 時 令和6年1月25日(木)
・会 場 「ドーンセンター」ホール
・主 催 国土交通省 近畿運輸局
・後 援 一般財団法人 近畿陸運協会
・プログラム
◆開会
◆主催者挨拶
国土交通省 近畿運輸局長 日笠 弥三郎
◆講演
⒈『乗客もドライバーも安心して運行できる環境をめざして』
国土交通省物流・自動車局安全政策課
課長補佐 小柳 美枝子
⒉『山陽バスにおける車内事故防止の取り組みについて』
山陽バス株式会社
取締役企画部長兼安全推進部長 濱田隆弘
⒊『視野障害とその原因疾患を理解する』
近畿大学医学部眼科学教室 教授・医学博士 松本長太
◆閉会挨拶
近畿運輸局自動車技術安全部部長 野中秀紀
◆閉会