令和6年6月1日(土)~2日(日)にかけて、福岡県の福岡工業大学FITホールにて、日本交通心理学会2024年度(第89回)福岡大会が開催されました。
会期中は、「自動車事故による被害者支援」をテーマとした基調講演をはじめ2日間にわたり、さまざまな研究発表が行われました。
今回はその中から、「後退運転訓練時の行動による事故発生予測の試み2」を取り上げて紹介します。
日本交通心理学会とは…
日本交通心理学会は1975年日本交通心理学研究会として創立しました。交通に関わる諸問題について心理学を中心とした研究を行うことにより、交通事故の抑止とよき交通環境の建設に寄与することを目的としています。学会の認定資格である交通心理士は、地域や企業の交通安全のリーダーとしての役割を担っており、今後ますますの活躍が期待されています。
本研究の対象となっている警備輸送会社では、後退事故は全体の23・8%、損害額は全体の33%を占めています。
事故が発生した場所をみると、駐車場・構内での事故が約半数を占め、後退事故の接触場所は左後方が30・6%、右後方が24・5%となっています。
これらのデータを背景に、本研究は駐車時の後退事故を減らすための訓練方法の開発と、訓練時に取得したデータと訓練後の事故発生との関係を明らかにすることを目的としています。
訓練プログラムは、座学60分、実技走行2回90分、座学30分の構成されています。
実技走行は、スタート地点からアタマを振って駐車位置まで後退し、その後、同じルートを通ってスタート地点に戻るというもので、その間に、停車中にパイロンが置かれたり、後退誘導員がオーライというだけであったりするなど、ドライバー自身の安全確認が求められます。
そして、このプログラムを受講したドライバーが、1年以内に事故を起こしたどうかと、訓練中の運転行動との関係を分析しました。
その結果、事故を起こしたドライバーは、
といった傾向がみられました。
後退事故防止のための対策行動としては、
といったことが考えられます。
日本交通心理学会第89回大会データ
・日時 令和6年6月1日(土)~2日(日)
・会場 福岡工業大学FITホール3Fメインホール
・主催 日本交通心理学会(第89回福岡大会準備委員会)
・共催 日本交通心理士会
・後援 一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会
・プログラム
<基調講演>
テーマ「自動車事故による被害者支援」
講演Ⅰ
・ナスバ(独立行政法人 自動車事故対策機構)の取り組みについて
― 交通事故防止及び被害者救済 ―」
中村 晃一郎(ナスバ:(独) 自動車事故対策機構 理事長)
・ナスバ(独立行政法人 自動車事故対策機構)の被害者救済事業について」
亀井 憲(ナスバ:(独)自動車事故対策機構 被害者援護部長)
講演Ⅱ
・交通死亡事故とグリーフケア
一杉 正仁(滋賀医科大学教授)
<研究発表>
・駅ホーム及び列車内非常ボタンの認知度と通報行動への詳細な影響要因抽出の試み
・記憶力・判断力が少し低下した高齢運転者に対する反復的な運転指導の効果
- 単一事例実験のABABABデザインによる行動変容の効果検証(1) -
・記憶力・判断力が少し低下した高齢運転者に対する技能検定手続きを用いた運転指導の評価と応用
- 単一事例実験のABABABデザインによる行動変容の効果検証(2) -
・運転の自己モニタリングを促す高齢者夫妻対象の教育的介入
・後退運転訓練時の行動による事故発生予測の試み2
・通り慣れた道路におけるバス乗務員の記憶に関する研究(1)
・通り慣れた道路におけるバス乗務員の記憶に関する研究(2)
・事故回避不能状況における行動判断に関する研究(5)
・子ども対象の安全教育参加に伴う保護者のリスク知覚の変化と教育可能性
・速度超過運転行動の規定因に関する統合モデルの構築
・ドローンパイロットの業務支援に関する予備的研究
ーインタビュー調査による探索的アプローチ ―
・VRを用いた身近な場所での危険体験による子供の事故回避啓発取組1
ー質問による体験振り返り ―
・自動運転技術を用いた遠隔教習指導システムによる技能教習の効果検証