自転車にも青キップが導入されると聞きました

2026年から自転車にも交通反則切符が適用され、罰則や違反金の制度が導入されると新聞で読みました。弊社では通勤で自転車を利用するものもいますし、業務でも一部自転車を運転することがあります。今回の報道を受けて、自転車を利用する社員に動揺が広がっているのですが、正しい情報を伝えたいので詳しく教えていただけますと幸いです。

■自転車に対する道路交通法上の扱い

 自転車については、道路交通法上、定義されており(同法2条1項11号の2)また軽車両とされ(同法2条1項11号)、原則車両とされますので、道路を通行する際のルールも、原則としては普通自動車等と同じ規制を受ける点があります。

 

 例えば自転車も、原則としては車道を走行しなければなりませんし、車道を走行する際は左側を走行するよう定められています(同法17条、20条)。

 

 その他、信号機に従う義務もありますし(同法7条)、右左折や交差点の通行方法についても規制されており(同法34条、36条)、道路標識等による徐行や一時停止等にも従わなければなりません(同法42条、43条)。

 

 酒気帯び運転等を行ってはならないことも、普通の自動車と同様ですし(同法65条)、交通事故が生じた場合の救護義務や危険防止、通報義務等も負います(同法72条)。

 

 ただし、自転車の場合には、交通方法の特例も定められており(同法第13節、第63条の3以下)、自転車通行帯や横断帯があるときには、そこを通らなければならないとされ(同条の4、6、7等)、また歩道を通行することが出来る場合が定められています(同条の4)。

■青切符(交通反則切符)の適用

 しかし近年、自転車による交通事故、特に自転車対歩行者の事故がクローズアップされ、増加傾向にありました。

 

 自転車は、運転免許も必要なく、誰でも乗れる一方で、他者に対して危険を生じるような運転がなされることがあるにもかかわらず、自動車等に比べると罰則等も少ないといえる状況でした。

 

 すなわち、自転車の交通違反の取締りの多くは、警告などが行われるだけで、罰則を伴うものではありませんでした。

 

 また、悪質な違反の場合には、いわゆる赤切符(告知票・免許証保管証)が切られるものの、裁判で有罪とされて罰則が適用されると、前科となり、処分が厳しすぎるという面もあり、その多くは起訴まではされず、罰則が適用されるケースは多くなかったといえます。

 

 そのため新たな規制が必要であるとされ、2024年に道路交通法が改正されて、交付から2年以内に、赤切符に至らないような自転車の違反行為に対し反則金を課すこととし、いわゆる青切符(交通反則告知書)が出されることになりました。

 

 なお、酒酔い運転や酒気帯び運転、携帯電話を使用しながら事故につながるような危険な運転をするなど、悪質な行為については自転車についても刑事罰が定められ、赤切符が切られることになっています。

■具体的な規制内容

 青切符が出されることになった対象の行為は113種類と言われています。ただし、16才以上の利用者を対象とするとされています。

 

 具体的には、信号無視や指定場所一時不停止、通行区分違反、歩道における通行方法違反、横断歩行者妨害、遮断踏切立入、携帯電話使用で、傘を差したりイヤホンを付けたりしながら運転するなど、都道府県の公安委員会で定められた遵守事項に違反するものなども対象としており、反則金は、違反行為によって5,000円から12,000円程度が想定されているといわれています。

 

 ただし、違反行為をすると必ず全てに対して即青切符が交付されるというわけではなく、悪質、危険ではないと判断される場合には、指導警告にとどまるとされています。

 

 しかし、何度も指導警告を受けたり、悪質、危険であると判断されたりする場合には、青切符が交付されることになります。

 

 なお、反則金制度は、本来道路交通法違反の行為について、反則金を支払うことで刑事上の責任を問わないというものですので、反則金を支払わなければ最終的には刑事処罰されることになります。

 

 また、自転車は運転免許等が必要なものではありませんので、自転車での違反行為について交通違反点数が引かれるという制度にはなっていません。

■終わりに

 以上のように、自転車についても、道路交通法に反する運転については、従前のような指導警告を超えた取締りがなされるようになります。

 

 闇雲に規制が広がることは喜ばしいことではありませんが、近年の自転車事故の増加傾向等からすると、やむを得ない面があるかもしれません。

 

 自動車の場合と異なり、自転車については、免許が必要ないため、試験等を受けることもなく、16才以上といえども道路交通法の規制について学ぶ機会が必ずしもあるわけではありません。

 

 また、自動車免許を持っていたとしても、自転車についての規制等について確認出来ていない方も多いと思われます。

 

 この機会に、事業所において、自転車の安全な運転や違反行為について確認しておくことが重要といえます。

執筆 清水伸賢弁護士

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